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認知症の原因はグルタミン酸?
公開. 更新. 投稿者:認知症.この記事は約7分38秒で読めます.
3,966 ビュー. カテゴリ:コリン仮説とグルタミン酸仮説
認知症の原因としては、アリセプトやレミニール、リバスタッチみたいなコリンエステラーゼ阻害薬が認知症に効果があるという根拠になっている「コリン仮説」、メマリーのようなNMDA受容体拮抗薬の作用機序の根拠となっている「グルタミン酸仮説」がある。
神経伝達物質としてのアセチルコリンについてはよく知っているけど、グルタミン酸がどのような働きをしているのかよくわからない。
グルタミン酸は興奮系の刺激伝達物質です。
このグルタミン酸の受容体には幾つかの種類があり、そのうちの1つが、NMDA(N-methyl-D-aspartate )受容体です。
この受容体は海馬に多く分布し、記憶の増強に重要な働きをしている、と考えられていて、その受容体の減少が、アルツハイマー型認知症の記憶障害の、1つの要因ではないかと推測されます。
グルタミン酸受容体の減少が認知症の記憶障害の原因という話。
なのになぜグルタミン酸受容体拮抗薬でそのレベルをさらに落とすような真似をするのか。
メマリーの作用機序をみると、
アルツハイマー型認知症ではグルタミン酸神経系の機能異常が関与しており、グルタミン酸受容体のサブタイプであるNMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体チャネルの過剰な活性化が原因の一つと考えられている。メマンチンはNMDA受容体チャネル阻害作用により、その機能異常を抑制する。
グルタミン酸受容体は減少してるけど、その分少なくなった受容体が異常に活性化してる。
で、メマリーはグルタミン酸の緩い受容体拮抗薬らしいので、ちょうどいい具合にグルタミン酸による神経伝達を調整するような薬ということ。
アルツハイマー病の原因仮説
【コリン仮説】
アセチルコリン(ACh)は興奮性神経伝達物質であり、神経細胞上のACh受容体を刺激することで神経細胞を活性化させ、認知機能に関与しています。
ADでは、前脳基底核から大脳新皮質(前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉)や海馬に投射するコリン作動性神経の変性・脱落に伴い、脳内のACh濃度が低下しているため、認知機能が障害されると考えられています
【グルタミン酸仮説】
グルタミン酸は興奮性神経伝達物質であり、神経細胞上のNMDA受容体を刺激することで神経細胞を活性化させ、学習や記憶の形成に関与しています。
ADでは、NMDA受容体が過剰に活性化されており、過剰なCa2+流入により器質的な神経障害が生じると考えられています。また、過剰なCa2+流入は正常な神経伝達シグナルを妨害し、記憶の形成を阻害すると考えられています。
興奮毒性
グルタミン酸は、NMDA受容体を介して、記憶や学習を促進させる。
しかし、グルタミン酸による刺激が強すぎるとその興奮毒性により神経細胞死が引き起こされる。
アルツハイマー病患者の脳に多くみられるβーアミロイドはNMDA受容体のグルタミン酸結合部位に結合することが知られており、興奮毒性を引き起こす原因の一つであると考えられている。
ドネペジルは、アセチルコリンを分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼを可逆的に阻害することでシナプスにおけるアセチルコリン量を増加させる。シナプスに放出されたアセチルコリンは、シナプス後細胞の受容体を介して生存シグナルを活性化することで、NMDA受容体を介した興奮毒性から神経を保護すると考えらえている。
メマリーとシナプティックノイズ
アルツハイマー型認知症の病態時では、シナプス間隙のグルタミン酸濃度の持続的な上昇によってNMDA受容体が活性化されます。
このような持続的なNMDA受容体活性化に伴う細胞内へのCa2+の流入、シナプティックノイズの増大などによって認知機能障害が引き起こされると考えられています。
①神経細胞障害
細胞内にCa2+が過剰に流入し、神経細胞が傷害されます。
②記憶・学習機能障害
シナプティックノイズ(持続的な電気シグナル)が増大し、記憶を形成する神経伝達シグナルを隠してしまうため、記憶・学習機能が障害されます。
シナプティックノイズとは、神経細胞の電気的信号が伝わりにくい状態のこと。
ラジオの電波にノイズが入って聞き取りにくい時、アンテナの方向を変えると聞こえやすくなるが、メマンチンにより、そうとしか説明しにくい作用が生じることがある。
メマンチンの少量の投与でも、「シナプティックノイズ」の軽減という作用があらわれ、認知面や精神面に変化が表れることがある。
グルタミン酸(うま味調味料)で頭痛?
