2024年12月18日更新.2,481記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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ステロイド外用薬の副作用リスク

ステロイド外用薬の危険性

「ステロイド」と聞くと怖い薬と思ってしまう患者さんも多く、服薬指導でも質問の多い薬剤のひとつです。

副作用に対する不安が先行するとコンプライアンスが低下します。
服薬を中断することによるデメリットも含めて、患者さんが納得するまで説明することが必要です。

ステロイドに対する誤解としては、内服薬による副作用を外用薬による副作用と混同しているケースが多い。

これについては、ステロイド外用薬が内服薬の全身投与による副作用を軽減し、局所での有効性を高める目的で工夫された薬剤であることを説明する必要がある。

ストロンゲストクラスのステロイド外用薬を10g/日単純塗布すると、ベタメタゾン0.5mg/日の内服と同様の影響が生じうるといわれているが、適切な日常診療が行われていれば、これほど多量のステロイド外用薬を継続して使用することは、まずない。

また、現在主流となっているステロイド外用薬には「アンテドラッグ」の概念が導入され、外用時には局所で強い効力を発揮するが、薬剤が体内や皮下組織に移行すると速やかに代謝され、不活化するか作用が急激に弱められ、副作用の発現が抑えられている。

ステロイド外用薬は、適切に使う限り全身的な副作用は起こりえないと考えてよい。

一方、ステロイド外用薬の長期使用により、細菌や真菌、ウイルスなどの感染症を誘発・増悪させたり、毛細血管拡張、皮膚委縮、多毛などをきたすこともあるが、中止ないし適切な処置により回復する。

むしろ、ステロイド外用薬を長期に使用したあとで突然中止すると、皮疹が急に増悪することがあるため、中止あるいは変更は医師の指示に従うよう患者や保護者に強調することが重要だ。

ステロイドは怖い薬?

「ステロイドは怖い薬」というイメージを持つ患者さんがいます。

ステロイドの塗り薬に関しては、適切に使用すれば、全身性の副作用はまず起こりません。

副腎皮質機能抑制の程度を指標として比べた場合、最強ランクの0.05%クロベタゾール軟膏(デルモベート)の1日10g単純塗布は、ベタメタゾン錠(リンデロン)の1日0.5mg内服に相当するに過ぎません。

また0.05%クロベタゾール軟膏の1日40g単純塗布は、ベタメタゾン錠の1日1mg内服以下に相当します。

ステロイドを一度使うとやめられなくなる?

よく効くのでやめられない、ということはあると思います。

あと弱いステロイドには段々慣れてきて、もっと強いものを欲しがるというのもあると思います。

ステロイドはよく効く薬です。ゆえに怖い薬とも言えるかも知れません。たかが塗り薬、という安易な考えよりは「怖い薬」というイメージは多少あったほうがいいのかも知れないですが。

ステロイドのイメージを尋ねると、「使い始めたらやめられない」と答える人は多い。

しかし、アトピー性皮膚炎の治療では、きちんとした医師の指導のもとでスキンケアや補助療法を継続していればステロイド外用薬を減量していっても、治療初期の状態に逆戻りするほどの再燃はまず起こらない。

「ステロイド外用薬をやめたらぶり返す」というのは、炎症がまだくすぶっているうちにステロイド外用薬をやめてしまうためで、それはまだ治療の途中だからである。

炎症が治まっていないのに「怖いから」と自己判断でステロイド外用薬を中止してしまうと炎症が再燃してしまい、結果的により多くのステロイドが必要となる場合もある。

アトピービジネスとステロイド外用薬

アトピービジネスという言葉が一般的になるほど、アトピー性皮膚炎に対する多くの誤った民間療法が広まっています。

アトピービジネスは「アトピー性皮膚炎患者を対象とし、医療保険診療外の行為によってアトピー性皮膚炎の治療に関与し、営利を追求する経済活動」と定義されています。

ただし、最近では医療機関や医師が行っている場合もあります。

そのため以前にも増してアトピービジネスによるトラブルが問題となっています。

アトピービジネスが蔓延した主な原因としてアトピー性皮膚炎の治療が長期にわたり、脱落者が多いこと、患者が多く儲かる市場であることおよびステロイドに対するマスコミのバッシングが考えられます。

ステロイドを使っていると背が伸びなくなる?

「寝る子は育つ」の言葉どおり、夜はいつまでもかゆくて眠れないと、眠っている間に出るはずの成長ホルモンが出にくくなり、アトピー性皮膚炎の治療をしないこと自体が成長にとってよくない因子となる。

また、ステロイドが怖いからとアトピー性皮膚炎の治療をせず、皮膚から滲出液が出続けてしまうと、蛋白漏出や電解質異常が起こり、入院治療が必要なほど重篤な状態になる場合もある。

さらに、アトピー性皮膚炎の重症患者ではステロイド外用薬治療の有無にかかわらず血清コルチゾール値が低く、十分な治療によりその値が回復するという報告があり、ステロイド外用薬塗布による副腎抑制よりも、アトピー性皮膚炎のコントロールによって副腎機能が回復すると考えられる。

ステロイドを使うと白内障になる?

