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肥満症治療薬一覧-ウゴービ・ゼップバウンド・サノレックスの違い
公開. 更新. 投稿者: 42 ビュー. カテゴリ:栄養/口腔ケア.この記事は約11分39秒で読めます.
目次
- 1 肥満症治療薬の違い
- 2 肥満と肥満症は違う
- 3 保険で使える肥満症治療薬一覧
- 4 サノレックス
- 5 ウゴービ
- 6 ウゴービは週1回
- 7 ウゴービは誰でも保険で使えるわけではない
- 8 「まず6か月治療」が必要
- 9 ウゴービの最大投与期間は68週
- 10 68週たったら二度とウゴービを使えない?
- 11 ゼップバウンド
- 12 GLP-1だけでなくGIPにも作用する
- 13 ゼップバウンドも週1回
- 14 ゼップバウンドの保険適用条件
- 15 ゼップバウンドは最大72週
- 16 3~4か月で効果がなければ中止
- 17 ウゴービとゼップバウンドはどちらが痩せる?
- 18 GLP-1系薬で共通して注意したい副作用
- 19 マンジャロやオゼンピックを肥満症に使えばよい?
- 20 アライは肥満症治療薬ではない?
- 21 オブリーンという薬もあった?
- 22 肥満症治療薬の違いをまとめる
- 23 「最大投与期間」がある理由
- 24 美容目的の「GLP-1ダイエット」とは別物
肥満症治療薬の違い

肥満症の治療薬というと、最近では「GLP-1」が有名になった。
ウゴービ、ゼップバウンドなどが相次いで登場し、以前と比べると肥満症に対する薬物療法の選択肢は大きく増えている。
ただし、
「太っているから保険でGLP-1製剤を使える」
というわけではない。
日本では「肥満」と「肥満症」は区別されているし、ウゴービやゼップバウンドにはさらに厳しい保険適用上の条件が設定されている。
また、意外と重要なのが最大投与期間である。
- サノレックス:3か月まで
- ウゴービ:68週まで
- ゼップバウンド:72週まで
と、それぞれ異なる。
肥満症治療薬について整理してみる。
肥満と肥満症は違う
まず「肥満」と「肥満症」を区別しておきたい。
日本では一般に、
BMI 25kg/m²以上=肥満
と判定される。
しかし、肥満そのものが直ちに病気というわけではない。
日本肥満学会では、肥満に関連する健康障害を有するなど、医学的に減量が必要な状態を「肥満症」として扱っている。
肥満症の診断に関連する健康障害には、
- 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患
- 脳梗塞・一過性脳虚血発作
- 非アルコール性脂肪性肝疾患
- 月経異常・女性不妊
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
- 運動器疾患
- 肥満関連腎臓病
などがある。
つまり、
BMIが高い=肥満
ではあるが、
BMIが高い=肥満症治療薬の保険適用
ではない。
ここを混同しないことが重要である。
保険で使える肥満症治療薬一覧
2026年8月時点で、日本で肥満症そのものに対して保険診療で使用される主な薬は次の3剤である。
| 商品名 | 一般名 | 分類 | 投与方法 | 主な投与対象 | 最大投与期間 |
|---|---|---|---|---|---|
| サノレックス | マジンドール | 食欲抑制薬 | 内服 | BMI≧35などの高度肥満症 | 3か月 |
| ウゴービ | セマグルチド | GLP-1受容体作動薬 | 週1回皮下注 | 一定条件を満たす肥満症 | 68週 |
| ゼップバウンド | チルゼパチド | GIP/GLP-1受容体作動薬 | 週1回皮下注 | 一定条件を満たす肥満症 | 72週 |
