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アスピリンで流産予防?
公開. 更新. 投稿者:妊娠/授乳.この記事は約4分46秒で読めます.
3,145 ビュー. カテゴリ:不育症にアスピリン?
流産とは妊娠22週未満に胎芽や胎児が死亡することを指す。
妊娠が成立しても流産や死産(妊娠22週以降の胎児死亡)を繰り返し、妊娠の継続が難しい状態は不育症と呼ばれている。
不育症の原因は多岐にわたり、その治療法も原因に応じて多様である。
日本産科婦人科学会の調査によれば、不育症の原因として、凝固因子異常と自己免疫疾患である抗リン脂質抗体症候群が合わせて約半数を占める。
いずれも血液が凝固しやすく、妊娠中に胎盤の周囲に微小な血栓が生じて、子宮と胎盤の間に循環不全を引き起こすために、妊娠を継続できなくなると考えられている。
流産の経験があり、検査で抗リン脂質抗体や凝固因子異常が認められた女性が妊娠を望む場合、その治療として低用量のアスピリンやへパリンを用いる抗凝固法を導入することが多い。
通常、不育症に対する低用量アスピリン療法では、アスピリン60~100mg日を服用する。
服用は妊娠を意図した周期の排卵後高温期から開始し、妊娠しなかった場合はいったん中止して次の周期から再び服用を始める。
妊娠した場合は服用を継続する が、服用を終了する時期については意見が分かれている。
アスピリンの添付文書では、「出産予定日の12週間以内の妊婦」への投与は禁忌となっているため、妊娠28週目以降は中止になることが多い。
抗リン脂質抗体陽性の不育症患者の場合、無治療ではほとんどが流産あるいは死産に至るとされるが、低用量アスピリン療法では、生児獲得率が44%に上昇すると報告されている。
胎児の器官を形成する妊娠初期も服用が必要であるため、薬剤による影響を心配する母親も多いが、低用量アスピリン療法による先天異常の増加は認められていない。
なお、抗リン脂質抗体を持つ不育症患者に対しては、低用量アスピリン療法とヘパリン療法を併用する治療法もよく行われている。
併用療法での生児獲得率は80%までに上昇するという報告もある。
ヘパリン療法とはヘパリンカルシウム(カプロシン)を1日2回皮下注射する方法だが、そのためだけに通院を続けるのは困難なことが多い。
不育症への低用最アスピリン療法では、妊娠を継続させるために、長期間にわたりアスピリンを服用しなければならない。
胃腸障害などの副作用モニタリングに加え、一般用医薬品(OTC薬)を含む他の薬剤と併用にも気を付ける必要がある。
アスピリンはいつまで続ける?
アスピリンの服用をいつまで続けるか、についてはケースバイケース。
抗リン脂質抗体症候群では妊娠初期の流産をはじめ、中期以降の胎内死亡、子宮内発育遅延、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)などの産科合併症が起こります。したがって、合併症発生のリスクは分娩が終了するまで続くと考えられ、この点から28週で服用を中止することは理にかなっていません。薬剤添付文書には28週以降に服用すると妊娠期間の延長,動脈管の早期閉鎖,子宮収縮の抑制,分娩時出血の増加につながるおそれがある、と書かれています。この中で最も問題となるのは、赤ちゃんの動脈管早期閉鎖です。子宮内の胎児には出生後とは異なる循環系があり、生まれるとその役割を終えるものがあります。その一つが動脈管で、これが子宮内で生まれる前に閉鎖すると問題ですが、アスピリンは早期閉鎖を起こすことが知られています。実際には低用量のアスピリン(バファリン81やバイアスピリン)服用で胎児循環系に異常が生じたという報告は現時点ではありません。しかし、理論的には起こりうるので分娩が近い時期には服用しない方がよいとされているのです。また、妊娠期間の延長,子宮収縮の抑制,分娩時出血の増加など他の副作用が考えられるとの記載ですが、これらの副作用に比べても、抗リン脂質抗体症候群で起こる胎内死亡という合併症は重篤です。このような考えから、当院では妊娠35週6日までのアスピリンの服用を推奨し、付属病院の倫理委員会でも承認されています。A. 低用量アスピリン療法 日本医科大学付属病院
日本医科大学付属病院では36週前に中止する服用法を推奨しているようだ。
ただし、過去の流産歴や抗リン脂質抗体の抗体価などを考慮し、28週で服用を中止する場合もあるとのこと。
とにかく薬局としては、予定日12週前にヘパリンが処方されていたら疑義照会をかける必要がある。
妊娠しても育たない?
妊娠した女性の4割が流産の経験があり、流産を繰り返す不育症も16人に1人の割合でいることが、厚生労働省研究班による初の実態調査でわかりました。
不育症の原因は様々で、夫婦の両者か一方に染色体異常がある場合のほか、子宮の形の異常、免疫異常で胎盤などに血栓ができやすい抗リン脂質抗体症候群などが考えられます。
専門外来を受診した不育症の夫婦を分析すると、9割で夫婦に染色体異常がないほか、女性の子宮の形にも異常がなく、ほかの原因が考えられました。
夫婦に明らかな異常がない場合の多くが、胎児の染色体異常が疑われるといいます。
子宮の形に異常がある人は手術によって出産できるようになることがあります。抗リン脂質抗体症候群の場合は血を固まりにくくするアスピリンなどが効果的です。
不育症の夫婦全体の8割以上が後に無事、出産に結びついています。
参考書籍:日経DIクイズベストセレクションBASIC篇
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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1 件のコメント
通院しているHPの返答で良いか確認したかったので、助かりました。ザックリ同じでしたので安心感できました。
教えて頂きまして、ありがとうございました!