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トラクリアが強皮症に効く?
公開. 更新. 投稿者:心不全/肺高血圧症.この記事は約2分26秒で読めます.
2,631 ビュー. カテゴリ:トラクリアと強皮症
エンドセリン受容体拮抗薬のトラクリアは肺高血圧症の治療薬として使われている。
しかし、トラクリアは「肺高血圧症」の適応だけでなく、「強皮症」の適応も有する。
心疾患の肺高血圧症と、一見皮膚病?の強皮症との関係がよくわからない。
なぜトラクリアはこれらの違う病気に適応を有するのか?
強皮症は皮膚の病気?
まず強皮症という病名だけを聞くと、皮膚がゴワゴワするような皮膚病というイメージをしがちだが、皮膚だけの病気ではない。
強皮症には全身性強皮症と限局性強皮症があり、限局性強皮症は皮膚のみの病気ですが、全身性強皮症になると内臓まで侵される。
逆に皮膚の病変は徐々にやわらかくなって、内臓病変だけ残ることが多いらしい。
限局性強皮症から全身性強皮症に移行することは少ないようだ。
限局性強皮症だと特定疾患には該当せず、特定疾患の医療症を持っていれば全身性強皮症になるので、様々な薬を飲んでいるだろう。
強皮症では末梢循環障害を来しやすいので、血管拡張薬や抗血小板薬が処方される。
そのため、血管収縮阻害作用を有するトラクリアが強皮症に使われます。
内臓が硬くなれば様々な合併症をきたすので、そちらに対する治療薬も多く使われます。
関節が硬くなればリウマチ様症状を呈するし、肺が硬くなれば肺線維症(間質性肺炎)、肺の血管が硬くなれば肺高血圧、心臓が硬くなって不整脈、食道が硬くなって嚥下困難、胃が硬くなって逆流性食道炎、胆管が硬くなって原発性胆汁性肝硬変などなど。
強皮症と肺高血圧症の関係
強皮症では、肺の血管が硬くなって肺の血管抵抗が高くなり、肺高血圧症(PH)をきたすこともあります。
この症状は動作時の息切れとして自覚されますが、本人が最初は気がつかないことがあります。しかし、ドップラー心エコーをすることで、早期発見が可能です。
膠原病のなかでも強皮症、混合性結合組織病、全身性エリテマトーデスなどは肺高血圧症を合併する頻度の高い疾患です。発症後長期間を経て出現することもあり、心エコーによる定期的な検査が必要です。
ニトログリセリン軟膏が強皮症に効く?
米国皮膚科学会の強皮症ガイドラインには虚血性潰瘍の外用治療薬としてニトログリセリン軟膏の外用療法が入っています。
強皮症の初期症状としてRaynaud現象は最もよく見られます。
この原因として小血管のスパスムによって起きると考えられています。
このRaynaud現象が繰り返されることにより、組織の虚血、再還流時のreactive oxygen species による組織障害、重金属イオン存在下でのタンパクの不完全分解が起こり、この分解タンパクが自己免疫現象の抗原として働き、さらに組織障害が進行すると考えられています。
ニトログリセリン軟膏は健常人が使用した場合では速やかに吸収され副作用を発現する恐れがありますが、強皮症の患者では吸収が著しく悪いため、塗布部位の局所作用しか発現しません。
ニトログリセリン軟膏の強皮症への治療効果は数週間後に自覚的・他覚的に皮膚の軟化が認められています。
強皮症以外でもRaynaud現象を示す全身性エリテマトーデス患者においてニトログリセリン軟膏によって末梢循環の改善により皮膚潰瘍に有効であったことが報告されています。
日本では以前はバソレーター軟膏という製品がありましたが、現在は販売中止となっています。
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