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骨を作る薬と壊さない薬―骨粗鬆症治療薬の「骨形成」と「骨吸収」
公開. 更新. 投稿者: 262 ビュー. カテゴリ:骨粗鬆症.この記事は約7分16秒で読めます.
目次
- 1 骨粗鬆症治療薬は骨を作る?骨が壊れるのを防ぐ?
- 2 そもそも骨は常に「壊して作り直している」
- 3 骨粗鬆症治療薬は大きく「壊さない薬」と「作る薬」
- 4 ビスホスホネートは「骨を壊させない」
- 5 SERMも「骨を壊させない」
- 6 デノスマブも強力に「骨を壊させない」
- 7 ロモソズマブは「作る+壊させない」
- 8 そして不思議なのがPTH製剤
- 9 PTHは「骨形成だけを促進するホルモン」ではない
- 10 持続的PTHでは「骨吸収>骨形成」
- 11 間欠的PTHでは「骨形成>骨吸収」
- 12 「アナボリックウィンドウ」という考え方
- 13 アバロパラチドも同じ考え方
- 14 骨粗鬆症治療薬は「骨形成と骨吸収」で考えると分かりやすい
- 15 「骨形成薬」と「骨吸収抑制薬」は完全な二択ではない
骨粗鬆症治療薬は骨を作る?骨が壊れるのを防ぐ?

骨粗鬆症治療薬には、ビスホスホネート製剤、SERM、デノスマブ、テリパラチド、ロモソズマブ、活性型ビタミンD₃製剤など、さまざまな薬があります。
薬の名前だけを覚えていると複雑に感じますが、骨に対する作用から考えると、基本的な治療戦略はそれほど複雑ではありません。
「骨が壊れるのを防ぐ」
あるいは、
「骨を作る」
という2方向です。
しかし、ここで少し不思議なのが副甲状腺ホルモン(PTH)製剤です。
PTHには骨形成を促進する作用がありますが、実は骨吸収を促進する作用もあります。
「骨吸収を促進するなら、骨粗鬆症を悪化させるのでは?」
今回は骨粗鬆症治療薬を「骨形成」と「骨吸収」という視点から整理し、この一見矛盾したPTH製剤の作用について考えてみます。
そもそも骨は常に「壊して作り直している」
骨というと、一度できたらそのまま存在している硬い構造物のように思えます。
しかし実際には、
古い骨を壊す → 新しい骨を作る
という作業が繰り返されています。
これが「骨リモデリング」です。
古い骨を壊す「骨吸収」を担当しているのが破骨細胞。
新しい骨を作る「骨形成」を担当しているのが骨芽細胞です。
つまり、
破骨細胞 → 骨吸収
骨芽細胞 → 骨形成
と覚えておけばよいでしょう。
健康な骨では骨吸収と骨形成のバランスが保たれています。
ところが、加齢や閉経などによって、
骨吸収 > 骨形成
となると、少しずつ骨量が減っていきます。
これが骨粗鬆症につながります。
骨粗鬆症治療薬は大きく「壊さない薬」と「作る薬」
この仕組みから考えると、骨粗鬆症の治療方法は分かりやすくなります。
骨吸収が骨形成を上回っているのであれば、
- 骨吸収を抑える
- 骨形成を増やす
のどちらかを行えばよいわけです。
代表的な骨粗鬆症治療薬を整理すると次のようになります。
| 分類 | 代表薬 | 骨吸収 | 骨形成 | 主な位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| ビスホスホネート製剤 | アレンドロン酸、リセドロン酸など | ↓↓↓ | ―※ | 骨吸収抑制 |
| SERM | ラロキシフェン、バゼドキシフェン | ↓ | ―※ | 骨吸収抑制 |
| 抗RANKL抗体 | デノスマブ | ↓↓↓ | ―※ | 骨吸収抑制 |
| PTH1受容体作動薬 | テリパラチド、アバロパラチド | ↑ | ↑↑ | 骨形成促進 |