ここで注意したいのは、3剤の「最大投与期間」の意味が少し違うことである。
サノレックスの3か月は電子添文の用法・用量そのものに規定された上限である。
一方、ウゴービの68週、ゼップバウンドの72週は、肥満症に使用する際の最適使用推進ガイドラインおよび保険診療上の運用として設定されている投与期間である。
サノレックス
マジンドールによる食欲抑制
サノレックス錠0.5mgの成分はマジンドール。
以前から存在する食欲抑制薬である。
中枢神経系に作用して食欲を抑制し、食事療法・運動療法を補助する。
用法は通常、
マジンドール0.5mgを1日1回、昼食前
から開始する。
必要に応じて増量できるが、1日最大1.5mgまでである。
BMI35以上が基本
サノレックスは、
肥満度+70%以上またはBMI35以上の高度肥満症
が対象である。
したがって、BMI25や30程度の「肥満」に対して使用する薬ではない。
最大3か月
サノレックスで特徴的なのが、
投与期間は3か月を限度
と明確に決められていることである。
さらに、
1か月以内に効果が認められなければ中止
する。
これは食欲抑制薬の長期使用による肺高血圧症のリスクや、依存性などを考慮したものである。
そのため、
「効いているから半年、1年と継続する」
という使い方はできない。
ウゴービ
ウゴービの成分は、
セマグルチド
である。
GLP-1受容体作動薬に分類される。
セマグルチドといえば、
- オゼンピック
- リベルサス
も同じ成分である。
ただし、オゼンピックやリベルサスの適応は2型糖尿病であり、肥満症治療薬として承認されているのはウゴービである。
「同じセマグルチドだから同じ薬」と考えるのは適切ではない。
ウゴービは週1回
通常、
週1回0.25mg
から開始する。
その後4週間ごとに、
0.25mg→0.5mg→1.0mg→1.7mg→2.4mg
と増量し、通常は週1回2.4mgを維持用量とする。
徐々に増量するのは、悪心、嘔吐、下痢、便秘などの消化器症状を軽減するためでもある。
ウゴービは誰でも保険で使えるわけではない
ウゴービの効能・効果は、
高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られない肥満症で、
- BMI 27kg/m²以上かつ2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
- またはBMI 35kg/m²以上
の場合に限られている。
ここで少しややこしい。
例えば、
BMI35以上だけなら、それだけで誰でもウゴービを使える
という意味ではない。
前提として、
高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを有する
ことも必要である。
さらに保険診療では、適切な食事療法・運動療法が行われ、管理栄養士による栄養指導などを含む厳格な要件が設けられている。
「まず6か月治療」が必要
ウゴービをいきなり開始することは基本的にできない。
保険診療上は、適切な治療計画を作成したうえで食事療法・運動療法を行い、管理栄養士による栄養指導を少なくとも6か月以上受けていることなどが求められる。
つまり、
「BMIが高いので今日からウゴービ」
という薬ではない。
ここは美容目的の自由診療で使用されるGLP-1製剤との大きな違いである。
ウゴービの最大投与期間は68週
さらに特徴的なのが、
68週以内に投与を中止する治療計画
を立てる必要があることである。
68週というと約1年4か月。
サノレックスの3か月に比べればかなり長いが、
「体重を維持するために何年間も保険で継続する」
ことを前提にした制度ではない。
投与中も、
- 体重
- 血糖
- 血圧
- 脂質
などを定期的に評価し、改善傾向を確認する。
68週たったら二度とウゴービを使えない?
