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透析患者に禁忌の薬一覧
公開. 更新. 投稿者:腎臓病/透析.この記事は約2分25秒で読めます.
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透析患者に禁忌とされている薬は多い。
薬物動態のADME(吸収・分布・代謝・排泄)における排泄の部分で腎臓の果たす役割が非常に大きいからである。
透析患者に禁忌といっても、禁忌の部分に「透析患者」と記載されている薬は少なく、「重篤な腎障害」「高度の腎障害」「無尿」など、記載方法はさまざま。
検査結果がわかればそれを参考にできるが、何も語らない患者もいるので、それぞれの腎障害の程度のニュアンスの違いを知り、疑義を持ったときには医師に問い合わせる姿勢が必要である。
CKD(慢性腎臓病)の重症度分類では以下のようになっている。
GFR区分 | 重症度 | GFR(ml/分/1.73m²) |
---|---|---|
G1 | 正常または高値 | 90以上 |
G2 | 正常または軽度低下 | 60~89 |
G3a | 軽度~中程度低下 | 45~59 |
G3b | 中程度~高度低下 | 30~44 |
G4 | 高度低下 | 15~29 |
G5 | 末期腎不全 | 15未満 |
とある資料によると、
重篤・重度の腎障害は、eGFR10以下
高度の腎障害は、eGFR11~30
中等度の腎障害は、eGFR31~50
となっている。
透析導入の目安としては、eGFR15ですが、あくまで目安。しかし、確実に高度から重度の腎障害であると言えるだろう。
薬効分類 | 薬品 | 禁忌 |
---|---|---|
NSAIDs | バファリン330mg | 重篤な腎障害 |
ロキソニン | 重篤な腎障害 | |
ボルタレン | 重篤な腎障害 | |
ブルフェン | 重篤な腎障害 | |
ポンタール | 重篤な腎障害 | |
ニフラン | 重篤な腎障害 | |
モービック | 重篤な腎障害 | |
カロナール | 重篤な腎障害 | |
トラムセット | 重篤な腎障害 | |
ソランタール | 重篤な腎障害 | |
抗アレルギー薬 | ジルテック | 重度の腎障害 |
ザイザル | 重度の腎障害 | |
抗精神病薬 | インヴェガ | 中等度から重度の腎機能障害患者 |
クロザリル | 重度の腎機能障害 | |
SNRI | サインバルタ | 高度の腎障害 |
イフェクサーSR | 重度の腎機能障害(糸球体ろ過量15mL/min未満)のある患者又は透析中の患者 | |
抗てんかん薬 | ヒダントールDEF | 重篤な腎障害 |
ミノ・アレビアチン | 重篤な腎障害 | |
オスポロット | 腎障害 | |
抗パーキンソン薬 | シンメトレル | 重篤な腎障害 |
ドプス | 重篤な末梢血管病変のある血液透析患者 | |
ミラペックスLA | 透析患者を含む高度な腎機能障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)のある患者 | |
レストレスレッグス症候群治療薬 | レグナイト | 高度の腎機能障害 |
気分安定薬 | リーマス | 腎障害 |
抗めまい薬 | セファドール | 重篤な腎障害 |
鎮咳薬 | カフコデ | 重篤な腎障害 |
抗不整脈薬 | リスモダンR錠、 | 透析患者を含む重篤な腎機能障害 |
シベノール | 透析中の患者 | |
ソタコール | 重篤な腎障害 | |
利尿薬 | ラシックス | 無尿 |
ルプラック | 無尿 | |
フルイトラン | 無尿、急性腎不全 | |
バイカロン | 無尿、急性腎不全 | |
ノルモナール | 無尿、急性腎不全 | |
アルダクトンA | 無尿、急性腎不全 | |
ダイアモックス | 無尿、急性腎不全 | |
サムスカ | 無尿 | |
抗アルドステロン薬 | セララ | 中等度以上の腎機能障害 |
ACE阻害薬 | カプトリル | AN69を用いた血液透析患者 |
