2024年11月20日更新.2,474記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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味オンチになる薬?

薬を飲んで味覚障害?

薬の副作用で味覚障害、味覚異常、つまり味オンチというものがあります。

味覚障害を起こしやすい薬剤には、降圧剤(ACE阻害剤)、利尿剤(チアジド系)、メタルカプターゼ 、グリチロン 、プリンペラン 、メルカゾール 、抗癌剤等があり、薬剤の持つ亜鉛キレート能力が重要な役割を果たしているようです。

薬剤性味覚障害には亜鉛が関与しています。

分子中にチオール基(-SH)やカルボキシル基(-COOH)、アミノ基を持っていて、五員環や六員環キレートを作る構造式を持っている薬剤は、亜鉛とキレートを形成しやすく、キレート結合した体内の亜鉛が体外に過剰排出されることで亜鉛欠乏症をきたす可能があります。

亜鉛は味蕾や嗅粘膜の代謝に深く関っているため、亜鉛が欠乏すると味蕾や嗅粘膜の細胞の再生能力を衰えさせることになり、結果として味覚障害が生じます。

奥さんの手料理が不味くなったのは薬のせいかも知れません。
飲食業に従事している患者さんでは、深刻な副作用とも言えます。
グルメリポーターとかも。

しかし、味覚障害程度では薬を中止することは少ない。
メイラックスの添付文書では、精神神経系の副作用が出た場合、「観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止するなど適切な処置を行うこと。(味覚倒錯を除く)」とご丁寧に味覚障害では中止しなくていいよ、と付け加えられている。その他の副作用、眠気程度でも中止しないでしょうけど。

味覚障害の発症機序

薬剤性味覚障害の発症機序の多くは、薬剤が味覚に必須な微量元素の一つである亜鉛とキレート形成を起こすためと考えられている。

また、もう一つの要因としては、薬剤による唾液分泌の低下が考えられる。

唾液は、味物質が味覚受容器(味蕾)へ反応する際に必要不可欠である。

唾液分泌の低下により味物質の受容体への拡散が阻害され、味覚障害が引き起こされる。

つまり、抗コリン薬などによっても味覚異常が引き起こされる可能性がある。

味覚障害と金属キレート

味覚障害が知られている医薬品は多数ありますが、医薬品をチェックする場合、構造式から「金属キレート作用が存在するかどうか」を推定するとわかりやすいでしょう。
構造式中にチオール基(ーSH)、カルボキシル基(ーCOOH)、アミノ基(ーNH2)を有し、かつ金属と五員環あるいは六員環を形成し安定した構造になる場合、医薬品と金属はキレートを形成する可能性が高くなります。
このような構造の医薬品を長期間服用する場合、亜鉛の排泄促進や吸収阻害により、味覚障害が起こることがあります。
また、味覚障害が知られていない医薬品でも、構造式からその可能性を推定することで、原因の早期発見につながることもあります。

医薬品だけではなく、インスタント食品に含まれる食品添加物(ポリリン酸、フィチン酸)にも亜鉛の吸収を阻害する作用が知られており、食生活にも十分注意が必要です。

薬剤性味覚障害

ペニシラミン(メタルカプターゼ)の特徴的な副作用として、味覚障害がある。

味覚障害は、Zn欠乏の典型的な症状の一つであり、薬剤性味覚障害の原因には、薬剤によるZnやCuのキレート形成やビタミンB6欠乏などが関与すると考えられている。

Znは生体に必須の微量元素であり、ヒトでの必要量は10~15mg/日と、Feの必要量10~18mg/日とほぼ同等である。

ペニシラミンによるZn欠乏の発現機序は明確ではないが、血液中のZnとキレートを形成しZnの吸収を阻害したりするといった機序が考えられている。

そのため、金属とキレートを形成しやすいビスホスホネート系、テトラサイクリン系、甲状腺ホルモン製剤、キノロン系、また遷移金属との親和性の高いセフジニルも、味覚障害を誘発する可能性がある。

実際、テトラサイクリンで味覚障害の出現したラットにおいて、血清Zn値の低下が報告されている。

そのほか、薬剤性味覚障害の原因としてZnキレート作用が指摘されている薬剤には、①ペニシラミンのようにチオール基を有するチアマゾール(メルカゾール)、グルタチオン(タチオン)、カプトプリル(カプトリル)など、②カルボニル基やアミノ基を有するメチルドパ水和物(アルドメット)、レボドパ製剤、フロセミド(ラシックス)など、③カルボニル基を有するキノロン系、NSAIDs、アンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬など、④三級アミン類三環系抗うつ薬のイミプラミン塩酸塩(トフラニール)など、が知られている。

このような官能基を有する他の薬剤でも、Zn欠乏による味覚障害が誘発され得る。

特に高齢者は味覚障害を起こしやすいため、チオール基、カルボニル基、アミノ基やアミンを持つ薬剤を服用している患者が食欲不振を訴えた場合には、味覚障害の有無を確認し、薬剤師の判断によってZnの補給を勧めることも必要である。

Znは、必要量の10倍くらいまでは長期摂取しても問題ない。

臨床の現場では、味覚障害に対し、Zn含有製剤のポラプレジンク(プロマック)を用いることもある。

腎臓病で味オンチになる?

亜鉛の欠乏は、排泄促進と吸収阻害によって起こる。

排泄の増加は、ネフローゼなどの腎障害、肝不全、糖尿病などでみられる。

血中の亜鉛の多くは、アルブミンと結合している。

したがって蛋白尿が続くと、低蛋白血症となり、亜鉛の結合する蛋白量が減少するため、結果的に亜鉛の排泄が進む。

透析患者では、亜鉛の排泄が増加した結果、特に塩味が分からないなどの味覚障害が起こることが知られている。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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