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PPIの屯服?
公開. 更新. 投稿者:消化性潰瘍/逆流性食道炎.この記事は約2分13秒で読めます.
5,579 ビュー. カテゴリ:PPIのオンデマンド療法
PPIは原則として連日投与しますが、欧米ではPPIまたはH2ブロッカーを症状が出たときに屯用する「オンデマンド療法」なるものが行われているようです。
オンデマンドとは「要求に応じて」という意味です。
胃食道逆流症で、いったん症状が消失したのち、胸やけなどの症状が再発した場合に、PPIやH2ブロッカーの服薬を再開し、症状が消失すれば服薬を終了するもので、必要に応じて服薬できる治療法です。
添付文書上の用法は連日投与だが、軽症の場合は症状の発現時にPPIを頓用するオンデマンド療法を実施する例が増えている。
胃カメラの代わりにPPIテスト?
GERDやLPRDを診断するには通常、酸逆流がどの程度起こっているか調べる24時間食道内pHモニタリングや、食道や下咽頭・喉頭の炎症所見を調べる内視鏡検査が行われる。
しかし、これらの検査は患者に肉体的負担を強いる上、コストも高い。
このため最近、欧米を中心に「PPIテスト」と呼ばれる診断法が広く行われるようになってきた。
PPIテストは、GERDやLPRDが疑われる患者に対して常用量のPPIを1~2週間程度投与することで酸逆流を抑制し、症状が軽快するか否かを見る方法である。
症状が改善すればPPIを継続投与し、徐々に減量するステップダウン療法が推奨されている。
PPIテストの感度、特異度は24時間食道内pHモニタリングに匹敵し、患者の身体的・経済的負担も少ない。
ただし、PPIは胃・食道悪性疾患の症状を隠ぺいする恐れがあるので注意が必要である。
わが国の保険診療下では、GERDの診断がつかない段階でPPI常用量を用いることはできない。
PPIの作用機序
胃酸の主成分である塩酸は、胃底腺の壁細胞から分泌されます。
壁細胞の細胞内では、炭酸脱水素酵素により、水と二酸化炭素から水素イオン(プロトン)が生じます。
この水素イオンが壁細胞の細胞膜に存在する酵素H+,K+-ATPase(プロトンポンプ)により、細胞内から細胞外へ汲み出されます。
壁細胞の細胞膜には、CFTRという塩素イオンの通過孔(c-AMP依存性Cl-チャネル)もあり、ここから塩素イオンが細胞外に出てきます。
プロトンポンプによって汲み出された水素イオンとCFTRを通過した塩素イオンが出会い塩酸が生成します。
PPIは、その名のとおり、水素イオンを汲み出すプロトンポンプの駆動を止め、塩酸の生成を阻害する薬です。
PPIは、酸性下で活性体に変換されるプロドラックです。
PPIは壁細胞の分泌細管に分布した後、酸により活性体であるスルフェンアミド体に変換されます。
スルフェンアミド体は、分泌細管の膜に存在するプロトンポンプのシステインのSH基とジスルフィド結合し、プロトンポンプの働きを止めます。
PPIは、プロトンポンプと共有結合しているために、血中半減期(約1時間)が過ぎても塩酸の分泌阻害効果が持続します。
プロトンポンプは、毎日約4分の1が新しく細胞内で合成されています。
そのため、PPIの塩酸の分泌抑制作用が十分に発揮されるまでには、数日かかります。
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