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てんかん患者で注意すべき健康食品・サプリ一覧
公開. 更新. 投稿者:健康食品/OTC.この記事は約4分33秒で読めます.
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てんかん患者で注意すべき健康食品・サプリ一覧

てんかんは世界的にも有病率の高い神経疾患であり、日本でもおよそ1,000人に5〜8人が罹患しているといわれています。治療の中心は抗てんかん薬の内服であり、薬物血中濃度の安定が発作予防に直結します。
その一方で、患者さんが自己判断で摂取している健康食品・サプリメントが抗てんかん薬と相互作用を起こし、血中濃度を変動させたり発作閾値を下げたりすることがあります。
医薬品の添付文書やインタビューフォームには、健康食品やサプリとの相互作用はほとんど記載されていません。これは臨床試験が行われにくく、エビデンスが乏しいためです。
しかし「安全」とは限らず、報告例や薬理学的に十分に想定される相互作用も存在します。特にダイエット目的でのキトサンや健康増進目的での高麗人参などは一般的に使われるため、薬剤師・医師が注意喚起すべき領域です。
キトサン(Chitosan)
どんなサプリ?
カニやエビの殻に含まれる多糖類で、腸管内の脂質や胆汁酸を吸着し「ダイエット」「コレステロール低下」を目的に健康食品として広く販売されています。
相互作用
・バルプロ酸ナトリウムとの吸収阻害が動物実験で報告。
・小腸でバルプロ酸を吸着し、血中濃度(Cmax・AUC)が低下する可能性。
臨床上のリスク
・発作コントロール不良、躁転や再燃のリスク。
・添付文書には記載がないため見落としやすい。
・ダイエット目的で日常的に使用している人も多く、問診で確認が必須。
セントジョーンズワート(St. John’s Wort)
どんなサプリ?
抗うつ作用を目的に使用されるハーブ。国内外で広く流通。
相互作用
CYP3A4やUGTを誘導し、カルバマゼピン、ラモトリギン、トピラマート、バルプロ酸などの代謝を促進。
臨床上のリスク
・抗てんかん薬の血中濃度低下 → 発作再発。
・海外では実際に「発作悪化」の症例が報告。
カフェイン(コーヒー、エナジードリンク、緑茶濃縮サプリ)
相互作用
・中枢神経を刺激し、発作閾値を低下させる。
・バルプロ酸やフェニトインとの薬物動態的相互作用も報告。
リスク
・発作リスク増大、不眠や焦燥による誘発。
・特にエナジードリンクや「集中力アップ」を謳うサプリは注意。
イチョウ葉エキス(Ginkgo biloba)
相互作用
・抗血小板作用あり。バルプロ酸・フェニトインと併用すると出血リスク増大。
・CYP酵素への作用で血中濃度変動の可能性。
臨床上のリスク
・出血傾向(歯肉出血、皮下出血)。
・発作誘発報告も存在。
ミネラル系サプリ(鉄、亜鉛、カルシウム、マグネシウム)
相互作用
・フェニトイン、カルバマゼピンなどとキレート形成 → 吸収阻害。
リスク
・抗てんかん薬の血中濃度低下 → 発作再燃。
・特に鉄剤サプリやカルシウム強化食品は注意。
ビタミンB6(ピリドキシン)
相互作用
・通常量では安全。
・しかし高用量(数百mg〜/日)でGABA代謝促進 → 発作誘発。
リスク
・自己判断で「疲労回復」目的に高用量を摂取 → 発作悪化の危険。
ノニジュース(Morinda citrifolia)
相互作用
・CYP3A4、CYP2C9阻害作用の可能性。
・フェニトイン・フェノバルビタールの代謝を阻害。
臨床リスク
・血中濃度上昇による中毒(複視、ふらつき、認知障害)。
・実際にフェニトイン中毒例の報告あり。
朝鮮ニンジン(高麗人参, Panax ginseng)
相互作用
・UGT誘導作用によりラモトリギンの代謝を促進。
・血中濃度低下 → 発作コントロール不良。
臨床リスク
・発作再燃の可能性。
・中枢刺激作用により発作閾値を下げる可能性も指摘。
アルコール含有サプリ・健康酒
相互作用
・中枢抑制作用で抗てんかん薬の副作用増強。
・またアルコール自体が発作誘発因子。
臨床リスク
・発作再発、眠気やふらつきの悪化。
まとめ
てんかん患者における健康食品・サプリとの相互作用は、添付文書に記載されない「盲点」です。
しかし、薬理学的な裏付けや症例報告があるものも多く、軽視できません。
・キトサン → バルプロ酸の吸収阻害
・セントジョーンズワート → 代謝誘導による血中濃度低下
・ノニ → フェニトイン・フェノバルビタール濃度上昇、中毒
・高麗人参 → ラモトリギン濃度低下、発作リスク
などは特に重要です。
薬剤師や医師は「サプリメントや健康食品を摂っていますか?」という質問を必ず行い、服薬指導に反映させるべきでしょう。
患者さんにとっても「天然だから安全」「食品だから副作用はない」とは限らないことを理解することが大切です。
今後の課題
・健康食品は規制が緩く、医薬品との相互作用に関する体系的な研究は少ない。
・臨床現場での症例報告の集積、データベース化が必要。
・医療従事者も「薬だけでなくサプリもチェックする」という姿勢が求められます。