アトピー性皮膚炎診療ガイドラインによると、ステロイド外用薬が臨床で用いられる前から、アトピー性皮膚炎の合併症として白内障の報告がある。

アトピー性皮膚炎と白内障の合併がはじめて報告されたのは1921年で、1936年にはブランスティングによって、アトピー性皮膚炎のおよそ10%に若年性の白内障が併発することが明らかにされた。

ステロイド外用薬がはじめて臨床応用されたのは1952年で、ステロイド外用薬登場後もアトピー性皮膚炎における白内障合併率に大きな変化はなく、アトピー性白内障は顔面の皮疹の重症度と関連しているため、顔面の皮疹をできるだけ早く軽快させる必要性が指摘されている。

ステロイドは体の中に蓄積される?

よく悪徳業者が「皮膚にステロイドが蓄積してアトピーが悪化している」というようなことをいいます。

しかし、ステロイドが皮膚に蓄積されるのであれば、外用を中止してもしばらくは蓄積されているステロイドが作用して症状は悪化しないはずです。

しかし実際は中止後の症状悪化がしばしば起こることから、ステロイド外用剤は皮膚に蓄積しないと考えられています。

そもそもステロイドは体の中で作られる副腎皮質ホルモンと同じ働きをするので、ステロイドが蓄積されるとすれば、副腎皮質ホルモンも一生蓄積され続けるのでしょうか?これは間違いです。

ステロイドの副作用を心配する患者や家族に、副腎皮質ホルモンとは、もともと自分の身体の副腎から出ているホルモンであることを説明すると、「知りませんでした」と言う人が多く、ステロイド外用薬に対する漠然とした不安感を払拭できることがしばしばある。

ステロイドは健康な人でも、副腎から少し分泌されているコルチゾールとほぼ同じもので、健康な人から分泌されているコルチゾールは1日約20mg(プレドニゾロンに換算で約5mg)です。

治療に用いるステロイド薬は、健康な人で分泌されているよりも多い量を使い、とくに病気になっている組織において、免疫異常や炎症を引き起こす物質で白血球から出てくるサイトカインや、多くの組織で産生されるプロスタグランジンを減少させ、非常に強力な免疫抑制作用、抗アレルギー作用、抗炎症作用を示します。

ステロイドの生理作用・薬理作用・副作用には密接な関係があり、本来の生理作用が過剰に発現する結果、あるいは薬理量になって現れる作用の結果生じるもので、多臓器にわたり多彩です。

ステロイド外用剤による全身的副作用の可能性

ステロイド外用薬は通常の使用量では全身性の副作用はまず起こらない。

ステロイド外用薬による副作用の多くは、塗った局所に対するもので、①毛細血管が拡張する、②皮膚が赤くなる、③皮膚がやや薄くなる(皮膚萎縮)、④にきびの悪化、⑤薬の塗布部分で毛が増える、⑥かぶれ、⑦とびひ、みずむし、ヘルペス、みずいぼがまれに悪化する、⑧傷口の治りが遅くなる、⑨妊娠線のようなものができる(皮膚線条)、などがあげられる。

最も高頻度の皮膚萎縮は可逆性でステロイド外用薬の減量で回復するが、皮膚線条は非可逆性である。

また顔面は皮膚が薄く、ステロイド外用薬の長期使用で赤ら顔(酒さ様皮膚炎)が起こりやすいため、増悪期を脱したら必要に応じて免疫抑制薬のプロトピック軟膏などに切り換える必要がある。

2008年の日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎診療ガイドラインでは、「ベリーストロングクラスのステロイド外用剤の長期使用試験結果より、皮疹の面積にも左右されるが通常の成人患者では十分量である1日5gないし10g程度の初期外用量で開始し、症状に合わせて漸減する使用法であれば、3ヶ月間までの使用では一過性で可逆性の副腎機能抑制は生じうるものの、不可逆性の全身的副作用は生じないとされている。

3ヶ月以上にわたって1日5gないし10g程度のステロイド外用剤を連日継続して使用することはきわめて例外であるが、そのような例では定期的に全身的影響に対する検査を行なう必要があり、ステロイド外用剤の減量を可能ならしめるよう個々の患者に応じて適切な対応が検討されるべきである。

乳幼児、小児においてはその体重に基づき、成人での使用量から換算した量を初期外用量の目安とする」と述べられ、古いデータではあるが、エビデンスとして「密封外用療法では0.12%ベタメタゾン吉草酸エステル軟膏(ストロングクラス)の10gの外用、単純塗布ではその20gの外用が副腎機能抑制を生じ得る1日外用量であると報告されています」と追記されています。

簡単な目安としては、「初期外用量1日10g(ベリーストロング)、20g(ストロング)、3ヶ月まで」ということになります。

しかし、全身の悪化をきたした症例ではFTUに基づく外用量を遵守すれば、1回外用量が20g程度、すなわち1日40gとなり、この限度を超えてしまいますが、短期間で炎症を沈静化せしめ、漸減するならば、不十分な治療を漫然と継続するより、最終的な総外用量は少なくてすむと考えられます。

