2026年2月10日更新.2,746記事.

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ATPクエン酸リアーゼ阻害薬「ネクセトール」とは?― 新しい脂質異常症治療薬の特徴と使いどころ ―

ATPクエン酸リアーゼ阻害薬「ネクセトール」とは?

脂質異常症(高LDLコレステロール血症)は、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの重大な疾患と深く関係しています。その治療の中心となってきたのが「スタチン」と呼ばれる薬剤です。

しかし、スタチンは非常に有効である一方で、「筋肉痛」「CK上昇」「スタチン不耐」といった問題があり、十分な量を使えない患者も少なくありません。

こうした背景の中で登場したのが、新しい作用機序を持つ脂質異常症治療薬「ATPクエン酸リアーゼ阻害薬」であるネクセトール(一般名:ベムペド酸)です。

ネクセトールの作用機序、特徴、メリット・注意点、臨床での位置づけについて勉強していきます。

ATPクエン酸リアーゼとは何か?

コレステロール合成の仕組み

体内のコレステロールは、食事から摂取されるだけでなく、主に肝臓で合成されています。

その合成経路は以下のように進みます。

・クエン酸 → アセチルCoA
・アセチルCoA → メバロン酸
・メバロン酸 → コレステロール

この中で重要な役割を果たしている酵素の一つが「ATPクエン酸リアーゼ(ACL)」です。

ACLは、クエン酸からアセチルCoAを作る“入口部分”を担当しています。

スタチンとの違い

スタチンは、下流にある「HMG-CoA還元酵素」を阻害します。

一方、ネクセトールは、

→もっと上流のACLを阻害する

という特徴があります。

つまり、

・ネクセトール:上流ブロック
・スタチン:下流ブロック

という違いがあります。

この違いが、臨床上の特徴につながっています。

ネクセトールの作用機序

ネクセトール(ベンペド酸)は、肝臓内で活性化されるプロドラッグです。

活性化後に、

→ ATPクエン酸リアーゼを阻害
→ アセチルCoA産生を低下
→ コレステロール合成抑制
→ LDL受容体増加
→ LDLコレステロール低下

という流れで作用します。

肝臓選択性が最大の特徴

ネクセトールの最大の特徴は、

→ 筋肉ではほとんど活性化されない

という点です。

活性化に必要な酵素は、主に肝臓に存在します。そのため、筋肉ではほぼ作用しません。

これが、筋障害が起こりにくい理由です。

ネクセトールの効果

臨床試験では、ネクセトール単剤で

LDLコレステロール:約15~25%低下

が報告されています。

また、
・スタチン併用
・エゼチミブ併用
により、さらに強いLDL低下効果が得られます。

特に、

「スタチン+ネクセトール+エゼチミブ」

という組み合わせは、PCSK9阻害薬を使わずに強力な脂質低下を狙える選択肢として注目されています。

どんな患者に向いているのか?

① スタチン不耐の患者
以下のような患者には特に有用です。
・スタチンで筋肉痛が出る
・CKが上昇する
・スタチンを十分量使えない

こうしたケースでは、ネクセトールは重要な代替薬となります。

② LDLが目標に届かない患者
スタチンを使っていても、
・LDLが高止まり
・動脈硬化リスクが高い
場合には、追加薬として使用されます。

③ PCSK9阻害薬を使いにくい患者
PCSK9阻害薬は非常に強力ですが、
・注射製剤
・高額
・通院負担

といった問題があります。

経口薬であるネクセトールは、これらの代替選択肢となります。

副作用と注意点

主な副作用
ネクセトールで報告されている副作用には以下があります。

・高尿酸血症
・痛風発作
・肝機能障害
・消化器症状
・貧血

特に重要なのが「尿酸値上昇」です。

なぜ尿酸が上がるのか?

ネクセトールは腎尿細管での尿酸排泄に影響を与えるため、尿酸値が上昇しやすくなります。

そのため、
・痛風の既往
・高尿酸血症
がある患者では慎重投与が必要です。

筋障害は少ない

スタチンと比較すると、

・筋肉痛
・CK上昇
・横紋筋融解症

のリスクはかなり低いとされています。

ここがネクセトール最大のメリットです。

他の脂質異常症治療薬との比較

薬剤主な作用点特徴
スタチンHMG-CoA還元酵素第一選択
エゼチミブ小腸コレステロール吸収併用向き
ネクセトールACL筋障害少ない
PCSK9阻害薬LDL受容体分解抑制強力・注射

ネクセトールは、

「スタチンの補完役」

としての位置づけが最も自然です。

心血管イベント抑制効果

近年の研究では、ネクセトールが

・心筋梗塞
・脳卒中
・心血管死亡

といったイベントを減らす可能性も示されています。

LDL低下だけでなく、「予後改善効果」も期待できる薬剤として評価が高まりつつあります。

今後の展望

ネクセトールは、

・経口
・筋障害少ない
・併用しやすい

という利点から、今後さらに使用が広がる可能性があります。

「スタチンだけでは足りない患者」の治療選択肢として、重要なポジションを占めていくでしょう。

まとめ

ネクセトールは、

✔ ATPクエン酸リアーゼを阻害する新規機序薬
✔ 筋肉への影響が少ない
✔ スタチン不耐に有効
✔ 併用療法で威力を発揮

という特徴を持つ脂質異常症治療薬です。

従来治療を補完する“第2の柱”として、今後ますます注目される薬剤といえるでしょう。

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