レニベース | AN69を用いた血液透析患者 | |
ARB + 利尿薬 | プレミネント | 無尿、透析、急性腎不全 |
エカード | 無尿、透析、急性腎不全 | |
コディオ | 無尿、透析、急性腎不全 | |
ミコンビ | 無尿、透析、急性腎不全 | |
肺高血圧症治療薬(PDE5阻害薬) | アドシルカ | 重度の腎障害 |
片頭痛治療薬(バッカク系) | カフェルゴット | 腎機能障害 |
片頭痛治療薬(トリプタン系) | マクサルト | 血液透析中の患者 |
アマージ | 重度の腎機能障害 | |
抗高脂血症薬(フィブラート系) | ベザトールSR | 人工透析患者、腎不全などの重篤な腎疾患 |
リパンチル | 中等度以上の腎機能障害 | |
健胃薬、制酸薬 | S・M散 | 透析療法を受けている患者 |
つくしA・M 配合散 | 透析療法を受けている患者 | |
消化性潰瘍治療薬(アルミニウム含有) | アルミゲル細粒 | 透析療法を受けている患者 |
アドソルビン | 透析療法を受けている患者 | |
マーロックス | 透析療法を受けている患者 | |
アルサルミン | 透析療法を受けている患者 | |
コランチル | 透析療法を受けている患者 | |
下剤 | セチロ | 腎機能障害 |
マグコロール | 腎障害 | |
ビジクリア | 腎機能障害、急性リン酸腎症 | |
他の消化器官用薬 | コロネル | 腎結石、腎不全(軽度及び透析中を除く) |
ペンタサ | 重篤な腎障害 | |
子宮内膜症治療薬 | ボンゾール | 重篤な腎疾患 |
月経困難症治療薬(女性ホルモン薬) | ルナベル | 糖尿病性腎症 |
ヤーズ | 糖尿病性腎症、重篤な腎障害、急性腎不全 | |
夜尿症用薬 | ミニリンメルト | 中等度以上の腎機能障害 |
勃起不全治療薬 | レビトラ | 血液透析が必要な腎障害 |
カルシウム剤 | 乳酸カルシウム | 腎結石、重篤な腎不全 |
アスパラ-CA錠 | 腎結石、重篤な腎不全 | |
カルチコール | 腎結石、重篤な腎不全 | |
カリウム剤 | スローケー | 乏尿・無尿、高度の腎機能障害 |
アスパラK | 重篤な腎機能障害 | |
グルコンサンK | 重篤な腎機能障害 | |
アミノ酸製剤 | ESポリタミン | 重篤な腎障害又は高窒素血症のある患者 |
栄養剤(たん白アミノ酸製剤) | エンシュア・H | たん白質や電解質の厳密な制限が必要な急性腎炎、ネフローゼ、腎不全末期 |
エンテルード | 重篤な腎障害 | |
ツインライン | 高度の腎障害 | |
ラコール | 高度の腎障害 | |
抗血栓薬 | ワーファリン | 重篤な腎障害 |
プラザキサ | 透析患者を含む高度の腎障害 | |
リクシアナ | 高度の腎機能障害 | |
イグザレルト | 腎不全 | |
エリキュース | 重度の腎障害(CLcr30mL/min未満)の患者 | |
抗酒薬 | シアナマイド液 | 重篤な腎障害 |
痛風治療薬(尿酸排泄促進薬) | ベネシッド | 腎結石、高度の腎障害 |
ユリノーム | 腎結石、高度の腎障害 | |
糖尿病治療薬 | オイグルコン、ダオニール | 重篤な腎機能障害 |
グリミクロン | 重篤な腎機能障害 | |
アマリール | 重篤な腎機能障害 | |
スターシス、ファスティック | 重篤な腎機能障害 | |
グリコラン | 腎機能障害(軽度障害も含む)、透析患者 | |
メトグルコ | 中等度以上の腎機能障害、透析患者 | |
アクトス | 重篤な腎機能障害 | |
メタクト | 腎機能障害(軽度障害も含む)、透析患者 | |
ソニアス | 重篤な腎機能障害 | |
リオベル | 重篤な腎機能障害 | |
ジャヌビア、グラクティブ | 透析患者を含む重度腎機能障害 | |
バイエッタ/ビデュリオン | 透析患者を含む重度腎機能障害のある患者 | |
骨代謝改善薬(ビスホスホネート) | アクトネル、ベネット | 重篤な腎障害(CCr30mL/分未満) |
ダイドロネル | 重篤な腎障害 | |
抗リウマチ薬 | リウマトレックス | 腎障害 |