ステロイド外用剤使用基準

ステロイド外用剤連用で局所性服作用が発生し得る予想期間
ストロンゲスト 4週以上
ベリーストロング 6週以上
ストロング以下 8週以上

連用時の安全期間の目安
顔面、頸部、陰股部、外陰部 全群 2週以内
その他の部位 ストロンゲスト 2週以内
その他の部位 ベリーストロング 3週以内
その他の部位 ストロング以下 4週以内
(ODTで外用の際は2分の1の期間とする)

ステロイド外用剤塗布で副腎皮質機能抑制が発生し得る予想量
ストロンゲスト 成人:10g/日以上 小児:5g/日以上
ベリーストロング 成人:20g/日以上 小児:10g/日以上
ストロング以下 成人:40g/日以上 小児:15g/日以上

安全外用量の目安
ストロンゲスト 成人:5g/日以下 小児:2g/日以下
ベリーストロング 成人:10g/日以下 小児:5g/日以下
ストロング以下 成人:20g/日以下 小児:7g/日以下
(ODTで外用の際は3分の1の量とする)

ステロイド外用剤の至適外用量

ステロイド外用剤の至適外用量について、広範囲皮膚炎で十分な治療効果が得られる必要量はリドメックス軟膏とパンデル軟膏は片腕にはいずれも1日2回の塗布で2.3g、1回では1.15gであることが報告されています。

これから熱傷の受傷面積の算出法を利用して全身に軟膏を塗布する量を算出すると12.5gとなります。

海外においても、全身で12.1g必要であることが報告されています。

FTUを用いた塗布では、全身では1回に塗るのに必要な量は20gとなっており、これらの報告より多くなっています。

ステロイドで皮膚が薄くなる?

ステロイドの副作用に皮膚萎縮という皮膚が薄くなる症状があります。

顔面、陰部、頭皮に現れやすく、特に顔面での副作用が問題になります。

そのため皮膚科専門医は顔面にステロイド外用剤を使用する時は特に注意を払います。

副作用が現れた初期段階でステロイド外用剤を中止し、タクロリムス軟膏(プロトピック)に切り替えるなど適切な処置をとれば早く回復します。

皮膚科専門医はステロイド外用剤による皮膚萎縮や酒さ様皮膚炎(顔の場合はいわゆる赤ら顔)と、それ以外の湿疹を鑑別することができるので、定期的に受診することが副作用の早期発見の意味でも大切です。

ステロイドを使うと皮膚が黒くなる?

ステロイド外用薬の副作用に皮膚が薄くなる、皮膚萎縮というのがあります。

皮膚が薄くなればそれに伴い、紫斑、あざができやすくなる。
かゆみを我慢できずにひっかけば、薄くなった皮膚はダメージを受け、外傷性の色素沈着を起こす可能性はある。
それが黒ずむということはあるかも知れませんが、ステロイドそのものにより皮膚が黒ずむというわけではない。

黒ずみはステロイドの副作用ではなくアトピー性皮膚炎の症状でもあります。炎症後色素沈着といって炎症が長く続いたために起こる現象です。

アトピー性皮膚炎の治療の過程で、皮膚が褐色になることがある。
ステロイド外用薬を使いはじめた後に皮膚が黒くなるので、ステロイド外用薬のせいで黒くなった、と誤解されることがある。

しかし、実際は、ステロイド外用薬は皮膚の色素産生を抑えるため、ステロイド外用薬によって肌の色はむしろ白くなる。美白クリームにステロイドが入っていたなんてこともありました。

ただし、日焼けしたときに皮膚が赤くなって、その炎症が治まると色素沈着が起こって褐色の肌になるように、アトピー性皮膚炎の場合でも、炎症が治まった後に色素沈着が起こる。

つまり、アトピー性皮膚炎の炎症がひどく、赤くなったり、ジュクジュクした汁(滲出液)が出たりしていたのが、ステロイド外用薬治療によって炎症が治まったため皮膚が黒くなるのである。

炎症が治まった後の褐色の肌は、日焼けした褐色の肌がしばらくすると薄くなるように、スキンケアを継続して炎症が起こらないようコントロールすることで、しばらくすると元に戻る。

ステロイドと色素沈着

ステロイド外用剤を使用して皮膚が黒くなることはありません。
アトピーの患者さんが、ステロイドを使って皮膚が黒くなったとの訴えが多い原因は、アトピー性皮膚炎の症状そのものにあります。

日焼けの後に皮膚が黒くなるように、元来人間の皮膚は炎症を起こした後に黒くなる性質があります(これを炎症後色素沈着といいます)。
つまり、アトピーによる炎症が治まった後に色素沈着しているだけで、ステロイドを使おうが使うまいが、黒くなっていたのです。

色素沈着を起こすほど炎症がひどくなる前に早期にステロイドを使ったほうが、皮膚が黒くなるということは無いでしょう。
ステロイド外用剤使用では、逆に皮膚が白くなることはありますが、時間が経過すると元に戻ります。

これはステロイド外用剤に血管収縮作用があることと、皮膚のメラニン色素産生を抑える作用があることによります。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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職業:薬剤師
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