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シベノールで低血糖?
公開. 更新. 投稿者:不整脈.この記事は約2分29秒で読めます.
7,160 ビュー. カテゴリ:不整脈の薬で低血糖?
シベノールで低血糖を起こすのは何で?
不整脈の薬のシベノール(シベンゾリンコハク酸塩)には低血糖の副作用がある。
抗不整脈薬と低血糖の副作用はあまり結びつかない。
シベノールはSU剤のように、血中濃度依存的に膵臓を刺激してインスリン分泌を促進するらしい。
リスモダンやピメノールなどの抗不整脈薬にも低血糖の副作用がある。
カリウムチャネルと低血糖
不整脈の薬にはカリウムチャネルを遮断するものが多いですが、SU剤の作用機序もカリウムチャネルを遮断することによる。
血糖調節のメカニズムは、まず、ブドウ糖が膵臓のランゲルハンス島β細胞内に取り込まれた後、代謝されてATPが産生され、ATP/ADP比が増大し、ATP感受性K+チャネルが閉じ、膵β細胞膜の脱分極が起こる。
それに伴い電位依存性Ca2+チャネルが開き、Ca2+が流入してCa2+濃度が上昇する。
Ca2+はインスリンの小胞の細胞膜との融合を促進し、インスリン分泌が促進され血糖値が下がる。
SU剤の作用機序は、膵臓のランゲルハンス島β細胞のSU受容体のSUR1サブユニットに結合しATP依存性Kチャネルを抑制することによってインスリン分泌を促進させる。
シベンゾリンによる低血糖の機序は、膵臓ランゲルハンス島β細胞のATP感受性カリウムチャネルにシベンゾリンが取りこまれ、グルコースを摂取したときのようにカリウムチャネルが閉じて、活動電位依存性カルシウムチャネルが開く。カルシウムイオンはβ細胞内に流入すると、カルシウム貯蔵部位(小胞体)に貯蔵される。大量のカルシウムイオンが流入すると、インスリン分泌が刺激され、インスリンが過剰に分泌されて血糖が低下する。
薬剤 | VW分類 | イオンチャネル | 受容体 | ポンプ | 臨床効果 | 心電図所見 | ||||||||||||
Na | Ca | K | If | α | β | M2 | A1 | Na-K ATPase | 左室機能 | 洞調律 | 心外性 | PR | QRS | JT | ||||
Fast | Med | Slow | ||||||||||||||||
リドカイン | Ib | L | → | → | M | ↓ | ||||||||||||
メキシレチン | Ib | L | → | → | M | ↓ | ||||||||||||
プロカインアミド | Ia | HA | M | ↓ | → | H | ↑ | ↑ | ↑ | |||||||||
ジソピラミド | Ia | HA | M | L | ↓ | → | M | ↑↓ | ↑ | ↑ | ||||||||
キニジン | Ia | HA | M | L | L | → | ↑ | M | ↑↓ | ↑ | ↑ | |||||||
プロパフェノン | Ic | HA | M | ↓ | ↓ | L | ↑ | ↑ | ||||||||||
アプリンジン | Ib | HI | L | L | L | → | → | M | ↑ | ↑ | → | |||||||
シベンゾリン | Ia | HA | L | M | L | ↓ | → | L | ↑ | ↑ | → | |||||||
ピルメノール | Ia | HA | M | L | ↓ | ↑ | L | ↑ | ↑ | ↑→ | ||||||||
フレカイニド | Ic | HA | L | ↓ | → | L | ↑ | ↑ | ||||||||||
ピルシカイニド | Ic | HA | ↓ | → | L | ↑ | ↑ | |||||||||||
ベプリジル | IV | L | H | M | → | ↓ | L | ↑ | ||||||||||
ベラパミル | IV | L | H | M | ↓ | ↓ | L | ↑ | ||||||||||
ジルチアゼム | IV | M | ↓ | ↓ | L | ↑ | ||||||||||||
ソタロール | III | H | H | ↓ | ↓ | L | ↑ | ↑ | ||||||||||
アミオダロン | III | L | L | H | M | M | → | ↓ | H | ↑ | ↑ | |||||||
ニフェカラント | III | H | → | → | L | ↑ | ||||||||||||
ナドロール | II | H | ↓ | ↓ | L | ↑ | ||||||||||||
プロプラノロール | II | L | H | ↓ | ↓ | L | ↑ | |||||||||||
アトロピン | V | H | → | ↑ | M | ↓ | ||||||||||||
ATP | V | G | ? | ↓ | L | ↑ | ||||||||||||
ジゴキシン | V | G | H | ↑ | ↓ | H | ↑ | ↓ |
カリウムチャネル遮断薬といえば、アンカロンやソタコールなどのクラスⅢ群である。
しかしアンカロンの副作用に低血糖はない。ソタコールでは逆に、「本剤のβ遮断作用により高血糖があらわれることがある」と書かれている。
第Ⅰ群(Naチャネル遮断薬)でKチャネル遮断作用も強いのは、プロカインアミド、ジソピラミド、キニジン、シベンゾリン、ピルメノール、あたり。
これらのうちアミサリン(プロカインアミド)、硫酸キニジンには低血糖の副作用記載がなく、ピメノール(ピルメノール)、シベノール(シベンゾリン)、リスモダン(ジソピラミド)には低血糖の副作用記載があった。
Kチャネル遮断だけで低血糖の説明はできないようだ。
SU剤の心毒性
糖尿病治療薬のSU剤は、膵臓β細胞のKATPチャネルを阻害し細胞を脱分極させ、インスリン分泌を促す作用があります。
スルホニルウレア骨格だけでなくベンザミド骨格を持つグリベンクラミド(ダオニール/オイグルコン)、グリメピリド(アマリール)はSU受容体のSUR1だけでなく、SUR2にも結合する。グリクラジド(グリミクロン)はベンザミド骨格を持たないのでSUR2受容体には結合しない。
膵臓β細胞のSU受容体はSUR1です。SUR2は心筋、骨格筋、平滑筋、血管平滑筋に分布しています。
つまり、グリベンクラミドは心臓のKATPチャネルを阻害し、虚血プレコンディショニングを阻害する可能性が指摘されています。
また、シベノール(シベンゾリン)やリスモダン(ジソピラミド)といったクラスⅠの抗不整脈薬で、低血糖の副作用があるが、これも膵β細胞KATPチャネルの抑制によるものと言われている。
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