ここも誤解しやすい。
68週投与したら、
その患者は一生ウゴービを使えない
という意味ではない。
中止後に肥満症が悪化した場合には、再び食事療法・運動療法を行ったうえで、必要と判断されれば再投与が認められる場合がある。
その際にも、原則として改めて管理栄養士による栄養指導などを含めた治療を行い、再度68週以内に終了する治療計画を立てることになる。
つまり、
68週=生涯の累積投与上限
ではなく、
1回の治療計画における上限
と考えたほうがわかりやすい。
ゼップバウンド
ゼップバウンドは2025年に登場した比較的新しい肥満症治療薬。
成分は、
チルゼパチド
である。
チルゼパチドといえば、2型糖尿病治療薬のマンジャロと同じ成分である。
しかし、
マンジャロ=2型糖尿病
ゼップバウンド=肥満症など
と、製品としての適応は異なる。
GLP-1だけでなくGIPにも作用する
ウゴービはGLP-1受容体作動薬。
それに対してゼップバウンドは、
GIP/GLP-1受容体作動薬
である。
つまり2種類のインクレチン受容体に作用する。
GLP-1作用による、
- 食欲抑制
- 胃内容排出の遅延
- 血糖依存的インスリン分泌促進
などに加え、GIP受容体への作用も持っている。
ウゴービとゼップバウンドの最大の薬理学的な違いといえる。
ゼップバウンドも週1回
通常、
週1回2.5mg
から開始する。
その後4週間の間隔で2.5mgずつ増量し、
通常の維持用量は週1回10mg
である。
状態に応じて週1回5mgまで減量、あるいは最大15mgまで増量できる。
規格は、
- 2.5mg
- 5mg
- 7.5mg
- 10mg
- 12.5mg
- 15mg
の6種類。
ウゴービよりも規格数が多い。
ゼップバウンドの保険適用条件
肥満症に対する基本的な患者条件はウゴービとほぼ同じである。
すなわち、
高血圧、脂質異常症または2型糖尿病のいずれかを有し、
- BMI 27kg/m²以上かつ肥満に関連する健康障害を2つ以上有する
- またはBMI 35kg/m²以上
で、十分な食事療法・運動療法を行っても効果不十分な患者が対象となる。
ウゴービと同様、管理栄養士による栄養指導を含めた治療歴など、保険診療上の要件もある。
ゼップバウンドは最大72週
ゼップバウンドでは、
72週以内に投与を中止する治療計画
を作成する。
したがって、
ウゴービ:68週
ゼップバウンド:72週
という微妙な違いがある。
どちらも「ずっと投与し続ける薬」ではない点は共通している。
3~4か月で効果がなければ中止
最大投与期間だけを見て、
「ゼップバウンドなら72週間使える」
と考えるのも適切ではない。
電子添文では、体重、血糖、血圧、脂質などを定期的に確認し、
3~4か月投与しても改善傾向が認められない場合には投与を中止する
こととされている。
十分な減量効果が得られている場合にも、漫然と72週まで使用するのではなく、投与継続の必要性を検討する。
ウゴービとゼップバウンドはどちらが痩せる?
薬理作用だけを見ると、
GLP-1単独のウゴービ
より、
GIP+GLP-1のゼップバウンド
のほうが強い体重減少作用を期待できる可能性がある。
厚生労働省の薬事審議会でも、チルゼパチドはGLP-1受容体だけでなくGIP受容体にも作用し、一般的にGLP-1単独より強い体重減少作用を示すデータがあることが説明されている。
ただし、
「ゼップバウンドのほうが強いから全員こちら」
という単純な話ではない。
消化器症状をはじめとする副作用、糖尿病治療薬との併用、患者の状態、投与量などを考慮して選択する必要がある。
GLP-1系薬で共通して注意したい副作用
ウゴービとゼップバウンドでは、
- 悪心
- 嘔吐
- 下痢
- 便秘
- 腹部症状
などの消化器症状が比較的よくみられる。
また、より重要なものとして、
- 急性膵炎
- 胆嚢・胆道系疾患
- イレウス
- 脱水
- 腎機能悪化
- 低血糖(特に他の糖尿病治療薬との併用時)
などにも注意する。
特に投与開始直後や増量時には悪心などが生じやすいため、少量から段階的に増量することが重要である。
マンジャロやオゼンピックを肥満症に使えばよい?
薬剤師としてはここも整理しておきたい。
| 成分 | 糖尿病用製剤 | 肥満症用製剤 |
|---|---|---|
| セマグルチド | オゼンピック、リベルサス | ウゴービ |
| チルゼパチド | マンジャロ | ゼップバウンド |
有効成分が同じであっても、
承認された効能・効果、用量、製剤設計が異なる。
したがって、
「ウゴービがないからオゼンピック」
「ゼップバウンドの代わりにマンジャロ」
と単純に置き換えることはできない。
肥満症に対する保険診療では、肥満症として承認された製剤を適切な条件で使用する必要がある。
アライは肥満症治療薬ではない?
