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成長痛とオスグッド病の違いとは?小児の膝の痛み
公開. 更新. 投稿者:痛み/鎮痛薬.この記事は約3分57秒で読めます.
75 ビュー. カテゴリ:成長痛とオスグッド病の違いとは?

薬局で患者さんから耳慣れない病名を聞いたときに、思わず「知ったかぶり」をしてしまった経験はありませんか?
私自身、「オスグット」と言われて「はいはい、オスグットですね」と答えつつ、後から慌てて調べたことがあります。
「オスグッド・シュラッター病」というのが正式名称。10〜15歳前後の男子に多い、成長期特有の膝の病気です。
ただし、このオスグッドは「成長痛の一種」と誤解されやすく、実際に最初は「成長痛でしょう」と言われていたケースも多いようです。
では、成長痛とオスグッドは何が違うのか?
成長痛とは?
特徴
「成長痛」は医学的な病名ではなく、成長期の子どもが訴える下肢の痛みを総称して使われる俗称です。
多くは小学校低学年〜思春期前の子どもに見られます。
・部位:膝、すね、ふくらはぎ、太ももなどバラバラ
・出る時間帯:夕方から夜、特に寝る前や夜中に痛みを訴える
・日中の様子:翌朝にはケロッと治っており、普通に走り回れる
原因
はっきりとしたメカニズムは解明されていませんが、次のような要因が考えられています。
・骨の成長と筋肉・腱の柔軟性のアンバランス
・運動による一時的な疲労の蓄積
・心理的要因(ストレスや環境の変化)
検査をしても骨や関節に異常は見つかりません。
成長痛の経過
基本的に一過性で、成長に伴い自然に消失します。運動制限も不要で、日常生活やスポーツを続けても差し支えないことが多いです。
オスグッド・シュラッター病とは?
特徴
オスグッド・シュラッター病は、医学的には「脛骨粗面骨端症」と呼ばれます。
10〜15歳の男子に多く、特にスポーツを盛んに行っている子どもに発症しやすいのが特徴です。
・好発年齢:思春期成長期(小学校高学年〜中学生)
・好発性別:男子に多い(女子も発症はするが頻度は低い)
・好発スポーツ:サッカー、バスケットボール、野球、バレーボール、陸上、テニスなどジャンプやダッシュ、キックを多用する競技
・症状:膝の下(脛骨粗面)が出っ張り、押すと痛い。運動中や直後に痛みが増す
発症のメカニズム
オスグッドは「成長軟骨」が存在する成長期特有の病気です。
太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)は、膝蓋腱を介して脛骨粗面に付着しています。
ジャンプやダッシュの繰り返しで大腿四頭筋が収縮すると、脛骨粗面が強く引っ張られ、炎症や微小な剥離が起こります。
その結果、膝下の骨が出っ張り、痛みや腫れを伴うのです。
診断
・レントゲンで脛骨粗面の骨化異常や剥離像が確認されることもある
・視診・触診で膝下の腫れや圧痛を確認
成長痛とオスグッドの違い
項目 | 成長痛 | オスグッド病 |
---|---|---|
主な部位 | 膝・すね・ふくらはぎなど様々 | 膝の下(脛骨粗面) |
痛みの時間帯 | 夜間や安静時 | 運動時・運動直後 |
見た目 | 腫れや変形なし | 膝下の出っ張り・腫れ |
原因 | 不明確(成長や心理要因) | 骨端部の牽引による炎症 |
検査所見 | 異常なし | レントゲンで異常あり得る |
経過 | 自然に消失する | 安静や治療が必要、長引くことも |
誤解されやすい点
・成長痛は休まなくても治るが、オスグッドは休まないと治りにくい
・「夜だけ痛い」「朝になれば治る」は成長痛の特徴
・「膝の下が出っ張って痛む」「運動すると悪化する」はオスグッドを疑うサイン
治療・対応
成長痛
・特別な治療は不要
・温めたり、軽くマッサージすると安心することが多い
・睡眠中に痛みで泣いてしまう子もいるが、成長とともに改善
オスグッド病
・第一選択は安静:運動を休むことで症状は軽快する
・スポーツを続けながら治すのは難しく、部活動を中止する子も少なくない
・ストレッチ(大腿四頭筋の柔軟性改善)やアイシングも有効
・サポーターやテーピングを利用することもある
・症状が強い場合は整形外科で診断・指導を受けるべき
家庭での見分け方と受診の目安
・夜だけ痛いが翌日には元気に走れる → 成長痛の可能性大
・運動のたびに膝下が痛む・出っ張りがある → オスグッドの可能性大
・痛みが長引く、日常生活に支障がある場合は整形外科を受診すべき
まとめ
・成長痛とオスグッドは混同されやすいが、原因も経過も異なる
・成長痛は一過性で自然に治るが、オスグッドは安静やストレッチなど治療介入が必要
・「運動時に膝下が痛む+出っ張りあり」はオスグッドを強く疑うサイン
・子どもの膝の痛みが長引く場合は、安易に「成長痛」と思い込まず、整形外科を受診することが大切