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骨粗鬆症患者は胃食道逆流症になりやすい?
公開. 更新. 投稿者: 1,997 ビュー. カテゴリ:消化性潰瘍/逆流性食道炎.この記事は約4分60秒で読めます.
目次
骨粗鬆症で逆流性食道炎?

骨粗鬆症の患者に、タケキャブ、ネキシウム、タケプロンなどの胃酸分泌抑制薬が処方されていることは珍しくない。
高齢者だから胃薬を飲んでいるのだろう、と特に気に留めないこともある。
しかし、
骨粗鬆症 → 椎体骨折 → 円背・脊柱後弯 → 胃食道逆流症(GERD)
という関係があることは知っておきたい。
骨粗鬆症の患者にPPIやP-CABが処方されていたら、「この患者さん、背中が曲がっていないかな?」「逆流症状があるのかな?」とイメージできると、服薬指導にもつながる。
骨粗鬆症と胃食道逆流症の意外な関係
一見すると、「骨」と「胃」はあまり関係がなさそうに思える。
しかし、骨粗鬆症では椎体骨折を起こすことがある。
椎体が圧潰すると背骨の形が変化し、複数の椎体骨折を繰り返すことで脊柱後弯、いわゆる「円背」が進行することがある。
そして、この背骨の変形がGERDと関係する。
骨粗鬆症患者112例を対象とした研究では、GERD症状と腰椎後弯、椎体骨折数との関連が調べられている。
その結果、GERD症状は腰椎後弯の程度や腰椎椎体骨折数などと関連し、多変量解析では腰椎後弯の程度と腰椎椎体骨折数がGERDの存在に影響する因子として挙げられている。
つまり、
「骨粗鬆症だからGERDになる」という単純な話ではなく、骨粗鬆症によって生じた椎体骨折や脊柱変形がGERDにつながる
と考えると理解しやすい。
なぜ背中が曲がると胃酸が逆流するのか?
正常な姿勢では、胸部から腹部にかけて十分なスペースが保たれている。
ところが椎体骨折などによって腰椎の後弯が強くなると、体幹が前屈したような姿勢になる。
すると腹部が圧迫され、腹腔内圧が高くなりやすくなる。
その結果、
椎体骨折
↓
脊柱後弯・円背
↓
腹部が圧迫される
↓
腹腔内圧が上昇
↓
胃内容物が食道側へ逆流しやすくなる
↓
GERD
という流れが考えられる。
また、脊柱後弯は食道裂孔ヘルニアとの関連も指摘されている。
食道裂孔ヘルニアがあれば、胃と食道の境界部分にある逆流防止機構がうまく働かなくなり、さらに胃酸が逆流しやすくなる。
したがって、円背の強い高齢者が「胸やけがする」「酸っぱいものが上がってくる」と訴えていても不思議ではない。
「骨粗鬆症+PPI」を見たら何を考える?
薬局で、
- 骨粗鬆症治療薬
- PPIやP-CAB
が一緒に処方されていたとする。
このとき、
「骨粗鬆症とは別にGERDがあるんだな」
だけで終わらせず、
「骨粗鬆症による椎体骨折や円背がGERDに関係している可能性もある」
と考えてみる。
患者さんを見て明らかな円背があったり、「背骨を圧迫骨折したことがある」という話があったりすれば、さらにGERDとの関連をイメージしやすい。
「胸やけは最近どうですか?」
「酸っぱいものが上がってくる感じはありませんか?」
「食後や横になったときに苦しくありませんか?」
といった聞き取りにもつながる。
単に「胃薬ですね」で終わらない服薬指導ができる。
ビスホスホネートによる食道障害にも注意
もう一つ忘れてはいけないのが、骨粗鬆症治療薬そのものによる上部消化管への影響である。
特にアレンドロン酸やリセドロン酸などの経口ビスホスホネート製剤では、食道炎や食道潰瘍などを起こす可能性がある。
そのため、服用時には十分量の水で服用し、服用後一定時間は横にならないなどの注意が必要となる。
ここが少しややこしい。
骨粗鬆症患者の胸やけやPPI処方を見た場合には、
①もともとのGERD
②椎体骨折・脊柱後弯に関連したGERD
③経口ビスホスホネートによる食道への刺激
など、いくつかの可能性を考える必要がある。
「骨粗鬆症治療薬と胃薬が出ている」という処方だけでも、患者背景をかなり想像できるわけだ。
PPIを長期間飲んでいる患者では骨にも目を向ける
さらに興味深いのは、逆方向の関係である。
骨粗鬆症患者にGERDが多いだけでなく、GERD患者ではPPIが長期間使用されることがあるため、「胃薬を長期間飲んでいる患者の骨」という視点も必要になる。
PPIの長期使用と骨折リスクとの関連は以前から議論されており、観察研究では骨折リスク上昇との関連が報告されている。
ただし、PPIを飲めば骨粗鬆症になる、と単純に考えるべきではない。
PPIを長期間必要とする患者には、高齢、併存疾患、多剤併用など、もともと骨折リスクを高める背景因子が存在することも多いためである。
したがって、
「PPIが処方されているから骨粗鬆症」
ではなく、長期服用している高齢患者では、骨粗鬆症や骨折歴などにも目を向ける、くらいの捉え方がよいだろう。
「骨粗鬆症+胃薬」から患者像を想像する
処方箋に書かれている薬は、それぞれ独立して存在しているわけではない。
たとえば、
骨粗鬆症治療薬+PPI/P-CAB
という組み合わせを見たら、
「椎体骨折はないかな?」
「円背が強くないかな?」
「GERDがあるのかな?」
「経口ビスホスホネートによる食道症状ではないかな?」
と考えることができる。
特に、
骨粗鬆症
→ 椎体骨折
→ 円背・腰椎後弯
→ 腹腔内圧上昇・食道裂孔ヘルニア
→ 胃食道逆流
という流れを頭に入れておくとよい。
骨粗鬆症患者に胃薬が処方されているのを見たとき、「骨と胃は別の病気」と切り離すのではなく、背骨の変形を介して両者がつながっている可能性があるとイメージできれば、患者を見る視点が一つ増える。



