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薬を飲み忘れたらどうすればいい?
公開. 更新. 投稿者:服薬指導/薬歴/検査.この記事は約4分37秒で読めます.
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薬を飲み忘れたらどうする?

「薬を飲み忘れてしまいました。どうすればいいですか?」
薬局の窓口や電話でも、薬剤師がとてもよく受ける質問です。特に高血圧、糖尿病、心疾患などの慢性疾患の治療薬を長期間飲んでいる方にとっては、日常の些細なことが原因で「うっかり忘れた」ということが誰にでも起こり得ます。
基本の考え方:「気づいたらすぐ」でも「間隔が大事」
薬を飲み忘れたときの基本的な対応は、以下の2点に集約されます。
・気づいた時点ですぐに服用する
・次回の服用時間との間隔を考慮する
ただし、すべての薬がこの原則に当てはまるわけではなく、薬の種類や飲み方によって判断が異なります。とはいえ、まずは共通する一般的な対応指針を知っておくと、慌てずに行動できます。
飲み忘れ時の間隔の目安
服用間隔が短すぎると、血中濃度が急激に上昇し、副作用のリスクが高まります。そのため、飲み忘れに気づいたときは、次の服用時間までにどれだけ時間が空いているかが判断の基準になります。
服用回数 | 通常の間隔 | 最低限空けたい時間 |
---|---|---|
1日3回 | 約8時間 | 4時間以上 |
1日2回 | 約12時間 | 6時間以上 |
1日1回 | 24時間 | 8時間以上 |
具体例:
・1日2回 朝夕の薬を朝忘れ、13時に気づいた場合
→ すぐ服用して、次回(通常19時)まで6時間以上空いていればOK。
・1日1回 朝食後の薬を夜11時に思い出した場合
→ いつも7時に飲んでいるなら、8時間以上空くので飲んでよいケースが多い。
ただし、これはあくまで一般的な目安であり、薬の種類によっては当てはまらないこともあります。後述する「例外」に注意してください。
絶対にやってはいけないこと:「2回分まとめて飲む」
飲み忘れた分を取り戻そうと、次の服用時に「2回分まとめて飲む」のはNGです。これは過量投与による副作用や中毒の危険があるため、どんな薬であっても避けるべき対応です。
薬の成分は体内でゆっくり代謝・排出されていくため、1回分抜けたからといってすぐに治療効果がゼロになるわけではありません。焦らず、落ち着いて、次の服用スケジュールを調整することが大切です。
薬によって対応が異なる場合
飲み忘れ時の対応は、薬の種類や病状によって変わることがあります。以下は、飲み忘れに特に注意が必要な薬の例です。
① ステロイド(プレドニゾロンなど)
・朝に飲むよう指示されることが多い薬
・ホルモンのリズムに合わせた服用が基本
・夜に気づいても無理に飲まないほうがよい場合がある
・医師に確認を
② 抗てんかん薬、抗不整脈薬、抗精神病薬
・血中濃度が安定していないと発作・再発リスクが高まる
・原則として早めに飲むべき
・しかし間隔が短くなると副作用の懸念もある
・医師・薬剤師に相談を
③ 抗菌薬(抗生物質)
・飲み忘れを繰り返すと耐性菌のリスクが高まる
・忘れた場合でもできる限り時間をあけて全量をしっかり飲み切る
飲み忘れを防ぐには?
誰でも忘れることはありますが、頻繁な飲み忘れが続くと治療の効果が出にくくなるため、できるだけ防ぎたいところです。
◆飲み忘れ予防の工夫
・服用時間を毎日同じ時間に固定する
・アラームを設定する(スマホや時計)
・お薬カレンダーや服薬支援アプリを使う
・食事や歯磨きとセットにする
・1回飲み切りの薬カレンダー型パックを使う(薬局で対応可)
旅行・外出時の飲み忘れ対策
・服薬スケジュールを書き出して持参
・1回分ずつ分けて携帯できる薬ケースに入れる
・万が一に備え、保険証・お薬手帳を忘れずに
外出先で薬を飲み忘れても、近くの薬局で「いつ、何を飲んでいるか」伝えられるようにしておくと対応がスムーズです。
よくあるQ&A
Q. 気づいたら寝る前でした。飲むべき?
→ 薬の種類によります。1日1回の薬で、朝に飲み忘れて夜に気づいた場合、8時間以上間隔があれば飲んでよいケースが多いですが、眠れなくなる作用(ステロイド、カフェイン系)がある薬は避けた方が無難です。
Q. 食後に飲む薬を、食べずに思い出したら?
→ 空腹時に飲んでも構わない薬がほとんどですが、胃に負担がかかる薬(NSAIDsなど)は軽く何かを食べてから飲むか、医師に相談を。
Q. 毎日2回の薬を、昼と夜に飲んでいます。朝飲み忘れて夜飲めばいいですか?
→ 勝手に時間帯を変更するのはNG。間隔が短くなりすぎたり、薬の効果時間帯がずれると不調を招くことがあります。次回服用時間までの間隔が6時間以上空いていれば飲んでもよいケースが多いですが、継続的に違和感があれば、主治医に相談してください。
最後に:1回の飲み忘れで焦らないこと
薬を飲み忘れたとき、「どうしよう…」と焦る気持ちはよくわかります。
でも、1回の飲み忘れで治療が台無しになるわけではありません。
大切なのは、その後の対応と、今後の予防策です。
薬を飲み忘れるのは誰にでも起こり得ること。
だからこそ、あらかじめ一般的な対応を知っておくことで、落ち着いて行動できます。
そして、もし不安なときは、遠慮なく薬剤師や医師に相談してください。
それが、あなたの健康と治療の成功につながります。