| 抗スクレロスチン抗体 | ロモソズマブ | ↓ | ↑↑ | 骨吸収抑制+骨形成促進 |
| 活性型ビタミンD₃製剤 | エルデカルシトール等 | 間接的 | 間接的 | Ca・骨代謝調節 |
※骨吸収と骨形成は連動しているため、骨吸収抑制薬では骨形成マーカーも低下します。「―」は骨形成にまったく影響しないという意味ではなく、治療薬としての主作用が骨形成促進ではないという意味です。
日本骨代謝学会も、現在使用されている骨粗鬆症治療薬は骨吸収を抑える薬が中心であり、一方で骨代謝を刺激して骨形成を高める薬も使用される、と説明しています。
ビスホスホネートは「骨を壊させない」
ビスホスホネート製剤は代表的な骨吸収抑制薬です。
骨に取り込まれ、破骨細胞の機能を抑えることで骨吸収を抑制します。
イメージとしては、
破骨細胞 ↓
↓
骨吸収 ↓
↓
骨量減少を防ぐ
となります。
「新しい骨をどんどん作らせる」というより、骨が失われていくスピードを抑える薬と考えると分かりやすいでしょう。
SERMも「骨を壊させない」
閉経後に骨粗鬆症が増える大きな理由の一つが、エストロゲンの低下です。
エストロゲンには骨吸収を抑える働きがあります。
SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)は、骨ではエストロゲン様作用を示すことで骨吸収を抑制します。
そのため、
SERM=骨吸収抑制薬
と分類できます。
代表薬にはラロキシフェン、バゼドキシフェンがあります。
デノスマブも強力に「骨を壊させない」
破骨細胞が成熟するために重要なのがRANKLです。
デノスマブはRANKLに結合するモノクローナル抗体です。
RANKL
↓ デノスマブが阻害
破骨細胞の形成・活性化↓
↓
骨吸収↓
という作用になります。
したがってデノスマブも、基本的には骨吸収抑制薬です。
破骨細胞による骨吸収が強く抑えられるため、低カルシウム血症にも注意が必要になります。
ロモソズマブは「作る+壊させない」
ここまでの薬は比較的分かりやすいのですが、少し特殊なのがロモソズマブです。
ロモソズマブはスクレロスチンを阻害します。
その結果、
骨形成↑ + 骨吸収↓
という二つの作用が生じます。
つまり、
「骨を作る」と同時に「骨を壊させない」
という薬です。
従来の骨吸収抑制薬とは異なる特徴を持っています。
そして不思議なのがPTH製剤
テリパラチドなどのPTH1受容体作動薬は一般的に、
「骨形成促進薬」
として分類されています。
ところが、PTHそのものの生理作用を勉強すると混乱することがあります。
PTHは骨形成だけではなく、
骨吸収も促進する
からです。
「骨を壊す作用があるのに、なぜ骨粗鬆症に使うのか?」
ここがPTH製剤を理解するうえで非常に重要なポイントです。
PTHは「骨形成だけを促進するホルモン」ではない
PTHが作用すると、骨代謝そのものが活性化します。
つまり、
骨形成↑
だけではなく、
骨吸収↑
も起こります。
実際、PTHが持続的に高くなる副甲状腺機能亢進症では、骨のリモデリングが亢進し、骨量が減少することがあります。
それなら、PTHを骨粗鬆症患者に投与するのは逆効果のようにも思えます。
ところがPTHには非常に興味深い性質があります。
「持続的に作用させるか、間欠的に作用させるか」で骨への影響が変わるのです。
持続的PTHでは「骨吸収>骨形成」
PTHが長時間持続して高い状態では、
骨形成↑
骨吸収↑↑
となり、結果として、
骨吸収 > 骨形成
になります。
そのため骨量は減少する方向へ向かいます。
副甲状腺機能亢進症でみられる骨への影響はこちらのイメージです。
間欠的PTHでは「骨形成>骨吸収」
ところが、PTHをずっと作用させるのではなく、間欠的に作用させると状況が変わります。
