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一番安全なSU剤はグリミクロン?
公開. 更新. 投稿者:糖尿病.この記事は約4分52秒で読めます.
3,307 ビュー. カテゴリ:SU剤と重症低血糖
高齢者にとって低血糖はさまざまな悪影響を及ぼします。
低血糖の頻度が高いと転倒を起こしやすいことや、重症低血糖は認知症の危険因子になっていることもわかってきました。さらに、重症低血糖は不整脈、自律神経異常、易血栓性を介して死亡につながりやすいと考えられています。
最近のメタ解析で、グリクラジド(グリミクロン)がもっとも重症低血糖が少ないと報告されました。従来のグリベンクラミド(ダオニール、オイグルコン)は、海外では高齢者には使ってはいけない薬となっており、高齢者に使う必要はなくなってきています。
グリメピリド(アマリール)が一般ではよく使われていますが、作用時間が長く、重症低血糖を起こしやすいといえます。昔は3~6mg/日のように多めの量を使っていましたが、今はそれほど使う必要はなく、0.5~1mg/日程度を使っている医師が多い。
アマリール錠3mgは採用されない?
アマリールの用法用量は、
通常、グリメピリドとして1日0.5~1mgより開始し、1日1~2回朝または朝夕、食前または食後に経口投与する。維持量は通常1日1~4mgで、必要に応じて適宜増減する。なお、1日最高投与量は6mgまでとする。
となっているが、1日3mg以上使うことは稀です。
なので、薬局にもアマリール錠0.5mgと1mgはありますが、アマリール錠3mgというのは置いていない。
1日3mg使う場合にも、あえて1日2回に分けて1mg錠を使うケースが多い。
なぜ少量でしか使われないかというと、低血糖が多いから。
アマリールの臨床成績の項をみると、
食事療法のみにて治療中で、HbA1c(JDS値)が7.0%以上のNIDDM患者(±0.5%以内の変動で安定)を対象に、本剤1~4mg/日を12週間経口投与したプラセボ対照二重盲検比較試験において、改善率(HbA1c(JDS値)が1.0%以上低下した症例)は67.6%(25/37)であった。また、HbA1c(JDS値)は本剤投与群で8.26%から6.94%に低下し、プラセボ投与群で8.24%から8.40%に上昇した。
HbA1cを1%以上低下させるってのは、血糖値はかなり下がっていると推測される。
実際に使う用量が0.5mg、1mgが多い、というのが3mg錠をあまり見ない理由ではありますが、もう一つリスクマネージメント上の理由もあります。
3mg錠を採用してしまうと、1mg錠と間違えて3mg錠を調剤してしまう可能性が出てくる。
アマリール錠0.5mgと1mgを間違えても、問題ないわけではありませんが、被害は少ない。
しかし、1mgと3mgでは3倍の量。重篤な低血糖を起こす可能性が高くなります。
これはアクトスとアマリールの合剤であるソニアス錠の処方をあまり見かけない理由にも通ずる。
アマリールと似た名称のアルマール(現アロチノロール塩酸塩錠「DSP」)が名称変更を余儀なくされたことからも、副作用の重篤性、使用頻度などを考慮すると、調剤上最も注意すべき薬剤の一つかと思われます。
アマリールで遷延性低血糖になる?
SU剤による低血糖は、インスリン製剤による低血糖に比べて遷延化するという問題がある。
その原因としてSU剤の活性代謝物が挙げられる。グリベンクラミド(ダオニール/オイグルコン)やグリメピリド(アマリール)は、代謝物が活性を持つことが知られている。
血糖降下薬により低血糖を起こした患者がブドウ糖で一時的に回復したとしても、薬剤の代謝が進めば再び低血糖を起こしてしまう恐れがある。遷延性低血糖のケースでは、長時間(数日間)のブドウ糖持続投与が必要になることが多いとされる。
その点でグリミクロンは代謝物に活性がないため、低血糖の遷延化のリスクは低いといえる。
ダオニールは心筋梗塞時のダメージが大きい?
ダオニールなどのSU剤は、虚血プレコンディショニングを阻害する。
虚血プレコンディショニングとは、虚血ストレスから心筋を守るために、生体に備わった防御機構です。
心筋梗塞前に一過性の虚血(梗塞前狭心症)を起こすことにより、心筋のダメージを減らすことができます。
この現象による心筋保護作用は、梗塞前狭心症による虚血ストレスを引き金に、心筋細胞のミトコンドリア内にあるATP依存性カリウムチャネルが開くことによって生じます。
一方、SU剤は膵臓のATP依存性カリウムチャネルを閉鎖することで働きます。
そのため、SU剤は梗塞前狭心症による虚血プレコンディショニングを妨げる恐れがあると考えられるとのこと。
SU剤の中で、この虚血プレコンディショニングを消失させるものはグリベンクラミドだけだといわれている。
SU受容体のサブタイプにはSUR1、SUR2A、SUR2Bの3種類がある。
SU受容体のサブタイプ | 分布 | 受容体に結合する構造 |
---|---|---|
SUR1 | 膵β細胞 | スルホニルウレア基、ベンズアミド基 |
SUR2A | 心筋細胞 | ベンズアミド基 |
SUR2B | 血管平滑筋細胞 | ベンズアミド基 |
グリクラジド(グリミクロン)はベンズアミド基を持たないので、心筋への影響は少ないと考えられる。
グリメピリド(アマリール)、グリベンクラミド(オイグルコン/ダオニール)はベンズアミド基を持つが、グリメピリドのほうはSUR2A受容体でもミトコンドリアではなくサルコレンマSUR2Aのほうに結合するので心筋に対する影響は少ないという仮説がある。
いずれにせよ臨床上、虚血プレコンディショニングという心筋保護機構を妨げるのはグリベンクラミドのみということらしい。
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