2026年9月11日更新.2,793記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ビタミンの良し悪し―本当に体に良いのか?

目次

ビタミンは体に良いのか?

「ビタミン」と聞くと、それだけで体に良さそうなイメージがある。

ビタミンCなら風邪に効きそう。
ビタミンBなら疲れが取れそう。
ビタミンEなら老化を防いでくれそう。
マルチビタミンなら、とりあえず飲んでおけば健康になれそう。

「ビタミンだから体に悪いはずがない」と思っている人もいるだろう。

しかし、医学的には、
「ビタミンは体に必要である」ことと、「ビタミンを多く摂れば健康になる」ことは全く別の話である。

実際、ビタミンの中には特定の病気を予防することがかなり明確に証明されているものがある一方、健康効果を期待して大規模な臨床試験を行ったところ「効果なし」とされたものや、逆に病気のリスクを高めたものまである。

では、ビタミンは本当のところ何に効くのだろうか。

「体によさそう」というイメージではなく、臨床試験やシステマティックレビューなどのエビデンスから考えてみる。

そもそもビタミンとは?

ビタミンとは、体の正常な機能を維持するために必要な有機化合物のうち、基本的に体内で十分量を合成できないため、食事などから摂取する必要がある微量栄養素である。

つまり、
ビタミン=健康増進成分
というより、
ビタミン=不足すると正常な体の機能を維持できなくなる栄養素
と考えた方が実態に近い。

たとえば、
ビタミンAが不足すれば夜盲症などを生じる。
ビタミンB1が不足すれば脚気やWernicke脳症を起こす。
ビタミンCが極端に不足すれば壊血病になる。
ビタミンDが不足すれば、くる病や骨軟化症につながる。

このような欠乏状態に必要なビタミンを補充することには明確な意味がある。

問題は、その先である。

「不足を補う」と「健康な人が追加で飲む」は別

ビタミンについて考えるときには、大きく4つに分けるとわかりやすい。

  1. ビタミン欠乏症の患者に補充する
  2. 特定の人に、特定の疾患の予防・治療目的で使用する
  3. 十分足りている健康な人が、さらに健康になることを期待して摂取する
  4. 通常必要とされる量を大幅に超えて摂取する

1については、多くのビタミンで効果が明確である。
2にも、妊娠前~妊娠初期の葉酸など、強いエビデンスがあるものがある。
しかし3になると、期待したほどの健康効果が確認されていないものが非常に多い。
さらに4では、逆に健康被害を引き起こす可能性がある。

つまり、
「必要なものだから、多ければ多いほどよい」わけではない。
ここがビタミンを理解するうえで最も重要なポイントである。

ビタミンA~Kは、本当は何に効くのか?

では、それぞれのビタミンについて、
何に効くことが比較的はっきりしているのか
何には期待ほどのエビデンスがないのか
を見てみよう。

なお、「ビタミンB」は1種類ではない。
現在ビタミンとして扱われる主なB群には、B1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、B12がある。

ビタミンA―目に必要だからといって、飲めば視力がよくなるわけではない

ビタミンAは視覚、免疫、細胞の分化、生殖などに重要な働きを持つ。網膜で光を感知するロドプシンにも関係するため、「目のビタミン」といわれることもある。

ビタミンA欠乏で夜盲症などが起こるため、欠乏状態への補充には明確な意味がある。

しかし、
「目に必要」=「健康な人が多く飲めば視力がよくなる」
ではない。

また、「抗酸化作用のあるβカロテンを摂れば癌を予防できるのではないか」という期待もあったが、喫煙者などを対象とした臨床試験では、βカロテンサプリメントによって肺癌リスクがむしろ増加した。USPSTFは、心血管疾患・癌予防目的のβカロテンサプリメントを推奨していない。

