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内視鏡はどこまで届く?
公開. 更新. 投稿者:消化性潰瘍/逆流性食道炎.この記事は約3分34秒で読めます.
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内視鏡とは何か?

「内視鏡」とは、体内の臓器を直接観察するための医療機器です。細長いチューブ状の機械の先端にカメラや光源が搭載されており、消化管などの内部をリアルタイムで見ることができます。
内視鏡と聞くと「胃カメラ」や「大腸カメラ」を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし実際には、口から肛門までの消化管全体をカバーする技術が進んでおり、「どこまで届くのか?」という疑問にはさまざまな答えがあります。
上部消化管内視鏡(胃カメラ):十二指腸まで届く
上部消化管内視鏡とは、口または鼻から挿入し、食道・胃・十二指腸(主に下行部まで)を観察する内視鏡です。
● 到達範囲:
・食道全域
・胃(噴門部、体部、前庭部、幽門部)
・十二指腸(球部〜下行部)
● 限界:
通常の胃カメラでは十二指腸の水平部〜上行部、空腸以降には届きません。
小腸まで詳細に観察する場合は、別の特殊な内視鏡が必要です。
下部消化管内視鏡(大腸カメラ):回腸末端まで届く
肛門から挿入して、大腸全体(直腸〜盲腸)を観察するのが下部内視鏡です。技術があれば回腸末端(小腸の最後)まで挿入可能です。
● 到達範囲:
・直腸
・S状結腸
・下行結腸
・横行結腸
・上行結腸
・盲腸
・回腸末端(症例による)
● 限界:
回腸より先、小腸の大部分(空腸・回腸近位部など)は通常の大腸カメラでは到達困難。
小腸内視鏡:カプセル内視鏡とダブルバルーン内視鏡
小腸は全長6〜7メートルあると言われ、従来の内視鏡ではカバーできない「空白地帯」でした。これを補うのが次の2つです。
● カプセル内視鏡
カプセル型のカメラを飲み込み、自然に消化管を通過させながら撮影を行う内視鏡。排泄された後に画像を確認します。
特徴:
・苦痛が少ない
・小腸全域を観察可能(ただし検査時間が長く、処置は不可)
到達範囲:
・口腔〜肛門まで(通過する全消化管)
● ダブルバルーン内視鏡(DBE)
細長いスコープとバルーン付きのオーバーチューブを使って、小腸に深く入り込む技術。押し込むときに腸をたぐり寄せるようにして進みます。
特徴:
・空腸・回腸の深部までアクセス可能
・病変の生検・治療も可能
到達範囲:
・小腸全域(口側/肛門側の両アプローチあり)
内視鏡の限界と進化:どこまで行けるかは「術者次第」
内視鏡が届く範囲は、機種や技術の進歩だけでなく、術者の経験や熟練度にも大きく依存します。
● 達成率の差:
・回盲部まで到達できない大腸内視鏡検査も一定数存在
・小腸までダブルバルーンで到達できるかは体格や癒着の有無などにも影響される
● 今後の展望:
・ロボティック内視鏡の開発
・AIによる病変検出支援
・より小型で操作性の高いスコープの開発
各内視鏡どこまで届く?
・上部内視鏡(胃カメラ):十二指腸下行部まで、生検・止血など処置も可能
・下部内視鏡(大腸カメラ):回腸末端まで、スクリーニング・ポリープ切除が可能
・カプセル内視鏡:小腸全域(通過型)、痛みなし/観察専用
・ダブルバルーン内視鏡:小腸全域(挿入型)、治療・処置可能
内視鏡は単なる「カメラ」ではありません。到達範囲によってできることが大きく異なり、診断精度や治療の可能性を左右します。
・胃カメラは十二指腸まで
・大腸カメラは回腸末端まで
・カプセルとダブルバルーンで小腸全域へ
「どこまで届くか」を知ることは、患者の不安を和らげ、適切な検査選択にもつながります。内視鏡技術は今後も進化を続け、さらなる「到達」と「安全性」が期待されています。