2025年12月26日更新.2,700記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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酸化マグネシウムの小児薬用量は?

酸化マグネシウムの小児薬用量は?

小児の便秘治療において、酸化マグネシウムは長年にわたり使用されてきた定番薬である。
しかし近年、マグミット錠100mgの発売により、酸化マグネシウム製剤の中でマグミットだけが明確な小児用法・用量を持つという状況が生じている。

実際、
・他の酸化マグネシウム製剤:小児適応の明記なし
・マグミット錠:小児の用法・用量が添付文書に明記

という、同一成分でありながら位置づけが異なる状態になっている。

「酸化マグネシウムの小児用量はどう考えるべきか」
「なぜマグミット錠100mgが重要なのか」
を、添付文書の記載を踏まえて整理する。

酸化マグネシウムとは

浸透圧性下剤としての基本作用
酸化マグネシウム(MgO)は、浸透圧性下剤に分類される。

腸管内で水分を保持し、
・便を軟らかくする
・排便を促しやすくする

という作用を示す。

刺激性下剤と異なり、
・腸を直接刺激しない
・習慣性が生じにくい
・長期使用が可能

といった特徴から、小児便秘の第一選択として使用される。

胃内での反応と腸管での作用
酸化マグネシウムは胃酸と反応し、塩化マグネシウムとなった後、腸管内で炭酸マグネシウムなどに変化する。

これらのマグネシウム塩が腸管内の浸透圧を高め、
腸管内水分量の増加 → 便の軟化
という流れで作用する。

小児便秘の特徴

小児便秘は「慢性化しやすい」
小児の便秘は、
・排便時の痛み
・排便を我慢する癖
・トイレトレーニングの影響

などをきっかけに、悪循環に陥りやすい。

一度「出すと痛い」という経験をすると、
→ 便を我慢する
→ さらに硬くなる
→ ますます出なくなる

というループが形成される。

このため、小児便秘治療では
「今すぐ出す」より「硬くしない状態を維持する」
ことが重要となる。

酸化マグネシウムの小児用量が難しい理由

酸化マグネシウムの添付文書は、長らく

「年齢、症状により適宜増減」

という曖昧な表現にとどまっていた。

その結果、
・mg/kgで考えるのか
・年齢別で考えるのか
・どこからが過量なのか

が分かりにくく、経験則に依存した投与が行われてきた。

マグミット錠における小児適応の明確化

マグミット錠の小児用法・用量(添付文書)
マグミット錠では、小児の用法・用量が明確に規定されている。

小児
〈緩下剤として使用する場合〉
通常、1歳以上の小児には酸化マグネシウムとして、
1日20~80mg/kgを食後の2回に分割経口投与する。

さらに、用法及び用量に関連する注意として、

小児は1日40mg/kgを開始用量の目安とし、
患者の状態に応じて適宜増減すること。

と記載されている。

この記載が持つ意味
この記載により、
・開始用量:40mg/kg/日
・調整幅:20~80mg/kg/日

という、明確な投与レンジが示された。

これは、
・医師の処方判断
・薬剤師の用量チェック
・保護者への説明

すべてにおいて、大きな意味を持つ。

他の酸化マグネシウム製剤との違い

成分は同じ、だが「適応の扱い」が違う
マグミット以外の酸化マグネシウム製剤(後発品を含む)には、
確認用法として小児用量が明記されていないものが多い。

そのため形式上は、
・マグミット:小児用法・用量あり
・他製剤:小児適応の記載なし
という状態になっている。

実臨床では同様に使われてきたが、
添付文書上の裏付けがあるかどうかという点で、マグミットは一歩抜きん出た存在となった。

マグミット錠100mg発売の臨床的意義

なぜ100mg錠が重要なのか
従来のマグミット錠は250mg錠が中心であり、小児に用いるには
・割錠
・粉砕
・用量計算の煩雑さ
といった問題があった。

100mg錠の登場により、
・体重に応じた細かい調整
・処方意図が明確な用量設計
・調剤エラーの減少

が可能となった。

体重別用量の具体例
体重10kgの小児
・開始用量:40mg/kg → 400mg/日
・マグミット100mg × 4錠

体重15kgの小児
・開始用量:40mg/kg → 600mg/日
・マグミット100mg × 6錠

このように、割錠不要で添付文書通りの設計が可能になる。

副作用と用量調整の考え方

下痢は「効きすぎ」のサイン
最も多い副作用は下痢であり、
これは減量の目安として捉える。

小児便秘治療では、
毎日出ること
よりも

硬くならないこと
が重要である。

高マグネシウム血症への注意

通常用量ではまれだが、

・腎機能障害
・乳児
・長期高用量

では注意が必要。

傾眠、筋力低下、徐脈などの症状には留意する。

服薬指導での説明ポイント

保護者への伝え方
「便を無理に出す薬ではありません」
「便をやわらかく保つ薬です」
「下痢になったら量を減らす目安です」

といった説明が有効である。

まとめ:マグミット錠100mgは小児便秘治療を整理した

・酸化マグネシウムは小児便秘の第一選択
・マグミット錠には明確な小児用法・用量がある
・開始用量は40mg/kg/日
・調整幅は20~80mg/kg/日
・100mg錠で用量調整が容易になった

マグミット錠100mgの発売は、
単なる規格追加ではなく、
小児における酸化マグネシウム使用を「言語化・標準化」した出来事と言える。

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