ビタミンAは脂溶性なので、過剰摂取による毒性にも注意する必要がある。特に妊娠中の過剰摂取は問題となる。

比較的明確: ビタミンA欠乏症の予防・治療
期待ほど証明されていない: 健康な人の視力改善、癌予防
注意: 過剰摂取、妊娠中の高用量、喫煙者などへのβカロテン

ビタミンB1―脚気には効くが、「疲れているからB1」は別問題

ビタミンB1(チアミン)は、糖質などからエネルギーを作り出す過程に不可欠である。

欠乏すると脚気やWernicke脳症を起こすため、B1欠乏に対する補充は重要である。

一方、
「エネルギー代謝に必要」

「B1を多く摂ればエネルギーが増える」

「疲労回復に効く」
と考えるのは飛躍がある。

B1欠乏に伴う倦怠感なら改善が期待できるが、B1が十分足りている人の一般的な疲労をB1が改善する、という話とは分ける必要がある。

比較的明確: 脚気、Wernicke脳症などB1欠乏状態
不明確: 欠乏のない人の一般的な疲労回復、健康増進

ビタミンB2―片頭痛予防には意外と根拠がある

ビタミンB2(リボフラビン)はエネルギー代謝などに関与し、欠乏すると口角炎、口唇炎、舌炎などがみられる。

B2で興味深いのが片頭痛である。

少数ながらRCTがあり、成人を対象とした試験ではリボフラビン400mg/日により片頭痛発作頻度が低下したとの報告がある。すべての研究結果が一致しているわけではないが、一部の頭痛関連学会も予防療法の選択肢としている。

「ビタミンだから何となく頭痛によい」という話ではなく、欠乏症とは別の疾患について実際に臨床試験が行われ、一定の効果が示されている例である。

比較的明確: B2欠乏症
一定のエビデンス: 片頭痛予防
証明されていない: 誰でも飲めば疲れにくくなる、健康になる

ビタミンB3(ナイアシン)―検査値がよくなっても、長生きするとは限らない

ビタミンB3、すなわちナイアシンが欠乏するとペラグラを起こす。

さらに高用量のニコチン酸には、
LDLコレステロールを下げる
中性脂肪を下げる
HDLコレステロールを上げる
という薬理作用がある。

これだけを見ると、
「動脈硬化が減り、心筋梗塞も減るだろう」
と思いたくなる。

しかし、スタチン治療を受けている患者へのナイアシン追加療法では、脂質値を改善しても心血管イベントの明確な減少につながらなかった。

これは医学を考えるうえで非常に重要である。

「検査値が改善する」ことと、「患者が長生きする」ことは同じではない。

比較的明確: ナイアシン欠乏症
作用がある: 薬理量のニコチン酸による脂質値改善
期待ほどの効果なし: スタチン治療への追加による心血管イベント予防

ビタミンB5―体には必要だが、追加で飲む健康効果はよくわからない

パントテン酸(B5)は補酵素Aの構成成分で、脂質をはじめさまざまな代謝に関与する必須栄養素である。

しかし、通常の食生活では欠乏症はまれである。
「疲労回復」
「ストレス対策」
「美容」
などを期待して摂取されることもあるが、欠乏のない人が追加摂取することによって明確な臨床的利益が得られるという強いエビデンスは乏しい。

比較的明確: 欠乏状態への補充
エビデンスが乏しい: 疲労回復、ストレス軽減、美容目的の追加摂取

ビタミンB6―水溶性だから大量に飲んでも安全、ではない

ビタミンB6はアミノ酸代謝や神経伝達物質合成などに関与する。

欠乏状態への補充に加え、妊娠中の悪心・嘔吐については一定の臨床的根拠があり、ACOGも治療選択肢としてB6を位置付けている。

しかし、認知機能改善などについては期待ほど明確な利益は確認されていない。

そしてB6で重要なのが過剰摂取である。
B6は水溶性ビタミンだが、高用量を長期間摂取すると感覚性末梢神経障害を起こすことがある。
「水溶性ビタミンは余れば尿から出るから、いくら飲んでも安全」という説明は正しくない。

比較的明確: B6欠乏症
一定の根拠: 妊娠中の悪心・嘔吐
期待ほど証明されていない: 認知機能改善など
注意: 長期大量摂取による末梢神経障害

ビタミンB7(ビオチン)―「髪や爪のビタミン」は本当か?

ビオチンは脂肪酸、糖、アミノ酸などの代謝に必要なビタミンである。

欠乏すると脱毛や皮膚症状などが生じることがある。

そのため、
「ビオチンを飲めば髪が増える」
「爪が丈夫になる」
というイメージが生まれやすい。

しかし、ビオチンが不足していない一般の人で、サプリメントによる発毛や爪への効果を裏付ける強いエビデンスは乏しい。

むしろ医療現場では、高用量ビオチンによる臨床検査への干渉の方が重要な問題になる。

一部の免疫測定法に影響し、検査値を誤らせる可能性がある。

比較的明確: ビオチン欠乏症
エビデンスが乏しい: 欠乏のない人の発毛、美爪、美肌
注意: 臨床検査への干渉

ビタミンB9(葉酸)―「予防目的で飲む意味」がかなり明確なビタミン

葉酸は、ビタミンサプリメントによる疾患予防効果が比較的はっきりしている代表例である。

妊娠する可能性のある人が妊娠前から妊娠初期に葉酸を摂取すると、胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低下させる。