もう一つ混同しやすい薬に、
アライ(オルリスタット)
がある。
アライは消化管リパーゼを阻害して、食事由来の脂肪の吸収を抑える薬である。
ただしアライは処方薬ではなく、要指導医薬品として薬局で購入する市販薬。
肥満症に対して医療保険を使って処方する薬ではない。
そのため、
「保険適用の肥満症治療薬一覧」
には通常含めないほうがよい。
オブリーンという薬もあった?
セチリスタットを成分とする、
オブリーン錠120mg
という肥満症治療薬もかつて承認された。
しかし薬価収載されないまま発売されず、開発・販売契約も終了している。
そのため、現在の実臨床で使用する肥満症治療薬として考える必要はない。
肥満症治療薬の違いをまとめる
改めて3剤を比較する。
| サノレックス | ウゴービ | ゼップバウンド | |
|---|---|---|---|
| 成分 | マジンドール | セマグルチド | チルゼパチド |
| 分類 | 食欲抑制薬 | GLP-1受容体作動薬 | GIP/GLP-1受容体作動薬 |
| 剤形 | 錠剤 | 皮下注 | 皮下注 |
| 投与頻度 | 1日1~3回 | 週1回 | 週1回 |
| 開始量 | 0.5mg/日 | 0.25mg/週 | 2.5mg/週 |
| 通常維持量 | 最小有効量 | 2.4mg/週 | 10mg/週 |
| 最大量 | 1.5mg/日 | 2.4mg/週 | 15mg/週 |
| 主なBMI条件 | BMI≧35など | BMI≧27+健康障害2つ以上、またはBMI≧35 | BMI≧27+健康障害2つ以上、またはBMI≧35 |
| 高血圧・脂質異常症・2型糖尿病の条件 | ウゴービ等とは異なる | いずれかが必要 | いずれかが必要 |
| 事前の生活療法 | 必要 | 原則6か月以上 | 原則6か月以上 |
| 最大投与期間 | 3か月 | 68週 | 72週 |
| 効果不十分時 | 1か月で効果なければ中止 | 定期的に評価 | 3~4か月で改善傾向なければ中止 |
| 主な注意 | 依存、肺高血圧、不眠など | 消化器症状、膵炎等 | 消化器症状、膵炎等 |
「最大投与期間」がある理由
ここまで見ると、
「肥満症は慢性疾患なのに、なぜ薬を途中でやめるのだろう?」
という疑問が生じる。
実際、肥満症は薬を止めれば体重が再び増加する可能性のある慢性的な疾患である。
しかし現在の日本の保険制度では、ウゴービやゼップバウンドについて、
薬だけを漫然と長期間投与するのではなく、食事療法・運動療法を基本として一定期間薬物療法を加える
という設計になっている。
そのため、
ウゴービは68週、ゼップバウンドは72週という治療計画上の上限が設定されている。
サノレックスについては事情が異なり、薬そのものの安全性の観点から3か月を超えて投与しないことが電子添文で定められている。
同じ「最大投与期間」でも、
サノレックス:薬剤自体の投与上限
ウゴービ・ゼップバウンド:最適使用推進ガイドライン・保険診療上の治療期間
という違いは覚えておきたい。
美容目的の「GLP-1ダイエット」とは別物
ウゴービやゼップバウンドが登場したことで、
「GLP-1を使えば保険で痩せられる」
と思われることもある。
しかし、日本の保険診療における肥満症治療薬は、
美容目的の減量薬ではない。
単にBMIが高いだけではなく、肥満によって健康障害が生じている、あるいはそのリスクが高く、医学的に減量が必要な患者に使用する薬である。
さらにウゴービ、ゼップバウンドについては、
食事療法・運動療法を十分行っても改善しない患者に、一定の施設・医師の要件のもとで使用する
というかなり厳格な薬になっている。
肥満症治療薬が増えてきたからこそ、
「どの薬が一番痩せるか」
だけではなく、
誰に、どの段階で、どのくらいの期間使う薬なのか
まで理解しておく必要がありそうだ。



