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万能系サプリメントは本当に効くのか?
公開. 更新. 投稿者:健康食品/OTC.この記事は約4分17秒で読めます.
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なぜ“万能系サプリメント”が人気なのか?

「免疫に効く」「美容にもいい」「疲労回復まで」──そんな万能感あふれるサプリメントが、近年ますます注目を集めています。
中でも「ラクトフェリン」や「NMN」、「プロポリス」といった成分は、テレビや雑誌、ネット広告でもしばしば紹介され、「何にでも効く」という印象を与えることが少なくありません。
しかし、果たしてそれは事実なのでしょうか?
万能系サプリメントとは何か?
まず、「万能系サプリメント」とは明確な分類ではなく、以下のような特徴を持つサプリメントを便宜上そう呼んでいます。
・複数の健康効果がうたわれている(例:免疫、美容、疲労回復、抗炎症など)
・自然由来・安心・安全とアピールされることが多い
・健康食品やサプリの中でも“健康への包括的効果”が期待されている
・SNSや口コミでも評判になりやすい
このようなサプリは「病気ではないけど体調が気になる」「薬に頼りたくないけど何かしたい」という人のニーズにマッチしやすく、市場でも高い人気を誇ります。
代表的な“万能系サプリメント”一覧とその主張
ここでは、よく「万能サプリ」として名前が挙がる代表的な成分を紹介します。
成分 | 主なうたわれる効能 |
---|---|
ラクトフェリン | 免疫調整、抗菌、抗ウイルス、腸内環境、美容、がん予防 |
NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド) | 老化抑制、疲労回復、代謝改善、認知機能維持 |
プロポリス | 抗菌、抗炎症、免疫強化、口腔・鼻腔・肌の健康 |
乳酸菌・ビフィズス菌 | 腸内環境改善、免疫、アレルギー予防、メンタル安定 |
グルタチオン | 抗酸化、解毒、美白、肝機能サポート、疲労軽減 |
アスタキサンチン | 強力な抗酸化、眼精疲労、アンチエイジング、肌の健康 |
クルクミン(ウコン) | 抗炎症、抗酸化、肝臓保護、脳機能改善 |
どの成分も「○○に効く」だけではなく、複数の領域に作用があるとされており、その広がりが“万能感”を醸し出します。
科学的根拠はあるのか?──成分別の検証
● ラクトフェリン
母乳に多く含まれるタンパク質。抗菌・抗ウイルス作用や免疫賦活作用が報告されています。
ただしヒトでの臨床試験は限られており、がん予防やリウマチ改善に明確なエビデンスはない。
● NMN
長寿遺伝子(サーチュイン)に関わるとされ、マウス実験で老化抑制効果が示唆。
しかし、ヒトでの長期使用の安全性や効果はまだ検証段階。
● プロポリス
抗菌・抗炎症成分を豊富に含む。口内炎や咽頭痛に市販ののどスプレーとしても使用されています。
ただし、個体差が大きく、アレルギーの報告もある。
● グルタチオン
体内にある重要な抗酸化物質。肝疾患や白玉注射(美白目的)に医療現場で使われることも。
経口摂取では腸で分解されるため、期待通りの吸収が難しい場合もある。
● 乳酸菌・ビフィズス菌
腸内フローラの改善によって免疫調整作用があるとされる。
菌種ごとに作用が異なるため、「とりあえず摂れば効く」というわけではない。
効いたと感じるのはなぜか?プラセボ効果と体験談の真実
「このサプリを飲んでから風邪をひかなくなった」
「肌の調子がすごく良くなった」
こうした体験談はサプリの購入動機として非常に強力です。ですが、注意すべきは次の点です。
プラセボ効果(偽薬効果)
・「効くと思って飲む」ことで、本当に体調が良くなることがある
・脳内ホルモン(エンドルフィン、ドーパミン)などが関与
生活習慣の改善との混同
・サプリを飲むとき、多くの人は同時に食事や睡眠も見直す傾向がある
・実際の体調改善がサプリによるものなのか、因果関係は断定できない
悪影響に気づきにくい
・「効いている感じがするから続けていたけど、実は血糖値が上がっていた」など、好転反応と混同しやすい
医薬品との違いと注意点
万能系サプリメントは「医薬品ではない」ため、以下のような特徴があります。
項目 | 医薬品 | サプリメント |
---|---|---|
効果・効能 | 厚労省が認可、明確な用量・用法がある | 明確な効果効能はうたえない |
試験 | 臨床試験あり | 動物や小規模試験、または未実施 |
製造 | GMP基準で厳格管理 | 食品としての製造基準(粗雑なものも) |
保険適用 | あり(医師の処方) | なし(自己負担) |
この違いを理解せず、“医薬品の代わり”として使うのは極めて危険です。
栄養は万病に効く
「万病に効く薬はないが、栄養は万病に効く」——この言葉は、日本静脈経腸栄養学会の初代理事長であり、臨床栄養の発展に尽力された小越章平先生の名言として知られています。確かに、薬は特定の症状や疾患に対しては強力に作用しますが、すべての病気に有効な“万能薬”というものは存在しません。一方で、適切な栄養は、私たちの身体の恒常性を保ち、免疫機能や代謝、回復力を支える土台として、あらゆる病気の予防や治療を間接的にサポートする力を持っています。
たとえば、ビタミンやミネラルの欠乏は、疲労感、集中力の低下、感染症へのかかりやすさなど、幅広い不調の原因になります。また、慢性疾患の背景にも、長年にわたる栄養バランスの乱れが潜んでいることも少なくありません。だからこそ、薬に頼る前に、まずは体の基盤である「栄養状態」を見直すことが重要だといえるのです。
ただし、「栄養が万病に効く」という言葉を、何か一つのサプリメントで健康がすべて解決するという意味に捉えてはいけません。重要なのは、食事を中心とした総合的な栄養管理であり、あくまで補助的にサプリメントを取り入れるという視点が求められます。
薬剤師の視点:サプリメントとの正しい付き合い方
薬局で患者さんからよく聞かれる質問があります。
「このサプリ、飲んでもいいですか?」
「本当に効くんですか?」
そのたびに私はこう答えます。
「目的が明確なら、うまく使えば良いと思います。
でも“何にでも効きそう”という理由なら、一度立ち止まって考えましょう。」
万能感に惹かれる気持ちは理解できます。しかし、その裏には多くの過大評価や誤解が潜んでいます。
ポイント
・体調や疾患に対して、何を目的に摂取するのか明確にすること
・医薬品との併用は必ず医師・薬剤師に相談
・「信じる」のではなく「見極める」姿勢が大切です
まとめ:本当に効くかは“目的と体質次第”
万能系サプリメントは、確かに魅力的です。
しかし、「何にでも効く」は「何に対しても不確か」という裏返しでもあります。
サプリメントは魔法の薬ではありません。
効果がある成分もありますが、すべての人に当てはまるとは限りません。
自分の目的、体質、生活習慣に照らし合わせて選ぶことが大切です。
「信じて飲む」のではなく、「調べて選ぶ」。
その積み重ねこそが、本当に健康を守る第一歩なのです。