USPSTFは、妊娠を計画している、または妊娠する可能性がある人に対し、1日400~800μgの葉酸サプリメントを推奨しており、推奨グレードはAである。少なくとも妊娠1か月前から妊娠初期までの摂取が推奨されている。

これは、
「ビタミンだから健康によさそう」ではなく、「特定の対象者に、特定の時期に使うことで疾患リスクを下げることがかなり明確」
という例である。

一方、葉酸を飲めば誰でも心筋梗塞や癌、認知症を予防できるというほど単純ではない。

かなり明確: 葉酸欠乏、妊娠前~初期の神経管閉鎖障害予防
一般化できない: 癌、認知症、心血管疾患の万能予防

ビタミンB12―欠乏には重要だが「元気になるビタミン」ではない

ビタミンB12欠乏では、巨赤芽球性貧血や神経障害などが起こる。
したがって、B12欠乏患者への補充は重要である。

一方、B12は「エネルギーを増やす」「疲労回復によい」と宣伝されることもある。
しかし、B12が十分足りている人では、B12サプリメントによって運動能力や持久力が向上することは確認されていない。

また、高齢者の認知症や認知機能低下に対しても、B12を含むB群サプリメントによる明確な改善は確認されていない。

比較的明確: B12欠乏による貧血・神経障害
証明されていない: 欠乏のない人の疲労回復、運動能力向上、認知症予防

ビタミンC―風邪には「少し効く」が一番近い

ビタミンCといえば風邪、というイメージは非常に強い。

しかしエビデンスを見ると、
「風邪に効く」
「風邪には効かない」
のどちらか一方で説明するのも正確ではない。

Cochraneレビューでは、一般集団が普段からビタミンCを摂取しても、風邪をひく確率はほとんど低下しなかった。

一方、日常的に摂取している人では、風邪の罹病期間が成人で平均約8%、小児で約14%短縮した。

また、マラソン選手、スキーヤー、寒冷環境で訓練する兵士など、短期間に強い身体的ストレスを受ける集団では、風邪の発症リスクがおよそ半分になった。

しかし、風邪をひいてからビタミンCを飲み始める方法では、一貫した治療効果は示されていない。

つまり、
一般人の風邪予防にはほぼ効かない。
普段から摂っていると、風邪が少し短くなる可能性がある。
特殊な高ストレス環境では予防効果があるかもしれない。
風邪をひいてから飲んでも明確な効果はない。

というのがエビデンスに近い。

明確: ビタミンC欠乏・壊血病
小さいが効果あり: 常用による風邪罹病期間の短縮
特定集団で効果: 強い身体的ストレス下での風邪予防
期待ほどの効果なし: 一般人の風邪予防、発症後の治療

ビタミンD―「低い人ほど病気が多い」と「飲めば病気を防げる」は違う

ビタミンDはカルシウム・リン代謝に関与し、骨の正常な石灰化に不可欠である。

欠乏すれば、小児ではくる病、成人では骨軟化症などを起こす。

一方、近年のビタミンDは、

心血管疾患
感染症
糖尿病
うつ病
認知症
など非常に多くの疾患との関連が研究され、「万能ビタミン」のように扱われることもある。

確かに観察研究では、血中ビタミンD濃度が低い人ほどさまざまな病気が多いという結果が得られる。

しかし、
「ビタミンDが低い人に病気が多い」ことと、「健康な人にビタミンDを飲ませれば病気が減る」ことは同じではない。

臨床試験では、ビタミンD補充によって心血管疾患が減少することは確認されておらず、癌発症についても明確な低下は示されていない。

これは「観察研究」と「介入試験」の違いを考えるうえでも重要な例である。

明確: ビタミンD欠乏、くる病、骨軟化症
重要: 骨・カルシウム代謝の維持
期待ほど証明されていない: 健康な人への追加摂取による癌・心血管疾患などの万能予防
注意: 過剰摂取による高カルシウム血症など

