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ホンバン錠はなぜ販売中止になった?
公開. 更新. 投稿者:癌/抗癌剤.この記事は約3分1秒で読めます.
4,074 ビュー. カテゴリ:ジエチルスチルベストロール
前立腺癌に使われていた合成エストロゲン製剤のホンバン錠は成分のホスフェストロールが入手困難になったことから現在では販売中止されています。
ホスフェストロールは別名リン酸ジエチルスチルベストロールといいます。
ジエチルスチルベストロールはかつて流産防止薬として用いられていました。
安全な薬として広く用いられ、米国においては、1938年から1971年にかけて500-1000万人に処方されたとされます。
また、更年期障害・老人性膣炎・不妊症に対しても処方が行われたていました。
また、家畜の肥育促進用として飼料に添加されていたこともあります。
1970代以降、胎児期にジエチルスチルベストロールの暴露を受けた女性に(通例稀な)膣腺ガンや子宮形成不全などの障害が発生するとの報告が相次ぎ、米国のFDAは1971年に妊婦に対するDESの処方を中止するよう勧告しました。
その一方で多くのヨーロッパ諸国においては1978年まで、第三諸国においては1994年まで使用され続けていました。
日本国内では厚生省から1971年に妊娠中の使用を忌避する通達が出されています。
前立腺癌に使う分には問題なかったのでしょうけど、このように世界的に需要が無くなって入手困難になってくると、販売を続けるのは難しいですね。
前立腺癌の治療に無くてはならないというわけでもないですし。
子宮頸がんの原因はジエチルスチルベストロール?
子宮頸がんの99%はヒトパピローマウイルス(HPV)による感染が原因です。
そのため1%はウイルス以外が原因である。
子宮頸がんに関するQ&A
Q.子宮頸がんに、HPV以外の原因はありますか?
A子宮頸がんの原因は、ほぼ100% が高リスク型HPVです。ただし、腺がんにはHPV が検出されない例もまれにあります。その中には、1938 年から1971 年の間に、多くの女性に流産抑止剤として投与された薬剤、ジエチルスチルベストロール (DES) に胎内で暴露していた場合に発生する腺がんもあります (DES は、1971 年まで日本でも一般的に使用されていました)。
1%は薬害ということになる。
胎児プログラミング仮説
胎児プログラミング仮説とは、化学物質や薬物によって胎児期に受けた影響が、長期にわたって人の健康を左右するという仮説です。
代表的な例として、1970年代に世界中で起きたDES薬害などがある。
近年の日本においても、食品に含まれる環境ホルモンなどによって、胎児期に健康を害する影響を受けかねない状況である。
胎児プログラミングの機序は解明されていないが、有力な説としてエピジェネティック変異毒性説がある(エピ「外」、ジェネティック「遺伝子の」の意味)。
従来は化学物質が人間に影響を与えるのは、遺伝子の塩基配列を変化させるため、とされてきた。
逆に言えば、化学物質に毒性が認められていても、遺伝子の塩基配列の変化が無ければ、次世代への危険性は低いと考えられてきた。
ところが最近の研究では、遺伝子配列に変化を与えなくても、遺伝子の塩基に化学反応を起こすことで、遺伝情報の発現に影響を与える可能性が示唆されている。
しかも、この影響は子どもだけに限らない。
DES薬害では、投与された女性の孫にも、先天的生殖器異常が多いという報告がある。
エピジェネティック変異は、生殖器にも起きる。
つまり、子どもだけでなく、孫の代にも影響が現れるということである。
DES薬害
ジエチルスチベストロール(DES)とは、1940年代にFDAが承認した流産予防薬。
妊婦への投与が禁止されるまで、20年以上にわたって世界中の妊婦に投与された。
しかし70年代になると、生まれた子どもに先天性の生殖器異常が増加すること、そして思春期を迎えると膣腺がんが発症することが表面化。
さらに、胎児期にDESの影響を受けた人は、成人後に高血圧や糖尿病疾患の発症リスクが高いことも報告されるようになった。
胎児期に受けた薬物の影響は、時限爆弾のように時間を経て病気を引き起こしたといえる。
なお日本ではあまりDESは使用されていなかった。
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