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アラントインが傷を治す?
公開. 更新. 投稿者:褥瘡.この記事は約4分24秒で読めます.
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アラントインとは?傷の修復を助ける成分の正体と活用法

私たちが日頃何気なく使っている化粧品やスキンケア製品、傷薬などには、さまざまな有効成分が配合されています。
その中でも「肌の修復を助ける成分」としてとてもポピュラーなのがアラントインです。
「アラントイン配合」と書かれたハンドクリームやキズ薬、あるいはニキビ治療薬など、実に幅広い製品で見かけます。
しかし、意外とその正体や由来について詳しく知っている方は少ないかもしれません。
今回は、アラントインの
・由来
・化学的特徴
・効果・作用
・医療・化粧品分野での用途
・歴史的背景
などを勉強します。
アラントインとは?
アラントイン(Allantoin)は、主に植物や動物の組織に広く存在する化合物です。
特にヨーロッパで伝統的に使われてきたヒレハリソウ(コンフリー)という植物に多く含まれています。
アラントインは皮膚や粘膜の修復促進作用、抗炎症作用、角質軟化作用などを持っており、医薬品や化粧品に「組織修復成分」として古くから利用されています。
・化学構造
・白色または微黄白色の無臭の結晶性粉末
・水に溶けにくいが、グリセリンや温水にやや溶ける
・化学式:C4H6N4O3
植物由来や合成によるものが流通しており、安全性が非常に高い成分です。
ヒレハリソウ(コンフリー)との関係
アラントインが注目された最初のきっかけは、民間薬として古くから知られるヒレハリソウでした。
ヒレハリソウとは?
ヨーロッパを中心に古代から使われたハーブ
すりおろした根や葉を傷や打撲、骨折に外用
「骨接ぎ草」とも呼ばれた
このヒレハリソウの根に含まれる有効成分がアラントインであることが後に科学的に解明され、「傷の修復を早める成分」として抽出・活用されるようになりました。
蛆(ウジ)の分泌物にもアラントイン
アラントインの面白いエピソードとして、第一次世界大戦中の野戦治療の逸話があります。
蛆療法(マゴットセラピー)
・戦場で壊死組織を除去するために傷口に蛆を使う
・蛆は死んだ組織を食べるだけでなく、分泌液で傷の治癒を促進する
後の研究で、蛆の分泌物にもアラントインが含まれていることがわかりました。
これにより、アラントインは「人類の長い歴史の中で自然と使われてきた組織修復成分」であることが示されたのです。
アラントインの作用と効果
アラントインは以下のような複合的作用を持ちます。
① 創傷治癒促進作用
・組織再生を刺激し、傷や炎症で傷んだ皮膚を修復する
・肉芽形成を助ける
・細胞増殖を促す
これが「キズ薬」によく配合される最大の理由です。
② 抗炎症・鎮静作用
・軽度の炎症を抑え、刺激感や赤みを軽減する
・ニキビや湿疹、かぶれなどにも有用
③ 角質軟化作用
・硬くなった角質を柔らかくする
・乾燥によるひび割れ・あかぎれを改善
④ 保湿作用
・バリア機能をサポートし、乾燥を防ぐ
医薬品とアラントイン
「OTC(市販薬)」のイメージが強いアラントインですが、実は医療用医薬品にも使われています。
代表的な製剤をいくつか紹介します。
●ヒビケア軟膏
・OTCの傷薬やひび割れ治療薬として有名です。
・成分:アラントイン、ビタミンEなど
・効果:ひび、あかぎれ、しもやけの治癒促進
アラントインは、ひび割れ部分の再生と炎症の緩和を担っています。
●イサロパン外用散
・褥瘡(床ずれ)治療に使われる処方薬です。
・主成分:アルクロキサ
・正式名称:アルミニウム・クロルヒドロキシアラントイネート
・特徴:アラントインとヒドロキシ塩化アルミニウムの縮合物
アルクロキサは収斂作用も併せ持ち、傷口の滲出液を抑えながら修復を助けます。
参考
イサロパンのインタビューフォームに「ヒレハリソウの有効成分アラントインをもとに開発された」と明記されています。
●アルジオキサ
・胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療薬です。
・アラントインの二水酸化アルミニウム塩
・胃粘膜を保護し、潰瘍面の治癒を促進
胃の「傷」にも使えるという点で、アラントインの修復作用の汎用性がわかります。
●ダラシンTゲル
ニキビ治療の塗り薬です。
・主成分は抗菌剤(クリンダマイシン)
・添加物としてアラントインを配合
アラントインはニキビ部位の刺激感や炎症を抑えるために「おまけ的」に入っていると考えられます。
同じくニキビ用の「クレアラシル」などでも利用されており、ニキビケアにはおなじみの成分です。
化粧品での活用
アラントインは医薬部外品や化粧品にも幅広く使われています。
●スキンケア
・敏感肌用化粧水
・保湿クリーム
・乳液
●ハンドケア
・ハンドクリーム
・ひび割れ予防クリーム
●シェービング製品
・髭剃り後のローションやジェル
●ベビーケア
・おむつかぶれ用クリーム
刺激が少なく安全性が高いので、小児から高齢者まで安心して使える点が大きな利点です。
アラントインの安全性
長い使用実績のある成分であり、副作用は非常に少ないです。
ごくまれにアレルギー性接触皮膚炎が報告されていますが、一般的には「安全性の高いスキンケア成分」として認識されています。
アラントインと同系統の成分
「似たような組織修復作用を持つ成分は何があるのか?」と思う方も多いでしょう。
●パンテノール
・ビタミンB5誘導体
・修復・保湿・抗炎症作用
●ビタミンE(トコフェロール)
・抗酸化作用
・血行促進
●グリチルリチン酸
・抗炎症作用が強い
・皮膚の赤みを抑える
これらと組み合わせることで、総合的なスキンケアや創傷治癒が可能になります。
まとめ:アラントインは「万能な修復の味方」
アラントインは、民間療法から現代の医療・化粧品まで続く、信頼性の高い成分です。
おさらい
・ヒレハリソウ由来の「傷を治す力」
・軽度の炎症や肌荒れにも有用
・医療用薬品から化粧品まで幅広く利用
・創傷治癒・抗炎症・角質軟化・保湿の4つの作用
・非常に安全性が高い
「肌の再生をサポートする成分」として、これからも幅広い分野で活躍し続けるでしょう。