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健康食品って本当に効くの?
公開. 更新. 投稿者:健康食品/OTC.この記事は約3分16秒で読めます.
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健康食品って本当に効くの?

健康食品やサプリメントについて、「これって本当に効くの?」という疑問を持つ方は少なくありません。ドラッグストアやインターネット上で数多くの製品が並ぶ中、商品に関する質問を受ける機会も多いのではないでしょうか。
薬剤師として接客する中で、「何に効くの?」「疲れにいいの?」「飲んだら痩せる?」といった質問をされることがあります。ですが、健康食品と医薬品では根本的に法律上の位置づけや“効能”の取り扱いが異なるのです。
健康食品の法的位置づけ
「健康食品」は法律上の明確な定義があるわけではなく、一般的には健康の保持・増進に役立つことを目的に販売・利用されている食品全般を指します。法的には食品衛生法で規定されており、医薬品のような「効能効果の証明」は不要です。
一方、医薬品は薬機法(旧薬事法)で厳しく管理され、効能効果を裏付けるための臨床試験が義務づけられています。この違いにより、健康食品は効果に関する信頼性が医薬品とは大きく異なるのです。
「効く」と言ってはいけない?
健康食品は「疲労回復」「老化防止」「免疫力アップ」などの効果を謳うことはできません。これは薬機法で定められた“医薬品的効能効果の表示禁止”に基づくものです。
たとえば、
「血圧を下げる」→ NG(医薬品的表現)
「血圧が高めの方におすすめ」→ OK(特定保健用食品など許可表現)
表示可能な表現には細かなガイドラインが存在し、誤解を招く表現や、事実を誇張するような広告は法律違反とされます。
健康食品の種類と分類
健康食品には以下のような分類があります:
・特定保健用食品(トクホ)
国が許可した「特定の保健効果がある」と認められた食品。審査が厳しく、表示内容も規制されている。
・栄養機能食品
特定の栄養成分(ビタミンやミネラルなど)を一定量含み、その栄養補給を目的とする食品。国の個別審査は不要。
・機能性表示食品(2015年以降)
事業者が科学的根拠を届け出ることで、機能性を表示できる食品。ただし、国の審査・認可はない。
健康食品と医薬品の違い
項目 | 健康食品 | 医薬品 |
---|---|---|
法的根拠 | 食品衛生法・健康増進法 | 薬機法(旧薬事法) |
効能効果の表示 | 原則不可 | 可(添付文書で明記) |
臨床試験の実施 | 義務なし | 義務あり |
品質・含有量の管理 | 自主基準 | 厳密な規格あり |
サプリメントの問題点
健康食品に含まれるサプリメントには、以下のような問題点があります。
・含有量が不明・不安定
表示されている成分量が実際とは異なる製品もあり、同じ商品でもロットごとに成分量がばらつくことがあります。
・成分の相互作用が不明
サプリメントは複数の植物由来成分を含むことが多く、医薬品との相互作用のリスクがあります。
・無承認成分の混入
特にダイエットや強壮系サプリでは、医薬品成分が違法に添加されていたケースも。インターネット通販や個人輸入品は注意が必要です。
・エビデンスの誤解
「実験で効果あり」とされる内容の多くは、動物実験や試験管レベルの研究です。ヒトでの有効性を示すRCT(ランダム化比較試験)は非常に限られています。
天然だから安全?
「天然だから体にいい」「自然なものは安心」といった印象がありますが、それは必ずしも正しくありません。
天然成分には、未解明な化合物が多数含まれていることもあり、品質や効果の安定性に欠ける場合もあります。逆に、化学合成品は成分が明確で安定しているという利点があります。
健康被害が出た場合の対応
医薬品であれば、医薬品副作用被害救済制度により、一定の条件を満たせば補償が受けられます。
しかし健康食品については、同様の制度は存在せず、被害が出てもPL法(製造物責任法)などによる民事訴訟しか道はありません。その場合でも、因果関係の立証が難しいため、実際の補償に至るケースはごく少数です。
薬剤師としてできること
健康食品は医薬品とは異なり、明確な効果が証明されていないケースがほとんどです。そのため、薬剤師として以下のような対応が求められます:
・「薬ではないこと」「効果が確立されていないこと」を丁寧に伝える
・誇大広告に惑わされないよう、正しい情報提供を行う
・医薬品との相互作用や健康状態への影響を確認する
健康食品は“効かない”とは一概に言い切れませんが、“効く”とも安易に言えない存在です。
重要なのは、個々の商品がどのような法的位置づけにあるか、表示されている内容に科学的な根拠があるのか、そして何より、使う人が納得できる形で選べるかどうかです。
薬剤師として、エビデンスに基づいた情報提供と冷静な判断で、患者や消費者の健康に寄り添う対応が求められます。