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インスリンを同じ場所に打っちゃダメ?
公開. 更新. 投稿者:糖尿病.この記事は約4分43秒で読めます.
5,417 ビュー. カテゴリ:皮膚アミロイドーシスとリポジストロフィー
注射を同じ場所に打つと皮膚が硬くなる?
令和2年5月19日の厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長通知に基づく改訂で、インスリン注射の同一箇所への注射に対する注意が追記された。
以前から「投与部位」は毎回変えるように、以下のような注意はされていた。
皮下注射は、腹部、大腿部、上腕部、臀部等に行う。投与部位により吸収速度が異なり、その結果作用発現時間が異なるので部位を決め、その中で注射場所を毎回変えること。前回の注射場所より2〜3cm離して注射すること。
追記されたのは、重要な基本的注意の以下の文
同一箇所への繰り返し投与により、注射箇所に皮膚アミロイドーシス又はリポジストロフィーがあらわれることがあるので、定期的に注射箇所を観察するとともに、以下の点を患者に指導すること。
・本剤の注射箇所は、少なくとも前回の注射箇所から2〜3cm離すこと。
・注射箇所の腫瘤や硬結が認められた場合には、当該箇所への投与を避けること。
皮膚アミロイドーシス又はリポジストロフィーがあらわれた箇所に本剤を投与した場合、本剤の吸収が妨げられ十分な血糖コントロールが得られなくなることがある。血糖コントロールの不良が認められた場合には、注射箇所の腫瘤や硬結の有無を確認し、注射箇所の変更とともに投与量の調整を行うなどの適切な処置を行うこと。血糖コントロールの不良に伴い、過度に増量されたインスリン製剤が正常な箇所に投与されたことにより、低血糖に至った例が報告されている。
皮膚アミロイドーシスとリポジストロフィーがどういうものかは写真などを検索してもらったほうが早いが、皮膚アミロイドーシスはインスリンボールとも呼ばれる。リポジストロフィーはインスリンリポハイパートロフィーとも呼ばれる。
インスリンの皮下注射を長期間同じ場所に続けていると、皮下組織が増生した硬結となり、その部位に注射したインスリンの大半は局所で分解され、血中に到達しなくなることがある。
このような部位には、1日100単位以上のインスリンを注射しても、血糖値が下がらないことすらある。
一方、インスリンを静脈注射すれば、血糖はこれによく反応して低下する。
大量のインスリンを使用しても効かないときには、まず注射部位の状況を確認したい。
皮下組織でのインスリン吸収障害により皮下注射したインスリンが血中に到達せず、多量の皮下インスリン注射を必要とする症例が報告されている。
生検例では、皮下にインスリンの集積が認められる。腹膜内にインスリンを投与する埋め込み型ポンプにより、血糖の低下が認められたという報告がある。
糖尿病性浮腫性硬化症は、血糖のコントロールが不良な症例に時に認められる皮膚病変で、組織学的には、真皮・皮下結合組織の膠原線維の増生と浮腫性膨化、膠原線維問の酸性ムコ多糖の沈着が見られる。病変は多くの場合、後頚部から肩甲部にはじまるが、体幹部まで広がりインスリンの吸収障害をきたした症例が報告されている。
限局した部位に自己注射を繰り返すとインスリンの脂肪合成作用によるしこり(lipohypertrophy:LH)をきたし、インスリン吸収が阻害されることがわかった。
注射部位のローテーションを徹底することでLHの減少に努める。
同じ場所に注射しちゃダメ?
注射する部位を決める際は、毎回指2本分くらい、2~3cmずつずらし、同じ部位に注射し続けないようにする。
同じ部位に続けて注射すると、皮膚が硬くなることによりインスリンの吸収が悪くなるといわれている。
また、注射部位の皮膚をアルコール綿で少し広めに消毒し、乾くのを待って注射する(ただし、消毒できない場合でも、消毒を省略し注射することが大切である。)
インスリン注射はどこに打っても良い?
注射は皮下に行う。
自己注射部位は腹部と大腿部が一般的で、腹部に注射する場合は、効果が現れるのも切れるのも早く、一方、大腿部に注射する場合は吸収が遅いといわれている。
腕に打ってもいい。
インスリン注射の主な場所として、お腹、上腕、太もも、お尻などの部位になりますが、腕に打っても大丈夫です。また体型によって好ましい部位や、運動の習慣などによってインスリンの吸収速度に若干差があったりしますので、主治医と相談してみましょう。
またインスリンは同じ場所ばかりに打っていると、皮下にしこりができて固くなってしまい、インスリンの効きが悪くなることがよくあります。どの部位に打つにしても毎回少しずつずらして注射をする必要があります。
インスリンの吸収の速い注射部位は?
お腹に注射する人が多いが、中には違う部位に打つ人もいる。
インスリンの注射部位は、①お腹、②上腕の外側部分、③お尻、④太ももの外側部分が適し、①>②>③>④の順にインスリン吸収が速いとされています。
その中でも、吸収が速い、温度の変化が少ない、運動による影響を受けにくいといった理由から、①お腹 が最も適した注射部位であると言われています。
ただし、おへその周り5cm以内は、インスリン吸収が一定ではないため、避ける必要があります。
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