頭痛を引き起こす食品として、 チョコレート、チーズ、柑橘類、中華料理など がある。
中華料理が原因の頭痛とは、グルタミン酸が原因の頭痛、チャイニーズレストランシンドロームのこと。
チャイニーズレストランシンドローム(中華料理店症候群)とは、中華料理を食べたアメリカ人が直後に体調不良を訴えたことに端を発し、その原因物質として、中華料理に多用される「うま味調味料」に含まれるグルタミン酸に疑いがかけられたときについた呼び名です。
だが、その後の研究によって、グルタミン酸はシロであることが証明されている。
グルタミン酸は、中枢における興奮性の神経伝達物質として作用することから疑いの目が向けられたのだが、人体には血液脳関門というバリアーがあるため、グルタミン酸を摂取しても、その影響が直接中枢に及ぶことはない。
グルタミン酸で記憶力アップ?
記憶は脳で作られる。
その脳内での主要な神経伝達物質はグルタミン酸だ。
脳の神経回路で情報を伝え、記憶も形づくる。
ちなみに、グルタミン酸は化学調味料としても使われるが、口から入ったグルタミン酸は脳へは届かない。
グルタミン酸とGABA
グルタミン酸は、2つのカルボキシル基を持つ酸性アミノ酸。
うち1つが脱炭酸化してできるのがγアミノ酪酸(GABA)だ。
GABAは、生体内では抑制性の神経伝達物質として働く。
グルタミン酸同様、容易には血液脳関門を通過できないことから、その作用は中枢性ではなく、末梢の交感神経の神経伝達物質であるノルアドレナリンの分泌を抑制することにより、血管の収縮が抑えられ、血圧が下がると考えられている。
アルツハイマー病の原因はβアミロイド?
AD脳の病理変化として、βアミロイド蛋白による老人斑とリン酸化タウ蛋白による神経原線維変化が特徴的である。
これらの溶けにくい蛋白質が数十年をかけて脳に蓄積していき、神経細胞が変性・脱落して脳機能の低下が起こる。
最初に、記憶や言語の理解を司る海馬・側頭葉に病変が起こるため、症状として記憶障害(もの忘れ)から始まり、日付がわからなくなるなど日常生活に支障が出るようになる。
次いで空間認識を司る頭頂葉、さらに言語や実行機能・意欲などを司る前頭葉へと進展すると、自分のいる場所がわからない、徘徊などの問題行動が出現して、日常生活にも介護が必要になる。
AD脳では、脳の神経細胞間で情報を伝えるアセチルコリンの減少が認知機能障害に関与している。
アセチルコリンの分解を阻害するコリンエステラーゼ阻害薬は一時的な認知機能改善や、症状の進行を抑制する効果がある。
βアミロイド
アルツハイマーの原因は、βアミロイドというタンパク質が脳内の組織に蓄積し、脳の神経細胞が死滅するという説が有力です。
βアミロイドは正常な人においても合成、分泌されていますが、酵素によって分解され蓄積しません。
βアミロイドが蓄積すると老人斑という大脳皮質にみられる円形の染み状の病変がみられます。
しかし老人斑は、アルツハイマーを発病していない老人にもできていたり、海馬(短期記憶に関わる部分)ではあまり発見されていないことから、老人斑をアルツハイマーの原因とする説は疑問視されています。
老人斑があってもアルツハイマーにならない?
90歳ぐらいになると、認知症であっても、認知症でなくても、70%ぐらいで老人斑があります。
老人斑があっても認知症になる人とならない人がいます。
そこが謎です。
しかし、それも程度の問題で、発症しなかった人でも、あと10年も生きていればアルツハイマー病を発症したかも知れません。
なので、老人斑がある人がアルツハイマー病にならないかどうかというのは、よくわかりません。
ちなみに、アルツハイマー病の患者さんで老人斑がないという人はいません。
ヤコブ病
狂牛病は脳がスポンジのようにスカスカになる病気です。
狂牛病が人間に感染するとヤコブ病と呼ばれます。
このヤコブ病はアルツハイマーと似たような症状なので、牛肉がアルツハイマーの原因じゃないか?という憶測が生まれています。
認知症の予防接種?
アルツハイマー病は、アミロイドベータと呼ばれるペプチドが過剰に生産されて蓄積し、老人斑を形成することが原因とされ、徐々に進行して記憶障害を引き起こします。
このアミロイドベータをワクチンとして投与し、それに対する抗体を体内で産生させる方法が実験されました。
マウスでは成功したのですが、ヒトに対する治験の段階で副作用が出ました。
髄膜のところに炎症が起きて、激しい頭痛が出て、中止になりました。
2人の患者さんが亡くなりました。
実用化にはまだほど遠い様子です。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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