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インスリンに気泡が入っていたら使えない?
公開. 更新. 投稿者:糖尿病.この記事は約4分43秒で読めます.
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小さな気泡の正体と正しい取り扱い

糖尿病治療で自己注射を行っている方の中には、インスリン製剤の中に「気泡が入っているのを見つけて不安になった」という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
「これって打って大丈夫なの?」「気泡があると薬の量が減ってしまうんじゃないか?」「空気が体に入ってしまったら危ない?」といった不安は、誰にでも生じるものです。
インスリンに気泡が入っていても使える?
結論からお伝えします。
インスリン製剤に小さな気泡が入っていても、空打ちでインスリンが針の先から出ることを確認できていれば、そのまま使用しても問題ありません。
ごく小さな気泡が製剤内に見えることは珍しくありませんが、それによって投与量が大きく変わることは基本的にありません。
気泡が残ってしまう原因とは?
インスリン製剤に気泡が見られる主な原因は以下のようなものです。
・カートリッジの製造時に微小な空気が入る
・使用時にペンを振ったり傾けたときに空気が混ざる
・保管時に温度変化があった場合に微細な気泡が発生する
・ゴム栓まわりの構造的なすき間に空気がたまる
特にペン型のインスリン製剤では、気泡がゴム栓の周囲に沿って残ることが多く、ミリオペンを横にすると可視化されやすくなります。 これは構造上自然な現象で、異常ではありません。
気泡は体に入っても大丈夫?
「空気を体内に入れてしまったらどうなるの?」と心配される方もいますが、皮下注射の場合、ごく微量の空気が入っても健康に悪影響を及ぼすことはほとんどありません。
皮下には豊富な血流がありますが、注射器のように空気を静脈や動脈に直接注入するわけではないため、血管内に大きな空気が入ってしまう「空気塞栓症」のような事態はまず起こりません。
空打ち(エアショット)の目的と意味
ペン型インスリンでは、「使用前に空打ちしてください」という説明があります。
この空打ち(エアショット)は、主に以下の目的で行われます。
・注射針内の空気を抜く
・インスリンの通り道を確保する
・針の詰まりがないかを確認する
・実際に薬液が出ることを確認して安心して使う
通常は1~2単位を空打ちして、針の先からインスリンがしっかり出ていることを目視で確認できればOKです。それでも小さな気泡が内部に残っていても、投与量には影響しないとされています。
小さな気泡はなぜ消えないのか?
製剤内に残る小さな気泡は、ゴム栓の周囲のごく狭い空間にとどまり、薬液と一緒に出にくい構造になっていることがあります。
特に長期間使用していると、温度変化や移動の影響で気泡が小さく分散し、ペンを傾けたときにだけ見えるようになるケースもあります。
こうした気泡は吸入操作時に薬液と一緒に出てこないことがほとんどであり、除去する必要はありません。
どんな気泡なら注意が必要?
基本的には「小さな気泡」であれば問題ありませんが、以下のようなケースでは念のため注意が必要です。
・明らかに大きな気泡(1cm以上)がある
・複数の気泡がインスリン薬液の大部分を占めている
・気泡のせいで空打ちしても針の先から薬液が出てこない
・保管中の温度管理に不安がある(凍結や高温)
このような場合は、薬剤師や医師に相談することをおすすめします。
ペン型インスリン製剤の取り扱いのポイント
気泡の発生を防ぐには、以下のような操作・保管の工夫が有効です。
・激しく振らず、やさしく扱う
・使用前にペンを数回軽く叩いて気泡を針側に集める
・保管時は常温(25℃以下)で、直射日光や冷凍を避ける
・使用中は横置きよりも立てた状態での保管がおすすめ(針が上向きになるように)
気泡を防ぐための工夫
少しの工夫で、気泡が気にならなくなるケースも多いです。
・ペンを垂直にして操作:
注射時にはペンの針先を上にして、気泡が針方向に集まるようにすると空打ちしやすくなります。
・使用前に軽く叩く:
ペンの側面を軽く指で弾くようにすると、微細な気泡が浮上して集まりやすくなります。
・空打ちの単位は守る:
説明書通りの単位(1~2単位)での空打ちを必ず行いましょう。
薬剤師からのアドバイス
気泡に神経質になりすぎるよりも、以下のポイントをしっかり確認することが重要です。
・空打ちでインスリンがきちんと出ているか?
・針が確実に皮下に刺さっているか?
・注射後にきちんと押し切っているか?
万が一、注射後に薬液が漏れていたり、打ったはずなのに血糖値が高くなるなどの異常を感じた場合は、迷わずかかりつけ医や薬剤師に相談してください。
インスリン製剤に気泡が入っているのを見つけたとき、不安になるのは当然のことです。
しかし、以下のポイントを押さえておけば、気泡があっても安心して使用することができます。
・空打ちで針先から薬液が出れば問題ない
・小さな気泡は薬の量に影響しない
・空気が少量皮下に入っても健康にはほとんど影響がない
・気になるときは薬剤師に相談できる環境を整えておく
日々の自己注射を安全に、安心して行うためにも、ちょっとした知識と心の余裕が大切です。