2025年8月5日更新.2,564記事.

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水虫は足だけじゃない?白癬菌が感染する全身の部位と症状の違い

水虫は足だけじゃない?

「水虫」と聞くと、真っ先に思い浮かぶのは足の指の間のかゆみやジュクジュク感ではないでしょうか。確かに足の水虫(足白癬)は最も多いタイプですが、実は白癬菌(皮膚糸状菌)は足以外の部位にも感染することがあり、顔・手・体・頭・爪にまで及ぶことがあります。

水虫菌が引き起こす全身の白癬について、部位ごとの特徴や症状、誤診しやすい疾患との違いを勉強します。

水虫=足白癬?実は5種類以上に分類される白癬

まず、水虫とは医学的に「白癬(はくせん)」と呼ばれる皮膚真菌症の一つで、皮膚糸状菌(カビの一種)が皮膚の角層、毛、爪に感染して起こる疾患です。

白癬は、感染部位により以下のように分類されます。

白癬の種類感染部位医学名
足の水虫足指・足底足白癬
手の水虫手掌手白癬
体の水虫胸・背中・腹部体部白癬
頭の水虫頭髪・頭皮頭部白癬(しらくも)
顔の水虫頬・額・顎など顔面白癬
股の水虫鼠径部(いわゆる「いんきんたむし」)股部白癬
爪の水虫足・手の爪爪白癬(爪水虫)

最も多いのは足白癬(あしみずむし)

足白癬は、日本人の10人に1人が感染していると言われるほど一般的です。

【特徴的な症状】
・足の指の間がジュクジュク、あるいは乾燥して皮がむける
・かゆみ
・小さな水疱ができる
・角質が厚くなる(角化型)

放置すると爪にまで感染が広がることもあり、早めの治療が重要です。

手にも水虫ができる?手白癬(てみずむし)

水虫が手にできることは意外と知られていませんが、足白癬がある人のうち一部に手にも感染が広がっている場合があります。

【特徴的な症状】
・手のひらの皮がむける
・繰り返すあかぎれやかゆみ
・両手ではなく片手にのみ症状が出ることが多い

頭にもできる水虫「しらくも(頭部白癬)」

かつて「しらくも」と呼ばれた頭部白癬は、小児に多い疾患で、毛包に真菌が感染し、脱毛やかさぶたを生じます。

【症状】
・円形脱毛
・フケやかさぶた
・炎症が強い場合は膿疱を伴う(ケルスス禿瘡)

皮膚科での真菌検査(KOH法)により診断されます。

顔にも感染することがある!顔面白癬

顔にできる白癬もありますが、これがしばしば「はたけ」と混同されます。

【はたけ(顔面単純性粃糠疹)との違い】

特徴顔面白癬はたけ(粃糠疹)
原因白癬菌(カビ)不明(乾燥・体質)
年齢層子ども〜大人小児に多い
かゆみありなしまたは軽度
治療抗真菌薬の外用保湿剤・ビタミンA軟膏など
自然治癒治療が必要成長とともに自然改善あり

現在、「はたけ」は白癬菌によるものではないことが判明しており、真菌感染ではありません。

体幹にできる体部白癬

体に円形状の赤い斑点が広がり、中心が治りかけ、周囲が赤くなるのが典型的です。いわゆる「たむし」です。

【症状】
・かゆみを伴う赤い円形斑
・拡大して周囲がやや隆起
・周囲に小さな水疱を伴うことも

股にできる「いんきんたむし」(股部白癬)

特に男性に多く、蒸れやすい部位で感染が起こりやすいです。

【症状】
・鼠径部や陰部にかゆみ
・発赤、鱗屑(白い粉)
・下着に覆われる部分に多発

爪に感染する爪白癬(つめみずむし)

水虫は皮膚だけでなく爪にも感染することがあります。これを爪白癬(つめはくせん)と呼び、「つめ水虫」とも言われています。特に、足白癬を長年放置している人に高頻度で見られる病態です。

【症状】
・爪が白く濁る、黄色く変色する
・爪が厚く変形し、もろくなる
・爪の先端から浮いてくる
・複数の爪に感染することもあるが、多くは1~2本から始まる

爪白癬は他人に感染させるリスクもあり、家庭内感染の原因にもなります。

【治療が難しい理由】
爪は角質層が厚いため、外用薬が爪の内部まで浸透しにくく、完治までに時間がかかるのが特徴です。進行してしまった場合には、以下のような治療が検討されます。

【治療法】
・内服抗真菌薬(テルビナフィン、イトラコナゾールなど)
 → 有効だが、肝機能障害などの副作用に注意が必要
・外用薬(エフィナコナゾール爪外用液など)
 → 軽症例や併用療法に用いる
・レーザー治療や外科的除去が必要になることも

【治療期間】
通常、6カ月〜1年以上の治療期間を要します。途中でやめてしまうと再発しやすく、根気強いケアが必要です。

【予防のために】
・足の水虫を放置しない
・爪切りを家族と共有しない
・通気性の良い靴を選び、蒸れを防ぐ

水虫と間違えやすい疾患たち

白癬と間違われやすい皮膚疾患は複数あります。代表的なものを紹介します。

●汗疱(かんぽう/異汗性湿疹)
・汗をうまく排出できず、小さな水疱が手や足に出現
・夏季に多い
・かゆみが強いが、真菌ではないため抗真菌薬は無効

●接触皮膚炎(かぶれ)
・金属・化学物質・薬剤などによるアレルギー反応
・境界不明瞭で、真菌とは異なる

●乾癬・アトピー性皮膚炎
・鱗屑や赤み、かゆみを伴うが、真菌検査で陰性

水虫の診断と治療

水虫かどうかの診断は、皮膚科での顕微鏡検査(KOH法)や培養検査で真菌を確認することで行います。

●治療法
・外用薬(抗真菌薬):ルリコナゾール、テルビナフィンなど
・内服薬:爪白癬や広範囲に及ぶ場合に使用
・患部を乾燥させる:通気性を保つことが大切

まとめ:水虫は足だけの病気ではない

水虫=足というイメージは根強いですが、実際には白癬菌は皮膚・爪・毛に感染できるため、体の様々な部位で発症します。症状がかゆみや赤みだけであっても、白癬の可能性はゼロではありません。

また、水虫と似た症状をもつ疾患も多く、自己判断で市販薬を使う前に皮膚科受診が望ましいです。

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