メタルカプターゼ | 腎障害 | |
リマチル | 腎障害 | |
リドーラ | 腎障害 | |
オルミエント | 重度の腎機能障害を有する患者 | |
鉄キレート剤 | エクジェイド | 高度の腎機能障害 |
抗生物質製剤 | ランサップ | 高度の腎障害 |
抗ウイルス薬 | レベトール/コペガス | 慢性腎不全、腎機能障害(CCr50mL/分以下) |
ソバルディ | 重度の腎機能障害(eGFR < 30mL/分/1.73m2)又は透析を必要とする腎不全の患者 | |
抗がん薬 | ティーエスワン | 重篤な腎障害 |
ゼローダ | 重篤な腎障害 | |
メソトレキセート | 腎障害 | |
外用薬 | ヨードホルム | 腎障害 |
トルソプト点眼液 | 重篤な腎障害 | |
エイゾプト点眼液 | 重篤な腎障害 | |
フランセチン・T・パウダー | 重篤な腎障害 | |
プロトピック軟膏 | 高度の腎障害 | |
ブレオS軟膏 | 重篤な腎障害 |
NSAIDsが腎障害に禁忌であることは有名である。腎臓の血流量を低下させ、腎機能を悪化させる。
尿の出ていない透析患者に利尿剤は無意味であることは容易に想像できる。しかし、透析患者が全て無尿であるとは限らない。
しかし、正直言って、何が透析に禁忌の薬か、透析専門の診療所の門前薬局に勤めている薬剤師でもなければピンとこないのではないかと思う。
目薬や軟膏で透析に禁忌の薬というのは、まったくもってピンとこない。
透析を行っているという患者や、カリウム吸着剤やクレメジンなど飲んでいる患者に遭遇したら、処方されている薬の添付文書を全て調べる姿勢が必要であろう。
中枢移行性と水溶性
腎排泄型で、かつ中枢に移行しやすい薬剤として、アシクロビル(ゾビラックス)・バラシクロビル(バルトレックス)やプレガバリン(リリカ)、スルピリド(ドグマチール)などが挙げられる。
一般的に腎排泄型の薬剤は水溶性であり、組織移行性はそれほど高くないとされるが、これらの薬剤は尿中未変化体排泄率が非常に高く、かつ中枢に移行しやすいことで知られる。過量投与により意識障害などを来し、転倒などの重大な事故につながりかねないため注意したい。
肝代謝型の薬物なら腎不全に投与してもOK?
肝代謝型の薬なら腎機能が低下してても大丈夫じゃないの?
肝代謝型の薬物なら腎機能が低下していても代謝されて排泄されるし、腎排泄型の薬物なら肝機能が低下していても排泄できるので、OKと判断する。
がしかし、それに当てはまる薬ばかりではない。
サインバルタ(デュロキセチン)の排泄に関して添付文書をみると「糞中及び尿中にデュロキセチンはほとんど存在せず、投与量の72.0%は代謝物として尿中に排泄され、18.5%は糞中に排泄された」と記載されており、尿中排泄率はほぼゼロ。
にもかかわらず、サインバルタは「高度の腎機能障害のある患者」に禁忌となっている。「高度の肝機能障害のある患者」にはもちろん禁忌。
その理由として、腎機能が低下すると尿毒素物質が排泄されなくなり、尿毒素物質が体内に蓄積され、それらの物質が肝臓の代謝酵素を阻害したり、腸管のトランスポーターを阻害したりすることで、肝代謝型薬物の代謝を阻害するという機序が考えられる。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。
3 件のコメント
飲める制酸薬を教えて下さい。
血液透析を初めてから、1年になります。色々苦しい事ばかりす。低血圧になったり高血圧だったり、リンとカリユムが高かったりです。便が硬くなって辛い毎日です。こんなに、辛いんだったら、何回も死にたいと、思いました。あアドバイスお願いします。
コメントありがとうございます。
透析中のお辛い気持ち、自分自身がその身になってみなければわかりませんが、身内にも同じような者がいたので、お察しします。
お辛いのは便秘のことだけではないと思いますが、便秘については今までも医師と話をして下剤を使ったり生活上の工夫をされていると思います。
私には力不足で何のアドバイスもできませんが、透析の方にも役に立つ記事を書いていきたいと思います。