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プラケニルとクロロキン事件
公開. 更新. 投稿者:副作用/薬害.この記事は約5分52秒で読めます.
4,701 ビュー. カテゴリ:エリテマトーデス治療薬プラケニル
クロロキンって怖い薬?
プラケニルというエリテマトーデス治療薬がある。
おそらく一生お目にかかることは無い薬だろう。
プラケニルは1955年に米国で承認され、アジア諸国をはじめ全世界70ヵ国以上において、マラリア、全身性エリテマトーデス、円板状エリテマトーデス、光線過敏症、関節リウマチなどの適応症で承認されています。プラケニルは効能・効果において「皮膚エリテマトーデス」が認められた日本で初めての薬剤となります。
プラケニルの成分は、ヒドロキシクロロキン硫酸塩です。
クロロキン。なんか聞いたことある。
クロロキン事件である。
クロロキンはもともとマラリアの特効薬として太平洋戦争末期にアメリカ軍が使用していた薬だが、これを「レゾヒン」として輸入販売していた武田薬品工業の子会社吉富製薬が1958年に適応症を腎炎に拡大、さらに1961年小野薬品が慢性腎炎の特効薬「キドラ」として大量に宣伝販売することによって、同年からおもに腎臓病患者にクロロキン網膜症という眼障害をひきおこした大型薬害事件。
クロロキンを慢性腎炎に適用したのは日本だけであり、したがってクロロキン製剤による薬害事件が生じたのは日本だけである。
クロロキンにより網膜症という副作用が生じる。
クロロキンの長期投与により眼底黄斑が障害され、網膜血管が細くなり視野が狭くなってしまう。クロロキン網膜症には治療法が無く、薬の服用を中止しても視覚障害が進行する。
腎炎と網膜症は共通の原因、糖尿病によって引き起こされるので、網膜症をもつ腎炎患者は多いだろう。
そのために網膜症を悪化させた患者が多かったともいえる。
プラケニルの警告にも以下のよう書かれている。
本剤の投与により、網膜症等の重篤な眼障害が発現することがある。網膜障害に関するリスクは用量に依存して大きくなり、また長期に服用される場合にも網膜障害発現の可能性が高くなる。このため、本剤の投与に際しては、網膜障害に対して十分に対応できる眼科医と連携のもとに使用し、本剤投与開始時並びに本剤投与中は定期的に眼科検査を実施すること。
適切な対応を取っていれば防げた薬害ではあるけれども、クロロキンと聞くと怖いイメージを持つ人もいる。
プラケニルの適応症は、「皮膚エリテマトーデス、全身性エリテマトーデス」ですが、マラリア、慢性腎炎、関節リウマチ、にも効くという不思議な薬。
プラケリニルの作用機序には、以下のように書かれている。
ヒドロキシクロロキンの皮膚エリテマトーデス、全身性エリテマトーデスに対する薬効には、主にリソソーム内へのヒドロキシクロロキンの蓄積によるpHの変化とそれに伴うリソソーム内の種々の機能の抑制が関与しているものと推察される。
よくわからない。
ヒドロキシクロロキンがどのような機序で自己免疫疾患に効果を発揮するかの全体像は明らかではありません。現時点では、免疫系の活性化をもたらす免疫細胞同士の連絡を阻害していると考えられています。
ヒドロキシクロロキン 帝京大学医学部内科学講座リウマチ・膠原病グループ-研究室
よくわからない。どの程度効くのだろうか。
エリテマトーデスとプラケニル
エリテマトーデスは膠原病の一種で、過剰産生された抗DNA抗体がDNAと結合して組織に沈着し、炎症を惹起すると考えられている。
全身性エリテマトーデス(SLE)は発熱や倦怠感(全身症状)、手指の関節痛や肘・膝の関節炎(関節症状)、顔面や耳、首の回りに好発する紅斑を特徴とする。皮膚エリテマトーデス(CLE)は皮膚症状を中心とする。
SLE患者の大半は女性で、20代~40代の発症が多い。
ステロイドや免疫抑制薬などによる治療で症状は軽快するが、寛解と増悪を繰り返して慢性の経過をたどる。
SLEは指定難病の1つで約6万人が医療費助成を受けている。
ヒドロキシクロロキン(HCQ)は抗炎症作用、免疫調節作用、抗マラリア作用などを持つ。
類似構造のクロロキン(CQ)は過去に日本でも抗マラリア薬として販売されていたが、高用量投与による網膜障害が国内外で報告され、販売中止となった。
一方、海外ではHCQとCQは、SLEおよびCLEへの標準的治療薬に位置付けられている。
HCQはCQに比べ組織親和性が低く、低用量では網膜障害リスクも相対的に低いとされる。
HCQの開発は1950年代と古く、現在70か国以上で使用されている。
クロロキン網膜症
クロロキン網膜症は日本で多発した薬害である。
日本では、承認用量が高く(1日600㎎まで)、また、有効性が示されていない腎炎にも適応拡大されていた。その結果、腎機能が低下した患者で過量投与となり、クロロキン網膜症を生じた。また、網膜症への副作用への注意喚起が不十分だったことも薬害の拡大に影響したと考えられている。
その後、ヒドロキシクロロキンは、SLEの治療薬として推奨された。厚生労働省は、2010年に医療上の必要性の高い未承認薬として、本剤の開発を製薬企業に要請。厚労省の要請を受け、国内で臨床開発が進められ、15年8月、プラケニル(一般名ヒドロキシクロロキン硫酸塩)が発売された。
SLEやCLEに対するヒドロキシクロロキンの作用機序は明らかになっていないが、免疫が活性化するために必要となる細胞同士の連絡を抑えると考えられている。また、ヒドロキシクロロキンはクロロキンよりも極性が高く、網膜組織に移行しにくいため、網膜症の発症リスクは比較的低いとされる。
とはいえ、重篤な副作用として網膜症、骨髄抑制、ミオパチー、低血糖などの報告があり、注意を要する。網膜症については、本剤の累積投与量が200gを超えると発症リスクが増加すると報告されている。投与開始時、投与中は定期的に眼科検査を受ける必要がある。
ヒドロキシクロロキンは分布容積が903Lと非常に大きいのが特徴だが、脂肪組織移行性は乏しい。そのため、肥満者で実体重を基に投与量を決定すると、過量投与となる恐れがある。投与量を決める際は、実体重は参考にせず、身長を基に決める必要がある。
クロロキンは腎臓病に効く?クロロキン事件
クロロキンというマラリアの薬があります。
日本ではクロロキン事件という薬害で有名です。
日本では、1955年に販売を開始し、その後、慢性腎炎、妊娠腎、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、癇癪などの効能が次々と承認されていきました。
クロロキン網膜症という重篤な副作用が報告されたのは1959年。
クロロキンが製造中止になったのは1974年のこと。
遅い。
しかも、クロロキンが腎炎に効果があるとし腎臓疾患の患者に投与されたのは世界では日本だけ。
クロロキンが腎炎に効果があるというのは全くのデタラメらしい。
なんでこんなことがまかり通るのでしょうか。
勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。
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