2024年12月18日更新.2,481記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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PDE-5阻害薬とsGC刺激薬は併用禁忌?

肺高血圧症治療薬の一覧と併用禁忌

肺高血圧症治療薬には併用禁忌の薬が多く、肺高血圧症治療薬同士での併用禁忌の組み合わせもあるので注意が必要である。

分類商品名一般名併用禁忌
プロスタグランジン製剤ベンテイビスイロプロスト
ウプトラビセレキシパグ
エンドセリン受容体拮抗薬トラクリアボセンタン水和物シクロスポリン、タクロリムス、グリベンクラミド
ヴォリブリスアンブリセンタン
オプスミットマシテンタン強いCYP3A4誘導剤(リファンピシン、セイヨウオトギリソウ含有食品、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、リファブチン)
PDE-5阻害薬レバチオシルデナフィルクエン酸塩硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド、ニコランジル等)、リトナビル含有製剤、ダルナビル含有製剤、イトラコナゾール、コビシスタット含有製剤、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤(リオシグアト)
アドシルカタダラフィル硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド、ニコランジル等)、リトナビル含有製剤、ダルナビル含有製剤、イトラコナゾール、コビシスタット含有製剤、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激剤(リオシグアト)、チトクロームP450 3A4(CYP3A4)を強く阻害する薬剤(イトラコナゾール、リトナビル含有製剤、アタザナビル、インジナビル、ネルフィナビル、サキナビル、ダルナビル含有製剤、クラリスロマイシン、テラプレビル、コビシスタット含有製剤、エンシトレルビル)、CYP3A4を強く誘導する薬剤(リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン、フェノバルビタール)を長期的に投与中
可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬アデムパスリオシグアト硝酸剤又は一酸化窒素(NO)供与剤(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビド、ニコランジル等)、ホスホジエステラーゼ(PDE)5阻害剤、アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール、ボリコナゾール)、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬(ベルイシグアト)

肺高血圧症治療薬の血管拡張作用と低血圧

肺高血圧症治療薬には、エンドセリン受容体拮抗薬、可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬、PDE-5阻害薬、プロスラグランジン製剤などがある。この中で、PDE-5阻害薬と可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬は併用禁忌である。その理由は「低血圧」である。その機序としては「細胞内cGMP濃度が増加し、全身血圧に相加的な影響を及ぼすおそれがある。」と添付文書に記載されている。

PDE-5阻害薬と可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬、また、狭心症治療薬である硝酸薬の作用機序は同じカスケードで働いている。

血管を拡張するので、低血圧のリスクは他の肺高血圧症治療薬(プロスタグランジン製剤、エンドセリン拮抗薬)にもあるが、違うカスケードで働くので併用禁忌というわけではない。

アデムパスとベリキューボはどちらも可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬であり、併用することは無いが、併用禁忌としてどちらの添付文書にも記載されている。当然のように感じるが、同種同効薬ではっきりと併用禁忌に記載されている薬は少ない。同種同効薬の併用については基本的には疑義照会が必要となるが(実務として行うかどうかは別として)、医師が「そのままで」と言えばそのまま調剤することになる。しかしこのように添付文書上併用禁忌に記載されていれば、そのリスクを医師にも伝えることが容易となる。

肺高血圧症の配合剤

肺高血圧症の配合剤として、ユバンシ配合錠という製剤が2024年9月24日に承認されている。
成分はマシテンタンとタダラフィルである。

マシテンタンは商品名オプスミットのエンドセリン受容体拮抗薬である。
タダラフィルは商品名アドシルカのPDE-5阻害薬である。

PDE-5阻害薬と可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬(リオシグアト)は併用禁忌であるが、PDE-5阻害薬とエンドセリン受容体拮抗薬の併用は可能であるため、このような配合剤が生まれた。
しかし、配合剤となり併用禁忌は双方の品目が合わさり増えているので、さらなる注意が必要である。

アデムパスとベリキューボの違い

肺高血圧症治療薬の中でも、アデムパス、ベリキューボといった可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬は、血圧に応じて用量を設定する必要があり、低血圧に注意が必要である。しかし、PDE5阻害薬や硝酸薬と併用禁忌になっているsGC刺激薬は、アデムパスのみで、ベリキューボは併用禁忌になっていない。

アデムパスよりもベリキューボの方が低血圧のリスクが低い、といった情報は見当たらず、低血圧やめまいの副作用リスクはいずれも高いので、併用禁忌ではないとしても、ベリキューボと硝酸薬、PDE5阻害薬との併用の際には血圧の数値を必ず確認するなどの注意が必要であろう。

肺高血圧症による右心不全

昔はβ遮断薬は心不全に禁忌でしたが、現在ではアーチストやメインテートといったβ遮断薬が慢性心不全に使われることがある。。
しかしβ遮断薬は「肺高血圧症による右心不全」には禁忌となっている。理由は「心機能が抑制され、症状を悪化させるおそれがある。」ためである。

心臓の右側(右心房→右心室)は肺に血液を送り出し、心臓の左側(左心房→左心室)は全身に血液を送り出しています。右心不全では全身に血液がたまり浮腫みます。左心不全では肺に血液がたまり呼吸困難などが起こります。

肺高血圧症で肺動脈圧が高くなると、心臓の右側に圧がかかり負担が生じて右心不全となります。肺高血圧症で右心不全はほぼ必発です。そのため、肺高血圧症患者にβ遮断薬は禁忌ともいえそうだが、薬剤師に判断は難しい。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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