テリパラチドを1日1回間欠的に投与すると、骨芽細胞の前駆細胞から骨芽細胞への分化促進や、骨芽細胞のアポトーシス抑制などが起こり、骨芽細胞機能が活性化します。
骨吸収も刺激されますが、
骨形成↑↑
骨吸収↑
となり、
骨形成 > 骨吸収
になるわけです。
つまり、テリパラチドは、
「骨吸収を起こさない薬」ではなく、「骨吸収も促進するが、それ以上に骨形成を促進する薬」
と考えると理解しやすくなります。
「アナボリックウィンドウ」という考え方
テリパラチドの連日投与では、治療開始後にまず骨形成マーカーが上昇し、遅れて骨吸収マーカーが上昇します。
つまり治療開始後には、
骨形成の増加 > 骨吸収の増加
となる期間があります。
骨形成促進作用と骨吸収促進作用の差が骨量増加につながるという考え方で、この差は「アナボリックウィンドウ」と呼ばれます。
PTH製剤を理解するときには、
PTH=骨形成促進
と丸暗記するよりも、
PTH=骨代謝を動かす
↓
間欠投与する
↓
骨形成作用が骨吸収作用を上回る
↓
骨量が増える
と理解したほうが、なぜPTHが骨粗鬆症治療薬になるのかが分かりやすくなります。
アバロパラチドも同じ考え方
アバロパラチドもPTH1受容体を介して作用する骨形成促進薬です。
こちらも骨形成だけに作用しているわけではなく、骨形成と骨吸収の両方に影響します。
しかし間欠的に投与することで骨形成が優位になります。
PMDAの審査資料でも、アバロパラチドは間欠皮下投与によって骨形成が優位に促進されることが示されています。
つまりPTH1受容体作動薬では、
「骨形成作用があるか?」だけではなく、「骨形成と骨吸収のどちらが優位になるか?」
という視点が重要になります。
骨粗鬆症治療薬は「骨形成と骨吸収」で考えると分かりやすい
骨粗鬆症治療薬にはさまざまな種類がありますが、まずは次のように整理すると理解しやすいでしょう。
ビスホスホネート
→ 骨吸収を抑える
SERM
→ 骨吸収を抑える
デノスマブ
→ 骨吸収を強く抑える
テリパラチド・アバロパラチド
→ 骨形成を強く促進する
→ 骨吸収も刺激するが、間欠投与では骨形成が優位
ロモソズマブ
→ 骨形成を促進しながら骨吸収も抑える
こうして見ると、それぞれの薬の違いがかなり見えやすくなります。
「骨形成薬」と「骨吸収抑制薬」は完全な二択ではない
骨粗鬆症治療薬を勉強すると、
骨形成促進薬
と
骨吸収抑制薬
という二つのグループに分類したくなります。
臨床的には非常に便利な分類です。
ただし、実際の骨では骨形成と骨吸収は独立して行われているわけではありません。
古い骨を吸収したあとに新しい骨を形成するという一連の「骨リモデリング」として連動しています。
そのため骨吸収を抑えれば骨形成側にも影響しますし、PTHのように骨代謝を活性化すれば骨形成と骨吸収の両方が動きます。
大切なのは、
「骨形成に作用するか、骨吸収に作用するか」だけでなく、「最終的に骨形成と骨吸収のバランスをどちらに傾ける薬なのか」
を見ることなのだと思います。
特にPTH製剤はそのことがよく分かる薬です。
持続的なPTH刺激
→ 骨吸収 > 骨形成
→ 骨量減少
一方、
間欠的なPTH刺激
→ 骨形成 > 骨吸収
→ 骨量増加
同じPTH受容体への刺激でも、刺激の仕方によって結果が変わります。
「PTHは骨を作るホルモン」とだけ覚えてしまうと、副甲状腺機能亢進症で骨量が減少することを説明できません。
逆に、
「PTHは骨形成と骨吸収の両方を促進する。しかし、間欠的に投与すると骨形成作用を骨吸収作用より優位にできる」
と理解すると、PTH製剤がなぜ骨粗鬆症治療薬として使われるのかがすっきり理解できます。



