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寝る子は育つ?ノンレム睡眠と成長ホルモンの関係
公開. 更新. 投稿者:睡眠障害.この記事は約4分58秒で読めます.
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寝る子は本当に育つのか?

「寝る子は育つ」――昔からよく聞く言葉ですが、これは単なる迷信ではなく、科学的な裏づけのある話です。子どもがよく寝るのには理由があり、そこには成長ホルモンの分泌、脳の発達、記憶の定着など、実に多くの生理的な意味が込められています。
この記事では、「睡眠の質と量が子どもの成長にどう関わっているのか?」を中心に、レム睡眠とノンレム睡眠の違いや役割、成長ホルモンとの関係、記憶の整理などを含めて、わかりやすく解説していきます。
胎児の睡眠は“レム睡眠”だらけ?
実は、胎児の段階ではほぼ1日中「レム睡眠」の状態にあることがわかっています。胎児の脳はまだ未熟で、起きて何かを感じたり考えたりする機能はほとんどありません。その代わり、神経回路網を発達させるための活動が活発に行われているのです。
レム睡眠は「Rapid Eye Movement(急速眼球運動)」の略で、まぶたの下で目がキョロキョロと動くことから名付けられました。夢を見るときの睡眠状態として知られていますが、実は脳が活発に働いている時間帯でもあります。胎児にとってのレム睡眠は、脳内ネットワークの構築、いわば“配線工事”の時間なのです。
新生児の睡眠はどうなっている?
新生児の1日はその約3分の2が睡眠です。しかも、その中でレム睡眠とノンレム睡眠の比率はほぼ半々。これは、胎児から外の世界に出た赤ちゃんが、新たな環境に適応しつつ、脳の発達をさらに進めるための時間でもあるからです。
生まれたばかりの赤ちゃんがすぐに母乳を吸ったり、泣いて意思表示をしたりできるのは、胎児の段階でレム睡眠によって神経回路がある程度整備されていたからです。その整備は、出生後もしばらく継続されます。
ノンレム睡眠とは何か?
レム睡眠と対をなすのが「ノンレム睡眠」です。これは深い眠り=熟睡の時間で、脳波を測ると活動が非常にゆっくりになることがわかります。
ノンレム睡眠は4段階に分類され、特に第3・第4段階の深いノンレム睡眠は、大脳を休ませたり修復したりするために重要な時間とされています。これが最も多く現れるのが、幼児期から学童期にかけてであり、高齢になるとその量は大幅に減ってしまいます。
「寝る子は育つ」は本当だった
◆成長ホルモンと睡眠の深い関係:
「寝る子は育つ」と言われる最大の理由は、成長ホルモンの分泌にあります。成長ホルモンは、睡眠とは無関係に日中でも分泌されるホルモンですが、最も多く分泌されるのは、入眠後最初の深いノンレム睡眠の時間帯です。
この成長ホルモンは、子どもの骨や筋肉の成長を促すだけでなく、成人では代謝促進、細胞修復、免疫機能の改善などにも関与しています。つまり、大人にとっても熟睡は健康維持に欠かせないのです。
ちなみに、よく「夜10時〜2時が“お肌のゴールデンタイム”」などと言われますが、これは時間帯というよりも“眠り始めてから最初の3時間”にしっかり熟睡していることが大事なのです。何時に寝るかより、いかに深く連続して眠れるかが鍵というわけです。
睡眠と免疫力の関係
睡眠中には、成長ホルモンだけでなく免疫細胞を活性化する因子も分泌されます。特に、熟睡中には免疫力が回復するため、風邪をひいたときなどは「よく寝ると治りが早い」というのはまさに科学的にも正しいのです。
このことからも、子どもに限らず、大人も「しっかり寝る」ことの大切さがわかります。
記憶の定着と学習にも効果あり
睡眠は単なる休息の時間ではなく、脳がその日得た情報を整理し、記憶として定着させる時間でもあります。特に、学習した後すぐに寝ると記憶が強化されるというデータもあります。
ここで重要なのがレム睡眠です。レム睡眠時には、脳が感情や記憶を整理し、重要な情報を保持する一方で、不必要な情報を消去すると考えられています。また、ピアノ演奏やスポーツのような「運動記憶」も、睡眠によって定着が促されるとされています。
睡眠のリズムは年齢とともに変化する
成長に伴い、睡眠時間やその構成も変化していきます。
◆年齢と睡眠時間:
・胎児期:ほぼ1日中、レム睡眠が大半
・新生児:約16時間、レムとノンレム半々
・幼児期:約10~13時間、熟睡(深いノンレム)が多い
・思春期:約8~10時間、睡眠量は成人とほぼ同じに
・成人:約7~8時間、ノンレム(浅め)が中心に
・高齢者:約5~6時間、熟睡が少なくなる
このように、レム睡眠は子どもの脳を育て、ノンレム睡眠は大人の脳を守り、回復させる役割を担うのです。
子どもに「早く寝なさい」は必要?
「早く寝なさい!」と親に言われた経験のある人は多いでしょう。でも実際には、何時に寝るかよりも、質の良い睡眠がとれているかが重要です。特に、入眠後の最初の3時間を深く眠ることが成長ホルモンの分泌や脳の回復には大切なのです。
もちろん、生活リズムとして「早寝早起き」を心がけることは有益ですが、それ以上に、毎日の睡眠の質を高める工夫が求められます。
まとめ:眠りは成長の土台である
「寝る子は育つ」という言葉は、単なる昔話ではありません。睡眠は成長ホルモンの分泌、脳の発達、記憶の整理、免疫力の回復といった、子どもに限らずすべての人間の健康を支える重要な役割を果たしています。
・レム睡眠:脳を育て、記憶を定着させる
・ノンレム睡眠:脳を休め、成長ホルモンや免疫を回復させる
・入眠後3時間の熟睡がカギ
「よく寝て、よく育つ」は、科学的に見てもまさに“本当のこと”だったのです。