血液型と病気の関係

血液型と病気の関係

「O型の人はノロウイルスにかかりやすい」「B型の人は膵臓がんになりやすい」「O型はマラリアに強い」──こうした“血液型と病気の関係”にまつわる話を耳にしたことがある人は多いかもしれません。

血液型とウイルス感染の関係

まず比較的よく知られているのが、「ノロウイルスと血液型」の関係です。研究によれば、

・O型の人はノロウイルスに感染しやすい
・B型の人は感染しにくい傾向がある

という結果が報告されています。これは、ウイルスが人の腸管にある特定の糖鎖構造（ヒトノロウイルス受容体）に結合して感染する過程で、血液型抗原が影響するためと考えられています。

実際に家族内でO型の人だけが胃腸炎にかかり、B型の人は発症しなかったという経験談もあり、個人レベルの実感と研究結果が一致することもあります。

血液型とがん─膵臓がんや前立腺がんとの関係

〇膵臓がんと血液型

2009年、米国国立がん研究所が約10万人を8年間追跡した研究において、以下のような膵臓がん発症リスクが報告されました：
・B型：1.7倍
・AB型：1.5倍
・A型：1.3倍
・O型：基準値（最もなりにくい）

この研究はその後、イタリアや中国など複数の国でも再検証され、同様の傾向が確認されました。血液型を決めるABO遺伝子が発がんリスクに何らかの関与をしている可能性が示唆されていますが、詳細なメカニズムは未解明です。

〇前立腺がんの再発リスク

また、東京医科大学の研究では、前立腺がんの手術後にがんが再発するリスクがO型の男性ではA型よりも約35％低いことが報告されました。

これは、O型の人が持つ免疫応答や血管新生に関する特性が、がんの再発予防に作用している可能性があります。

血液型と血栓症

2010年、米ハーバード大学のダナ・ファーバー研究所の研究によれば：
A/B/AB型の人はO型に比べて、肺塞栓症のリスクが約1.5倍高い

これは、AやB型の人が持つ血液中の凝固因子（特にフォン・ウィルブランド因子や第VIII因子）が高いためとされています。

血液型と感染症（マラリア）

一方で、O型はマラリアに対する抵抗力が高いことが知られています。赤道付近のマラリア多発地域では、O型の割合が多い傾向にあり、自然選択的にO型が残った可能性があると考えられています。

消化性潰瘍とO型─十二指腸潰瘍になりやすい？

東京大学医科学研究所の研究によると、O型の人は十二指腸潰瘍になりやすいことが明らかにされています。A型と比較して約1.43倍の発症リスクがあると報告されました。

その背景として、血液型を決める抗原が腸管粘膜にも発現しており、それがピロリ菌などの病原体の付着を助ける可能性があると推測されています。

血液型と「性格」の関係は？

「O型は大らか」「A型は几帳面」など、血液型と性格の関連は日本では定番の話題ですが、科学的根拠はありません。一部の研究では統計的にわずかな傾向が見られることもありますが、再現性が乏しく、性格形成における遺伝子以外の影響（育った環境や文化など）の方がはるかに大きいと考えられています。

血液型は変わることがある？

通常、血液型は一生変わりませんが、まれに以下のようなケースで変化することがあります：

・新生児期の誤判定：抗原の発現が弱いためO型と誤判定されることがある
・白血病や骨髄移植後：ドナーの血液型に置き換わることがある

いずれも特殊な状況であり、基本的に血液型は生涯変わらないと考えて良いでしょう。

医学的観点からの結論と注意点

ここまで紹介してきた通り、血液型と病気の関係については一部で統計的な傾向が示された研究が存在します。ただし：

・血液型は病気の「絶対的なリスク要因」ではない
・多くの研究は「相関」であって「因果関係」を証明するものではない
・生活習慣、遺伝、環境などの要因のほうが病気のリスクに大きく影響する

したがって、「O型だから胃潰瘍になる」「B型だからがんになりやすい」といった“決めつけ”は科学的ではありません。

一方で、リスク要因の一つとして知っておくことには意味があります。たとえば、血栓症リスクが高いとされるA型やB型の人は、

・高血圧
・中性脂肪
・喫煙

などと組み合わさった場合に、より注意して生活習慣を見直すきっかけになるかもしれません。

血液型は私たちの体の基本的な「個性」の一つです。それが病気との関連にどう影響しているのか、科学はまだすべてを解明しているわけではありません。

現時点では、あくまで一つの参考情報として捉え、日々の健康管理には食事・運動・睡眠などの基本を大切にすることが、何よりも重要です。

血液型をきっかけに、少し自分の体と向き合ってみる─そんな視点でこの記事を活用していただければ幸いです。