記事
こむら返りに効く薬
公開. 更新. 投稿者:痛み/鎮痛薬.この記事は約7分25秒で読めます.
12,081 ビュー. カテゴリ:目次
こむらがえり
足がつることを「こむら返り」とも言い、足のふくらはぎの筋肉が痙攣することです。
腓腹筋(ふくらはぎの筋肉)に起こる突発的な筋の痙攣のことをいいます。
こむら返りは、健常な若年者でも陸上競技や水泳などの激しい運動をしている最中などに起こりやすい。
発症の機序は解明されていないが、運動中の場合、筋疲労や過剰な発汗による電解質異常などが原因だと考えられている。
中高年者では、就寝時、特に明け方によく起こることが知られている。
まれに糖尿病や尿毒症、甲状腺疾患、電解質異常などが原因になることがあるが、夜間のこむら返りのほとんどは原因が不明である。
こむら返りの予防・治療に関する報告はあまりなく、一般的には、筋肉を伸ばすストレッチや寝る前に入浴するなどの予防法がまず指導される。
こむら返りの原因
こむら返りの原因は特定できないことが多いが、運動中のこむら返りは、水・電解質代謝の不均衡や同一筋の繰り返しの使用により神経終末の活動性が上昇することで起こると考えられている。
こむら返りは次のようにして起こります。
筋肉を包んでいる膜にある受容体が刺激されると、「カルシウム放出チャネル」が作動して、筋小胞体に蓄積されていたカルシウムを筋肉細胞内に放出します。そして筋肉内にあるアクチンと結合してミオシンを引き寄せ、収縮が起こります。
一方、筋小胞体においてATPをエネルギー源とした「カルシウムポンプ」が作動すると、逆に筋肉細胞内のカルシウムが筋小胞体に戻り、筋肉細胞内のカルシウムが減少します。
そこでアクチンに結合していたカルシウムが離れていき、ミオシンが元の位置に戻って筋肉が弛緩します。
ここで働くATPは、マグネシウムの存在下で作られるので、マグネシウムが不足するとATPが不足状態になり筋肉は弛緩できず、収縮ばかりして痙攣状態になってしまいます。
このように、カルシウムはマグネシウムの吸収に必要なので、両方をバランス良く摂取することが大切です。
肝硬変では水・電解質代謝異常のほか、アミノ酸代謝異常、中枢神経・脊髄神経レベルの異常、筋細胞内のカリウム・マグネシウムの減少・血中タウリン濃度の低下などが関与しているとみられている。
こむら返りとミネラル
こむらがえりに関係するミネラルとして、カルシウム、マグネシウム、カリウムがある。
カルシウムは筋肉をスムーズに収縮させるさせるために大きな役割をはたしており、これが不足するとこむら返りが起こりやすくなります。
マグネシウムはカルシウムポンプを働かせるために必要なATPを作るために必要。
カリウムにも筋肉の収縮を起こす働きを促進したり、制御したりする効果がある。
足がつる、という人にOS-1を勧めてみたりする。
Ca拮抗薬とこむらがえり
Ca拮抗薬の副作用にこむらがえりがある。
アムロジンの副作用にも「筋痙攣」とある。
カルシウムチャネルがうまく働かないと、筋肉が痙攣してしまうのかもしれない。
こむら返りの予防法
腓は、ふくらはぎのことを指します。
こむら返りとは、ふくらはぎの腓腹筋や神経が異常緊張を起こし、筋肉が収縮したまま弛緩しない状態になり激痛を伴う症状です。
局所の筋肉が硬く収縮し、膨隆しているのがわかります(筋攣縮)。
この状態は数秒〜数分続き、特に運動や水泳後、睡眠中に多く見られます。
筋肉の疲労や血液中の水分不足、電解質のバランスの変化が原因ではないかといわれています。
対処法としては、スポーツの後などに、筋肉の疲労を取り、血行をよくする目的でマッサージや指圧などを行ったり、パップ剤などの消炎鎮痛薬を用います。
また、スポーツドリンクなどで水分とマグネシウムなどの電解質の補給も心がけるとよいでしょう。
足がつるのを防止する栄養素として役立つミネラルのうち、最も不足しがちなのはマグネシウムです。
マグネシウムは、細胞の活動に必要なカルシウムやカリウムの出入りを調節する働きをもっています。
慢性的なこむら返りは、運動不足の注意信号と考えられますので、普段からストレッチ体操を行うようにします。
こむらがえりに使う薬
一般には、こむら返りに対する積極的な薬物療法は行われないが、1日に何回も痙攣を起こすような重症例では、中枢性および末梢性の筋弛緩薬や、抗てんかん薬、芍薬甘草湯、カリウム薬が投与されることもある。
ただし、いずれの薬剤も顕著な改善効果が得られないこともある。
芍薬甘草湯とこむら返り
芍薬甘草湯は、下肢の痙攣性疼痛(こむら返り、足がつる)や、急な腹痛、胃痙攣のような筋肉の痙攣を伴う疼痛に頓服としての効果があります。
連用してはいけません。
うっ血性心不全や心室頻拍の副作用が報告されており、体の中に水をためる働きもあるので、心臓病の人は服用してはいけません。
また、高血圧、腎臓病やむくみのある人は注意が必要です。
芍薬甘草湯が神経伝達物質として細胞内外で作用し、カリウムイオンの流出を促進させる一方、カルシウムイオンの流入を抑制させることにより筋弛緩作用を発揮するのではないかと考えられている。
構成生薬の芍薬は節前性に、甘草は節後性にアセチルコリンの作用を抑制して平滑筋の収縮を抑制する。