ビタミンE―抗酸化作用があるからといって、病気を防げるとは限らない

ビタミンEには抗酸化作用がある。

そのため、
酸化ストレスが老化や動脈硬化、癌に関係する

抗酸化作用を持つビタミンEを飲む

癌や心筋梗塞が減る
という仮説は非常に魅力的だった。

ところが、大規模な臨床試験では期待された結果は得られなかった。

USPSTFの評価では、ビタミンEサプリメントによって総死亡、心血管イベント、癌の明確な低下は確認されていない。

そのため、心血管疾患・癌予防目的のビタミンEサプリメントを推奨していない。

これは、
「体の中で重要な働きを持つ」ことと、「それをサプリメントとして追加摂取すると病気を防げる」ことは別
だとよくわかる例である。

明確: ビタミンE欠乏への補充
利益なし: 一般成人の心血管疾患・癌予防目的の摂取

ビタミンK―血液凝固には必須だが、「骨に良い」からサプリを飲むべきとは限らない

ビタミンKは血液凝固因子の正常な働きに不可欠である。
重度のビタミンK欠乏では出血しやすくなる。
特に新生児はビタミンK欠乏になりやすく、ビタミンK欠乏性出血予防は非常に重要である。

一方、ビタミンKは骨代謝にも関与するため、
「ビタミンKを多く摂れば骨折を防げるのではないか」
という研究も行われてきた。

しかし、ビタミンKサプリメントによる骨折予防の研究結果は一貫しておらず、一般の人が追加摂取すれば骨粗鬆症を防げるとまではいえない。

心血管疾患予防についても研究中で、確立した効果とはいえない。

また、ワルファリン使用患者ではビタミンK摂取量の変動が抗凝固作用に影響するため、薬剤師としては相互作用にも注意したい。

明確: ビタミンK欠乏性出血、新生児のビタミンK欠乏性出血予防
不明確: 一般人のサプリメントによる骨折・心血管疾患予防
注意: ワルファリンとの関係

ビタミン別「本当に効く?」早見表

ビタミン根拠が比較的明確なものよく期待されるが根拠が弱い・ないもの注意点
A欠乏症、夜盲症健康な人の視力改善、癌予防過剰摂取、妊娠、βカロテンと喫煙
B1脚気、Wernicke脳症欠乏のない人の疲労回復欠乏リスクの評価
B2欠乏症、片頭痛予防に一定の根拠万能な疲労回復比較的安全
B3欠乏症、薬理量で脂質値改善スタチンへの追加による心血管イベント予防潮紅、肝障害など
B5欠乏症疲労、ストレス、美容への追加効果通常欠乏はまれ
B6欠乏症、妊娠中の悪心・嘔吐認知機能改善など長期大量摂取で末梢神経障害
B7欠乏症欠乏のない人の発毛、美爪臨床検査への干渉
B9・葉酸欠乏症、神経管閉鎖障害予防癌・認知症・心血管疾患の万能予防過剰摂取にも注意
B12欠乏性貧血、神経障害疲労回復、運動能力向上、認知症予防吸収障害や食習慣も確認
C欠乏症、風邪期間をわずかに短縮一般人の風邪予防、発症後の風邪治療大量摂取に注意
D欠乏、くる病、骨軟化症癌・心血管疾患などの万能予防過剰で高Ca血症
E欠乏症癌・心血管疾患予防高用量摂取に注意
K欠乏性出血、新生児の出血予防一般人の骨折・心血管疾患予防ワルファリンとの相互作用

マルチビタミンなら、とりあえず飲んでおけばよい?

「一つのビタミンだけでは効果がなくても、全部入ったマルチビタミンなら健康によいのではないか」
と思うかもしれない。

しかし、健康な成人が心血管疾患や癌を予防する目的でマルチビタミンを飲むことについて、USPSTFは現在のエビデンスでは利益と害のバランスを判断できないとしている。

ここで重要なのは、
「効果がないことが証明された」
という意味ではなく、
「誰にでも勧められるほど確かな健康効果はまだ証明されていない」
という点である。

栄養不足がある人、偏った食生活の人、吸収障害のある人などまで「マルチビタミンに意味がない」とする話ではない。

対象となる人によって意味は変わる。

「野菜を食べる」と「ビタミン剤を飲む」は同じではない

もう一つ、ビタミン研究で陥りやすい考え方がある。

野菜や果物を多く食べる人は健康状態がよい。

野菜にはビタミンC、ビタミンE、カロテノイドなどが含まれている。

その成分だけを錠剤にして飲めば同じ効果が得られる。

一見もっともらしい。
しかし、実際にはそうならないことが多い。

食品にはビタミンだけでなく、
・食物繊維
・ミネラル
・ポリフェノール
・カロテノイド
・その他多数の成分
が含まれている。

さらに、「野菜をたくさん食べる人」は、ほかの食品の摂取量や生活習慣そのものが違う可能性もある。

したがって、

「ビタミンを含む食品が健康に良い」ことと、「そのビタミンだけをサプリメントとして摂ると健康になる」ことは同じではない。

βカロテンの研究などは、そのことを象徴している。

「抗酸化作用がある」「代謝に必要」は臨床効果の証明ではない

ビタミンを宣伝するときによく使われるのが、
「抗酸化作用があります」
「エネルギー代謝に関与します」
「免疫機能に関わります」
「神経伝達物質の合成に必要です」
といった説明である。

