2024年12月18日更新.2,481記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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モルヒネは増やせば増やすほど効く?

モルヒネは天井知らず

薬の効果は基本的には用量を増やせば、効果は高まると思われがちです。

しかし、薬には天井効果というものがあり、用量を増やしていっても、ある用量(天井)に達すると効果の増加は見られなくなり、副作用のみが増強していきます。

モルヒネには天井効果が無い、といわれています。
天井知らずと呼ばれます。

量の増加によりいくらでも鎮痛効果を強めることができます。

天井効果=有効限界ともいいます。

モルヒネは増やせば増やすほど効くのですね。

モルヒネを急に増やすと危険?

「モルヒネを飲み過ぎないように」と言う医師と、「痛くなったら我慢せずに飲みなさい」と言う医師がいる。

「どっちが正解?」と混乱しますが、基本的には我慢せずに飲んでいい。

モルヒネの過剰摂取で心配なのは呼吸抑制であるが、呼吸抑制については耐性ができるという。
徐々に増やせば耐性が出来てくるが、急に高用量を投与すれば死に至ることもある。
そのため徐々に増やすということが大切であって、使いすぎる傾向にある患者については「飲み過ぎないように」、使うのをためらう患者に対しては「我慢しないで」と使い分ける。

オピオイドの適正投与量

医療従事者にもオピオイドの精神依存・中毒・耐性について先入観、偏見、認識不足があり、オピオイドの使用や増量を躊躇するケースがあるという。

依存とは、脳の報酬システムにおいてドパミンが放出され「快」に傾いた状態であることが知られている。痛みがない状態は「快」と「不快」がほぼ平衡状態にある。一方、痛みがある状態は「不快」が勝ってバランスが崩れている状態となるため、この状態でオピオイドを投与すると結果的に均衡を取り戻すことになり、依存には至らない。

オピオイドの使用にあたっては用量を調節しながら、均衡を保つ状態、つまり、適正投与量を決めていく。これは常に痛みの強さに対し調整を行っていくことを意味しており、タイトレーションと呼ばれている。投与量が足りないと痛みが残り、逆に多すぎると眠気が起こる。

オピオイドによる呼吸抑制

呼吸数が10回/分未満であればオピオイド過量投与による呼吸抑制の可能性もあるので、オピオイドの減量を検討する。

一般的には、鎮痛に用いる適切量では呼吸抑制はまれである。
モルヒネの効果は少量から増量すると、まず鎮痛効果、便秘作用、ときには同時に催吐作用が現れる。もっと多い量になると催眠効果、ついで呼吸抑制が現れる。

したがって、鎮痛効果が得られる経口投与量では呼吸抑制が起こることは皆無に近いため、ワンショットの注射のような危険はない。傾眠は、過量投与を示す最初の症状と考えてよい。少量で鎮痛効果が得られる患者では、比較的少量でも傾眠その他の作用が得られるので、投与初期には注意が必要である。

臨床的にはモルヒネ開始後睡眠時に呼吸回数が8回/分以上あれば、問題はない。モルヒネ開始後睡眠時に呼吸回数が6回/分以下となった場合には、覚醒を促したり、場合によってはモルヒネの適量投与も含め、投与量を再検討する必要がある。

オピオイドの呼吸抑制は、呼吸苦がなく呼吸数が減少する。呼吸したくてもできないように抑制されているのではない。

オピオイド投与中の患者で、睡眠中には呼吸数が10回/min未満になることはよくある現象。治療は不要のことが多い。

モルヒネによる呼吸抑制は非常に少ないが、初期投与量を多くしたり、坐薬を使うと現れやすい。(初回モルヒネ坐薬30mgは危険である)ただしモルヒネを使用している間は代謝も低下するため呼吸数が減少しても、気道が確保されて肺に病変がなければガス交換は十分に保たれていることが多い。

モルヒネ常用量でも呼吸抑制

オピオイドはがん性疼痛に対して高い鎮痛効果が期待できますが、その一方で、呼吸抑制などの致死的な副作用や、吐き気や便秘のようなQOLの低下につながる症状の発現が常に問題となります。

オピオイドによる副作用の多くはその作用により発現するもので、用量依存性があります。

そのうち便秘や吐き気などの症状は、鎮痛効果が発現する用量以下で発現するため、オピオイドの使用に当たっては、これらの症状が発現することを前提に副作用対策を行うことが必要となります。

薬剤群基本薬代替薬
3中等度から高度の強さの痛みに用いるオピオイド(強オピオイド鎮痛薬)モルヒネメサドン
オキシコドン
ペチジン
ブプレノルフィン
フェンタニル
2軽度から中等度の強さの痛みに用いるオピオイド(弱オピオイド鎮痛薬)コデインジヒドロコデイン
あへん末
トラマドール
1非オピオイドアスピリン
アセトアミノフェン
イブプロフェン
インドメタシン
ナプロキセン
ジクロフェナク
フルルビプロフェン
薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

1 件のコメント

  • tanaka masashi のコメント
         

    モルヒネに天井効果がないと武田先生がWHOに記載しており、論文もあるとしていますが、現在まで質の高い論文はありません。痛みに対して有効である限り増量は可能ですが、天井効果がないといってもそれはやはりある程度の限られた量での話であり、それを上限がないとする考えに対してはやはり疑問があります。日本緩和医療学会理事長にも確認しました。
    そろそろこう言った考えに対しては、再考する時期に入っていると考えます。
    houshi8@gmail.com
    緩和ケア暫定指導医、泌尿器科指導医、専門医、透析専門医、ドック認定医
    病院長

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