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検査薬は処方しちゃダメ?院外処方できない薬
公開. 更新. 投稿者: 30,850 ビュー. カテゴリ:調剤/調剤過誤.この記事は約4分2秒で読めます.
目次
検査薬は院外処方できない? ― ニフレック、マグコロール、麻酔薬などの扱い

薬局で調剤をしていると、時々疑問に思う処方せんに遭遇することがあります。
それは、治療目的ではなく、検査や処置を行う過程で一時的に使用される薬剤が院外処方で送られてくるケースです。
たとえば、
・大腸内視鏡検査前に使用する腸管洗浄剤(ニフレック、マグコロール)
・下部消化管造影検査前の下剤
・採血の前処理薬
・皮膚処置に用いる局所麻酔薬(キシロカインゼリー)
・水イボ処置前の麻酔テープ(ペンレステープ)
これらは、一般に治療薬ではなく、検査や処置のために医療機関内で使用する薬剤です。
本来は院内の診療報酬(検査料・処置料)に含めて評価されるべきため、原則として院外処方で扱うべき薬ではありません。
しかし現場では、稀にこれらの薬剤が処方せんに記載されて患者が薬局に来局することがあります。
この「検査用薬」「処置用薬」を院外処方せんで扱うことが適切なのか、保険請求上どう扱うべきか、薬剤ごとの具体例、根拠法令と実務対応まで勉強していきます。
検査用薬・処置用薬とは?
治療目的ではない薬剤の定義
薬は通常、病気を治療するために処方されます。しかし、医療現場には治療薬ではない薬剤も存在します。
| 種類 | 例 | 目的 |
|---|---|---|
| 検査用薬 | ニフレック、マグコロール、ラキソベロン(検査前) | 検査を実施するための前処置 |
| 処置用薬 | キシロカインゼリー、ペンレス | 処置を行うための一時的麻酔 |
| 診断用薬 | 造影剤、眼底検査薬 | 診断を行うための薬 |
これらは診療行為(検査・処置)の一部として使用されるものであり、治療そのものではありません。
診療報酬に含まれる
診療報酬制度では、検査料や処置料の中に付随して用いられる薬剤や材料費が含まれていると解釈されています。
つまり、医療機関が検査や処置を行う際に用いる薬剤は院内評価で完結すべきという考え方です。
検査用薬の院外処方は保険上なじまない ― 根拠通知
検査薬の院外処方が問題となる根拠は、以下の通知です。
「検査に当たって施用した薬剤の費用は別に算定できるが、
第2章投薬の部に掲げる処方料、調剤料、処方せん料および調剤技術基本料は別に算定できない。」
(平成26年保医発0305第3号)
この通知により、
・検査のために使用する薬剤は院外処方せんとして発行すべきではない
・たとえ処方せんに記載されても調剤技術料や管理料は算定できない
と解釈されています。
保険制度上の扱い
・検査薬は 院外処方として評価されない:保険調剤として「技術料を算定できない」
・ただし、行為そのものは禁止されていない:薬剤料のみ算定可
大腸内視鏡前の腸管洗浄剤は処方できるのか?
(例)ニフレック
適応:大腸内視鏡検査、バリウム注腸造影検査、大腸手術前処置
(例)マグコロール
適応:大腸検査前・腹部外科手術前処置
どちらも用途は前処置であり、治療ではないため、院外処方は原則不適切です。
結論:保険調剤としては扱えない
対応:薬剤料のみ算定し、技術料は算定しない
ただし、例外的に以下のような事情はあり得ます。
・院内在庫がない
・病院側が管理しない方式を採用している
・遠隔地(検査を別の医療機関で行うなど)
→ それでも算定は薬剤料のみとすべき。
下剤(ラキソベロン)は?
ラキソベロンが処方され、患者が「検査前に飲む」と言った場合
同じ薬でも、治療目的か検査目的かで扱いが変わります。
| 用途 | 扱い | 請求 |
|---|---|---|
| 便秘治療として処方 | 通常処方 | 調剤料算定可 |
| 内視鏡前の一時的利用 | 検査薬扱い | 薬剤料のみ |
患者が普段から便秘で使っている人なら治療目的として継続処方と判断できるケースもあるため要注意(グレー)。
キシロカインゼリーは院外不可?
キシロカインゼリーは薬価基準に収載されている医療用医薬品です。
適応は表面麻酔。
しかし、「医師の管理下での処置用薬」としての側面が強く、支払基金の判断が厳しい薬剤です。
浣腸や坐薬挿入時のキシロカイン使用は原則認めない
― 支払基金「審査の一般的取り扱い」
検査・処置用 → 院外処方不適切、薬剤料のみ算定
ただし、例外もあります。
・化学療法による重度口内炎
・クローン病による口内症状
これらは治療目的の麻酔として算定可能という実務解釈も存在。
ペンレステープ(水イボ治療前の麻酔テープ)
マルホ社の公式情報には以下の記載があります。
「本剤は院外処方せんによる投薬はできません。」
(メーカー回答による明言)
用途は処置前の麻酔であり、治療薬ではないため、院外処方は認められません。
では、薬局はどう対応すべきか? ― 実務対応フロー
院外処方として検査薬が来た場合の対応
① 医療機関に用途を確認:「検査目的か」「治療目的か」
② 検査目的なら:技術料・管理料を算定しない
③ 調剤録にメモ:「薬剤料のみ算定」
④ 患者に説明:院外処方での必要性を可能な範囲で説明
⑤ 医師に再発防止依頼:今後は院内処方するよう依頼
患者説明例
「このお薬は検査のために使われるもので、本来は病院の費用に含まれるものです。今回は病院で院外処方になっていますが、保険上は薬剤代のみの扱いになります。」
まとめ ― 検査薬・処置薬は院外処方すべきではない
検査薬・処置薬は、薬そのものより医療制度の理解が不可欠な分野です。
薬剤師が保険制度を理解していなければ、誤算定・返戻・指摘につながります。
検査薬を「院外で調剤してはいけないから扱わない」のではなく、制度を理解した上で適切な算定と指導ができる薬剤師であることが求められています。





2 件のコメント
ヒュミラを毎回院内処方で貰っています。エレンタール大量を同日に処方された場合、持って帰れる量ではないので、ヒュミラもエレンタールも院外処方にして欲しいと依頼するのは間違っていますか?
コメントありがとうございます。
いいと思います。ただ、それを受け入れてくれる薬局を先に探すことが不可欠だと思います。
営業時間内に家まで配達してくれる薬局はなかなか無いでしょう。ヒュミラは持ち帰るとして、エレンタールは後日宅急便で送るとかであれば受け入れ可能な薬局は多いかも。