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アサコールとペンタサの違いは?
公開. 更新. 投稿者:下痢/潰瘍性大腸炎.この記事は約3分55秒で読めます.
8,340 ビュー. カテゴリ:5-ASA製剤のDDSの違いは?
メサラジン(アサコール、ペンタサ)は経口投与では大部分が上部消化管で吸収されてしまいます。
そのため、潰瘍性大腸炎の病変部位である大腸に十分なメサラジンが到達するためには、優れたドラッグデリバリーシステムが必要です。
サラゾピリン(サラゾスルファピリジン:SASP)は、メサラジンにスルファピリジンをアゾ結合させることで大腸まで吸収されないようにしています。
サラゾピリンは腸内細菌により5-ASAとスルファピリジンに代謝され、このうち5-ASAのほうが小腸や大腸の炎症を抑える効果を発揮します。
5-ASAは体内で一部吸収されますが、吸収されて効果を発揮するのではなく、吸収されず腸管内に高濃度で存在することでより高い効果を発揮することがわかっています。その詳細な作用機序はまだわかっていません。
サラゾスルファピリジンでよく起こる副作用はアレルギー症状、皮疹、消化器症状、頭痛などで、これらの多くはスルファピリジンによって起こるといわれています。一方、メサラジンはスルファピリジンを含まないため、サラゾスルファピリジンと比べ副作用が少ないといわれています。
ペンタサは、エチルセルロースという多孔質皮膜でコーティングすることにより徐放性にしてあります。
しかし、サラゾピリンには、頭痛、体液の着色、可逆性精子減少などの副作用が、ペンタサは遠位大腸への効果が不十分であるなどの短所があります。
その短所を改良したのがアサコールです。
アサコールは、消化管内のpHの変化に着目し、メサラジンを高分子ポリマーでコーティングすることにより、pH7以上となる回腸末端から大腸全域にメサラジンが放出されるように設計されたpH依存型調節製剤です。
アサコールとペンタサの違い
アサコールもペンタサも同じ成分、メサラジン。
ペンタサはメサラジン錠、アサコールはメサラジン腸溶錠です。
アサコールの適応症は潰瘍性大腸炎のみ。
ペンタサの適応症は潰瘍性大腸炎とクローン病。
アサコールの添付文書には、「吸湿により溶出性に影響を及ぼすことがあるため,服用直前にPTPシートから錠剤を取り出すこと。」との記載があり、一包化不可。ペンタサは可能。
活動期の最大使用量はペンタサが1日4000mgなのに対して、アサコールは1日3600mg。
両者は5-ASAの放出機構が異なります。5-ASAはそのままの形で服用すると小腸上部で大半が吸収されてしまうため、メサラジン錠(ペンタサ)は5-ASAを腸溶性の多孔性被膜でコーティングすることで、小腸~大腸までの広範囲で放出されるように調節されています。
一方、メサラジン腸溶錠(アサコール)は、5-ASAにpH依存型の放出制御特性をもつ高分子ポリマーのコーティングが施されています。このコーティングによって、pH7以上となる回腸末端から大腸全域に5-ASAが放出されます。これにより、直腸炎型や左側大腸炎型のような主病変部が大腸の後ろのほう(肛門側)である場合に、5-ASAを高濃度で届けることが可能となり治療効果も高まると考えられています。
消化管における各部位のpH
十二指腸:pH5~6.5
空腸:pH6.1~7.1
回腸:pH7~8
大腸:pH5.5~7.6
アサコールの特徴
下部消化管に到達してから有効成分を放出するように製剤設計。
添付文書上は食後服用となっていますが、インタビューフォームには絶食時投与と食後投与で単回投与における血中濃度推移を比較したところ、統計学的有意差はみられなかったと記載されています。
服用後はほとんど吸収されず、大腸粘膜に直接作用することによって炎症を抑えます(体内吸収率:約28%)。放出調節製剤のため、噛んだり粉砕したりせず服用する必要があります。また、コーティングがそのまま排泄されることがあるので、糞便中に茶色の殻が見られることがあります。
ペンタサの特徴
小腸・大腸で放出されるように製剤設計。
炎症細胞から放出される活性酸素を消去し、炎症進展と組織障害を抑制。
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2 件のコメント
ありがとうございます!来週から初めての薬物治療を始めようと思っていました。とても為になりました。
3世代の治療薬を経験しています。
当初はサラゾピリンの副作用に悩まされ、S状結腸まで薬剤が到達しないペンタサ、先週から期待に応えてくれそうなアサコールに切り替えたばかりです。
大変参考になり、ありがとうございました。