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逆流性食道炎にPPIを1日2回?
公開. 更新. 投稿者:消化性潰瘍/逆流性食道炎.この記事は約3分12秒で読めます.
5,585 ビュー. カテゴリ:PPI抵抗性GERD
タケプロンやパリエットなどのPPIは基本的に1日1回の用法であるが、稀に1日2回の用法で処方されてくることがある。
添付文書上、1日2回の用法が認められているのは、パリエットだけで、以下の用法になっている。
<治療>
逆流性食道炎の治療においては、通常、成人にはラベプラゾールナトリウムとして1回10mgを1日1回経口投与するが、病状により1回20mgを1日1回経口投与することができる。なお、通常、8週間までの投与とする。また、プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な場合、1回10mg又は1回20mgを1日2回、さらに8週間経口投与することができる。ただし、1回20mg1日2回投与は重度の粘膜傷害を有する場合に限る。<維持療法>
再発・再燃を繰り返す逆流性食道炎の維持療法においては、通常、成人にはラベプラゾールナトリウムとして1回10mgを1日1回経口投与する。また、プロトンポンプインヒビターによる治療で効果不十分な逆流性食道炎の維持療法においては、1回10mgを1日2回経口投与することができる。
逆流性食道炎は、胃食道逆流症(GERD)の1つで、胃酸や十二指腸液などの消化液が逆流し、食道粘膜にびらんや炎症を生じる疾患である。
逆流性食道炎には原則8週間の初期治療とその後の維持療法において、プロトンポンプ阻害薬の1日1回投与が広く行われており、高い有効性が示されている。
しかし、それが奏功しない場合がある。
日本消化器学会の「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2015」では、標準量のPPIを8週間内服しても食道粘膜傷害が治癒しない、または胃食道逆流に由来するとみられる症状が十分改善しない状態を、PPI抵抗性GERDと定義している。
こうしたPPI抵抗性逆流性食道炎の場合、次の一手として、PPIを1日2回に分割して投与する方法が、胃酸分泌抑制に有効とされる。
分割投与が奏効する理由については、次のように考えれられている。
PPIは内服して10~12時間後には血中から消失する一方、プロトンポンプは胃食道の壁細胞の分泌細管膜上に1日に20%程度が新たに産生される。
そのため、PPIを1回で内服するよりも、同量を2回に分割し血中濃度を二峰性にする方がプロトンポンプ活性を効果的に阻害できると考えられる。
パリエットの添付文書に、逆流性食道炎患者を対象とした投与8週後の内視鏡検査による治癒率を比較した表がある。
1回20mg1日1回 | 1回10mg1日2回 | 1回20mg1日2回 | |
---|---|---|---|
全体 | 58.8%(60例/102例) | 78.4%(80例/102例) | 77%(77例/100例) |
grade A 及び grade B | 65.1%(56例/86例) | 87.1%(74例/85例) | 79.5%(66例/83例) |
grade C 及び grade D | 25%(4例/16例) | 35.3%(6例/17例) | 64.7%(11例/17例) |
20mg1日1回よりも10mg1日2回のほうが治療成績がよいのがわかる。
NABにPPI1日2回
PPIのパリエット、オメプラール、タケプロンなどの用法は1日1回となっています。
しかし、1日2回処方するケースもあるらしい。
PPIの投与中にもかかわらず夜間の胃内pHが4・0以下になる時間が1時間以上連続して認められる現象をnocturnal gastric acid breakthrough(NAB)といいます。
NABはGERDの難治化の一因とされています。
重症の逆流性食道炎例では軽症に比してH. pylori感染陰性例が多いことが明らかになっていますが、H. pylori感染陰性例ではNABが有意に多く認められることが報告されています。
NABの対策としてPPIの2倍量投与、PPIの2回分割投与、PPIの夕食前投与、PPI+H2受容体拮抗剤眠前追加投与などがあげられています。
PPIの食前投与
プロトンポンプは胃の壁細胞に特異的に発現しています。
そして壁細胞は、酸分泌の休止期と分泌期では大きな構造変化を起こしている
休止期にはプロトンポンプの大部分が管状小胞にあり、PPIが届きにくくなっている。
つまり、食べ物などの刺激によってプロトンポンプが分泌細管の膜上に移動している分泌期でなければ、PPIは効率良くアタックできない。
PPIは全て腸溶製剤であることからあきらかなように、同薬は超粘膜から吸収され、門脈を通過し肝臓へと運ばれる。
そして血流にのって、胃の壁細胞に届く。
ここでPPIが活性化するためには、分泌細管内に高濃度のH+が存在している必要がある。つまり、壁細胞が分泌期の状態であるとベストなのです。
PPIは立ち上がりに空腹時で2時間ほど要することを考えると、経口摂取したPPIが壁細胞まで運ばれ、効率よく活性化されるためには、食前の服用は理にかなっている。
参考書籍:日経DI2018.8
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