2024年12月18日更新.2,481記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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カルシウムで血圧が上がる?

カルシウムが血圧を上げる?

カルシウム拮抗薬という、血圧を下げる薬があります。

カルシウムというと骨の成分で、牛乳にたくさん含まれているということは知ってますね。
しかし体内では様々な働きをしており、筋肉の収縮にも関わっています。

カルシウム拮抗薬と言われる血圧の薬は、血管の筋肉に働き血管を拡張して血圧を下げる薬です。
じゃあ、カルシウムを摂り過ぎたり、牛乳を多く飲みすぎると血圧が上がるのか?

上がりません。
血液中のカルシウムの濃度は一定に保たれています。

むしろ現代社会ではカルシウムの摂取量が足りないことのほうが問題視されているので、カルシウムは積極的に摂取したほうがいいでしょう。

Ca拮抗薬とカルシウム

カルシウム拮抗薬は、カルシウムチャネル拮抗薬とも言われるように、Ca2+チャネルに作用する薬です。
血管平滑筋細胞、心筋細胞、神経細胞や内分泌細胞などの興奮性細胞には、細胞膜を貫通するCa2+チャネルが存在しています。

細胞内のCa2+濃度は細胞外液のCa2+濃度に比べて約1万分の1という低濃度に維持されており、細胞膜に存在するCa2+チャネルが細胞外からCa2+を選択的に流入させることによって、さまざまな生体反応を引き起こします。

例えば、血管平滑筋においては、Ca2+の流入は血管収縮の引き金となり血圧は上がります。
Ca2+チャネルには数種類のサブタイプがあり、カルシウム拮抗薬はそのうちのL型Ca2+チャネルに結合してCa2+の流入を阻止することで、冠動脈や末梢細小動脈の血管を拡張させて降圧作用や抗狭心症作用をもたらします。

一方、体内へのCa2+の取り込みはほとんどが小腸で促進拡散(濃度勾配に従って輸送される)によって行われ、吸収率はカルシウム摂取量と逆相関します。

カルシウム拮抗薬の作用は細胞膜に存在するCa2+チャネルに限られているため、関与するのは細胞外液から細胞内へのCa2+の移動だけです。
カルシウム拮抗薬の服用が小腸からのカルシウムの吸収に影響を与えることはありません。

また、細胞外液のCa2+濃度は活性型ビタミンD3、副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシトニンの働きにより、厳密に調節されています。
カルシウム剤を取ったからといって細胞外液のCa2+濃度が大きく変化することはないのです。

さらに細胞外液のCa2+濃度は細胞内のCa2+濃度の1万倍も高いため、カルシウム剤の摂取によりCa2+濃度が多少上昇したとしても、それがCa2+チャネルの開閉に影響することはなく、カルシウム拮抗薬の働きを妨げて血圧が上がる心配はありません。

むしろCa2+の摂取が不足している場合には、Ca2+を摂取することで血圧が低下するという報告があります。

日本人のカルシウム摂取量はまだまだ不足気味ですから、食事やサプリメントなどを上手に利用することでカルシウム不足にならないようにすることも必要です。

参考書籍:調剤と情報2008.11

カルシウムが血圧を下げる

カルシウムの摂取による降圧のメカニズムとして考えられているのは以下の通り。

まず、カルシウム補給により血管平滑筋細胞膜が安定化し、膜透過性が低下するため、細胞内へのカルシウム流入が抑制される。
そしてCa2+-ATPaseやNa+/K+-ATPaseの活性が亢進することにより、細胞内のCa2+濃度が減少し、血管平滑筋の弛緩を来す。

また、PTHとビタミンD3の分泌抑制やカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の増加、腎臓からのNa排出の亢進、レニン・アンジオテンシン系の抑制、交感神経系活動の低下も、降圧に寄与すると考えられている。

参考書籍:日経DI2013.12

細胞内のカルシウムイオン濃度

生体内でカルシウムは大部分が骨や歯に存在しますが、一部はカルシウムイオンとして細胞の機能調節に関与しています。
細胞には、「電位依存性カルシウムイオンチャネル」と呼ばれるカルシウムイオンの通路があり、カルシウムイオンがこのチャネルを通って細胞の中へと入っていくと、筋肉が収縮します。
血管にも血管平滑筋という筋肉があり、カルシウムイオンが血管平滑筋の細胞の中に入っていくと、血管が収縮し血圧上昇がもたらされます。
カルシウム桔抗薬は、この筋肉の収縮に関与する電位依存性カルシウムイオンチャネル(L型)を標的とし、血管の筋肉へのカルシウム流入を抑えることにより、血管の筋肉の活動を弱め血管を拡張させ、血圧を低下させる働きがあります。
血管が拡張すると血圧が下がるだけではなく、血液の流れがよくなるという大きなメリットがあります。
血流がよくなると脳や心臓、腎臓といった臓器の保護作用が生まれてきます。
なお、カルシウム桔抗薬はカルシウムが細胞外から細胞内へ移動するのを抑えるだけで、体全体のカルシウムの量を減らしたり増やしたり
するわけではありませんので、カルシウム桔抗薬によってカルシウムの摂取量が影響されることはないと考えられます。

参考書籍:薬効力 ―72の分子標的と薬の作用―

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

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