さらに芍薬は、平滑筋、骨格筋の両方に対して筋の攣縮を弛緩させる作用がある。
芍薬の主成分ペオニフリンには鎮痛、鎮静、鎮痙、抗炎症作用がある。
ステロイド作用、抗炎症作用、抗アレルギー作用および肝庇護効果を持つ甘草の主成分グリチルリチンが、芍薬の効果を強める可能性も推察されている。
偽アルドステロン症
芍薬甘草湯に含まれる甘草のグリチルリチンも筋弛緩、鎮痛作用などを発揮し、こむら返りを改善するとされている。
しかし芍薬甘草湯では、グリチルリチンによる偽アルドステロン症に注意しなくてはならない。
発症すると高血圧、低カリウム血症、低レニン血症などのために、だるさ、脱力感、手足の痺れなどの自覚症状を生じてしまう。
特にフロセミド(ラシックス、オイテンシン)などのループ系利尿薬、チアジド系利尿薬のトリクロルメチアジド(フルイトラン)、甘草含有製剤などを併用すると、偽アルドステロン症を起こしやすい。
フランドルテープとこむら返り
こむら返りといえば芍薬甘草湯ですが、硝酸薬がこむら返りに効くという話があります。もちろん適応外。
足がつるからというだけでフランドルテープを処方する医者はいないでしょうけど。
筋肉とNOの関係。
ニトログリセリンから放出される一酸化窒素には平滑筋弛緩作用があります。
ニトログリセリンは生体内で分解を受けて、その構造から一酸化窒素を放出します。
一酸化窒素はグアニル酸シクラーゼという酵素を活性化しますが、この酵素はGTPからサイクリックGMP (cGMP)を産生します。
最終的にこのcGMPが血管平滑筋細胞膜のカルシウムポンプを活性化することにより細胞質中のカルシウム濃度を低下させます。
筋肉細胞の収縮弛緩はすべて細胞質中のカルシウムイオン濃度により制御されていて、その濃度が上昇すると収縮し、低下すると弛緩するようになっています。
そのため、細胞質中のカルシウム濃度を低下させる作用を持つcGMPは血管平滑筋を弛緩させることができるわけです。
なので、NOを放出するニトログリセリン、硝酸剤には筋弛緩作用があり、筋痙攣、こむら返りに効果がある。
ふくらはぎに貼付しなければならないので、普通に胸部にフランドルテープを使っている患者が足をつりにくくなるわけではないようだ。
ウラリットとこむら返り
クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物(ウラリット)がこむら返りに使われることも多いが、なぜこむら返りに効くのかは判明していない。
尿中カルシウム排泄量の低下作用などが症状改善に寄与すると考えられている。
ウラリットに含まれるクエン酸はこむらがえりの痛みの原因になる乳酸の蓄積を抑える作用があるそうです。
また、スポーツドリンクでこむらがえりが緩和すると言われていますが、カリウムやナトリウムなどの電解質の補給によるものだといわれています。
ウラリットの成分もスポーツドリンクみたいなものなので効果はあるだろう。
エルカルチンとこむら返り
エルカルチンという薬がこむら返りに使われる。
カルニチンは筋細胞における脂肪酸代謝に必須のアミノ酸誘導体で、主に肝臓と腎臓で合成され、腎臓で再吸収される。
腎機能が低下している患者や透析患者では、しばしばカルニチンの欠乏や不足が生じる。
カルニチンが不足すると、筋細胞におけるエネルギー代謝が障害され、筋肉痛や筋痙攣などの骨格筋症状が表れる。
透析患者を調べた研究で、有痛性筋痙攣を起こしやすい患者は、そうでない患者よりも血中カルニチン濃度が低いことが明らかになった。
また、カルニチンを補充すると透析中の筋痙攣が抑制できることが報告され、有痛性筋痙攣の発症を抑制するためにカルニチン補充による治療が試みられるようになった。
エルカルチン
レボカルニチンは、食事(肉類、乳製品など)による摂取と、生体内(肝臓、腎臓、脳)での生合成により供給される生体内物質であり、細胞膜に存在する有機カチオン/カルニチントランスポーター(OCTN2)を介して主として骨格筋、心臓、肝臓などの組織に取り込まれ存在している。
細胞内のカルニチンが欠乏すると、カルニチンの機能が不十分となり肝臓、脳、骨格筋、心筋など種々の臓器で異常が生じる。
重篤なカルニチン欠乏症では、低血糖発作による昏睡など生命を脅かす臨床症状を呈し、重篤で不可逆な臓器障害を来す。
ACE阻害薬とこむら返り
カリウム不足が原因と疑われるこむら返りに対しては、血中カリウム濃度を上昇させるような薬が効果があると言われる。
AEC阻害薬やカリウム保持性利尿薬によって高カリウム血症の副作用を生じることがあるが、カリウムを上げたいケースでは有利に働く。
ACE阻害薬はアンジオテンシンⅡの産生抑制を介して、アルドステロンの血中濃度を低下させる。アルドステロンの低下は、ナトリウムの排泄促進や利尿作用によって同薬の降圧効果に寄与するが、その半面、カリウムの排泄が抑制され、血中カリウム濃度が上昇する。
スピロノラクトンなどのカリウム保持性利尿薬もアルドステロンに拮抗する薬である。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。