これらの多くは生化学的には正しい。

しかし、そこから、
「だから飲めば癌になりにくい」
「だから疲れが取れる」
「だから免疫力が上がって感染症を防げる」
と結論付けることはできない。

実際、
・ナイアシンは脂質値を改善しても、期待したほど心血管イベントを減らさなかった。
・ビタミンEには抗酸化作用があるが、心血管疾患や癌を予防しなかった。
・ビタミンDが低い人にはさまざまな疾患が多いが、ビタミンDを投与すればそれらの病気を一律に防げるわけではない。

したがって、ビタミンを見るときには、
「どんな生理作用があるのか」ではなく、「実際に人に投与した臨床試験で、症状・病気・死亡などが減ったのか」
を見る必要がある。

ビタミンは多いほどよいわけではない

ビタミンのイメージを最も単純に表すなら、

不足

健康障害が起こる

適量

正常な体の機能を維持する

さらに多量

必ずしも利益は増えない

大量

種類によっては有害

という関係になる。

ビタミンAやDなどの脂溶性ビタミンは体内に蓄積しやすく、過剰摂取による毒性が問題になる。
しかし、水溶性ビタミンなら安心というわけでもない。
たとえばB6は大量摂取を長期間続けることで末梢神経障害を起こす可能性がある。

つまり、
「不足すると病気になる」ことは、「多く摂ればより健康になる」ことを意味しない。

βカロテンは「体によさそう」が逆転した象徴的な例

ビタミンの歴史の中で特に興味深いのがβカロテンである。

βカロテンは抗酸化作用を持つため、かつては癌を予防するのではないかと大きな期待を集めた。

ところが、実際にランダム化比較試験を行ってみると、喫煙者などでは肺癌が増えた。

USPSTFがまとめた研究でも、βカロテンは心血管疾患や癌の予防には利益がなく、肺癌リスクの高い人では害があるとしている。

これは、
「抗酸化物質」
「天然由来」
「ビタミン」
「体に必要な栄養素」
といった言葉から健康効果を推測することの危険性を示している。

イメージではなく、実際に人に投与して何が起きたかを見る。

これこそエビデンスに基づいてビタミンを考える意味だろう。

薬剤師がビタミン剤を見たときに考えたいこと

患者から、
「ビタミンだから飲んでおいた方がいいですよね?」
と聞かれることがある。

そのとき、
「ビタミンだから良い」
「サプリメントだから不要」
のどちらかで判断するのではなく、
なぜそのビタミンを摂取するのか?
を考える必要がある。

欠乏症の治療なのか。
食事から十分摂取できないための補充なのか。
吸収障害があるのか。
妊娠に伴う葉酸摂取なのか。
片頭痛など特定疾患に対する使用なのか。
薬剤によってビタミン状態が影響を受けているのか。

それとも、
「なんとなく体によさそうだから」
なのか。

同じビタミン剤でも、目的によって医学的意味は全く違う。

まとめ―ビタミンは「体に良い」のではなく「体に必要」

ビタミンには「体に良い」という非常に強いイメージがある。

しかし、エビデンスから考えると、もっと正確な表現は、
「ビタミンは体に良い」ではなく「ビタミンは体に必要」
なのだろう。

不足しているビタミンを補うことには大きな意味がある。

また、妊娠前~初期の葉酸のように、欠乏症とは別に疾患予防効果がかなり明確なものもある。

ビタミンB2の片頭痛予防、ビタミンB6の妊娠中の悪心・嘔吐、ビタミンCの風邪期間のわずかな短縮など、特定の用途で一定の臨床効果が確認されているものもある。

一方、
「抗酸化作用がある」
「免疫に関係する」
「代謝に必要」
という理由だけで、健康な人が大量に摂取すればさらに健康になるとはいえない。

ビタミンEのように期待された疾患予防効果が確認されなかったものもあれば、βカロテンのように特定集団では逆にリスクを増加させたものまである。

したがって、ビタミンの使い方を一言で表すなら、
「必要な人に、必要なビタミンを、必要な量だけ」
ということになる。

ビタミンは万能薬ではない。
しかし、必要な場面では極めて重要である。

「ビタミン」という名前の持つ健康的なイメージではなく、
誰に、何の目的で、どれだけ使うのか。
そこまで考えて初めて、そのビタミンの本当の「良し悪し」が見えてくる。

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