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プラリアは関節リウマチに効く?骨粗鬆症の薬が骨びらんを防ぐ仕組み
公開. 更新. 投稿者: 156 ビュー. カテゴリ:骨粗鬆症.この記事は約6分34秒で読めます.
プラリアと関節リウマチ

プラリア(一般名:デノスマブ)は、骨粗鬆症治療薬としてよく知られている薬です。
しかし、プラリアの効能・効果を見ると、
- 骨粗鬆症
- 関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制
の2つが記載されています。
「骨粗鬆症の薬なのに、なぜ関節リウマチに使うの?」
と思うかもしれません。
その理由を理解するカギになるのが、破骨細胞とRANKLです。
関節リウマチにプラリアが効く?
まず注意したいのが、プラリアは一般的な意味で「関節リウマチに効く薬」というわけではないことです。
正確な適応は、
「関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制」
です。
つまり、
関節リウマチの炎症そのものを抑える薬ではなく、炎症によって関節の骨が削られていくのを抑える薬
という位置付けです。
ここを区別することが重要です。
関節リウマチではなぜ骨が削られる?
関節リウマチでは、自己免疫反応などを背景として関節の滑膜に慢性的な炎症が起こります。
炎症が続くと滑膜が増殖し、関節軟骨や骨が徐々に障害されます。
この「骨が削られる」現象に深く関係しているのが破骨細胞です。
骨は一度作られたらそのまま残っているわけではありません。
古くなった骨を破骨細胞が吸収し、骨芽細胞が新しい骨を作るという「骨リモデリング」が繰り返されています。
ところが関節リウマチでは、炎症が起きている関節周辺で破骨細胞が過剰に形成・活性化されます。
その結果、
関節周囲の骨が破骨細胞によって削られる
↓
骨びらんが形成される
という現象が起こります。
RANKLが破骨細胞を作る
では、破骨細胞はどうやって活性化されるのでしょうか。
重要なのが、
RANKL(RANK ligand)
というタンパク質です。
破骨細胞の前駆細胞にはRANKという受容体があります。
RANKLがRANKに結合すると、
RANKL
↓
RANK
↓
破骨細胞の分化
↓
破骨細胞の活性化
↓
骨吸収
という流れが起こります。
つまりRANKLは、破骨細胞に対する「骨を吸収する破骨細胞になれ」というシグナルの一つと考えると分かりやすいでしょう。
関節リウマチでは関節局所でRANKLが増加し、この経路を介して破骨細胞による骨破壊が促進されます。
プラリアはRANKLをブロックする
プラリアの有効成分であるデノスマブは、抗RANKLモノクローナル抗体です。
デノスマブがRANKLに結合すると、RANKLがRANKに結合できなくなります。
つまり、
RANKL
↓ ← プラリアがここを遮断
RANK
↓
破骨細胞の形成・活性化
↓
骨吸収
という仕組みです。
デノスマブによって破骨細胞の形成、活性化、生存が抑えられ、その結果として骨吸収が抑制されます。
この作用は、骨粗鬆症でも関節リウマチでも基本的には同じです。
骨粗鬆症と関節リウマチは同じ仕組み?
病気そのものはまったく異なります。
しかし、
「破骨細胞が骨を吸収する」
という部分には共通点があります。
骨粗鬆症では、
骨吸収>骨形成
↓
全身の骨量が減少
↓
骨折しやすくなる
ことが問題になります。
一方、関節リウマチでは、
関節炎
↓
RANKL増加
↓
破骨細胞活性化
↓
関節局所の骨吸収
↓
骨びらん
という現象が問題になります。
そこで、どちらもRANKLをデノスマブで阻害することによって、破骨細胞による骨吸収を抑えられるわけです。
言い換えれば、
骨粗鬆症では「骨全体が減っていく」のを防ぎ、関節リウマチでは「関節の骨が削られていく」のを防ぐ。
同じ作用機序を、異なる病態に利用しています。
プラリアを使っても関節の痛みは良くならない?
ここは非常に重要です。
プラリアの添付文書には、関節リウマチ患者を対象とした臨床試験において、
骨びらんの進行を抑制する効果は認められた
一方で、
関節症状や身体機能を改善する効果は認められていない
ことが記載されています。
さらに、関節裂隙の狭小化を抑制する効果も認められていません。
つまり、
「プラリアを打てば関節リウマチの炎症が治まって、関節の腫れや痛みも良くなる」
という薬ではありません。
プラリアが狙っているのは、あくまで骨びらんの進行です。
抗リウマチ薬の代わりにはならない
そのため、プラリアはメトトレキサートなどの抗リウマチ薬の代わりにはなりません。
添付文書でも、
メトトレキサート等の抗炎症作用を有する抗リウマチ薬と併用すること
とされています。
イメージとしては、
抗リウマチ薬
→ 関節炎そのものを抑える
プラリア
→ 炎症によって活性化された破骨細胞を抑え、骨が削られるのを防ぐ
という役割分担です。
そのためプラリアは、関節リウマチ治療において抗リウマチ薬を補助する位置付けになります。
どんな関節リウマチ患者に使う?
プラリアは、関節リウマチ患者なら誰にでも追加する薬ではありません。
添付文書では、
メトトレキサート等の抗炎症作用を有する抗リウマチ薬による適切な治療を行っても、画像検査で骨びらんの進行が認められる場合
に使用することとされています。
つまり、
抗リウマチ薬で治療している
↓
それでもX線などで骨びらんが進んでいる
↓
骨破壊を抑える目的でプラリアを追加
という使い方です。
関節リウマチでは3か月に1回になることもある
骨粗鬆症に対するプラリアは、通常、
デノスマブ60mgを6か月に1回皮下注射
します。
関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制についても、通常は60mgを6か月に1回投与します。
ただし、6か月に1回の投与でも骨びらんの進行が認められる場合には、抗リウマチ薬の増量など、より適切な関節リウマチ治療への変更を検討したうえで、ベネフィットとリスクを勘案し、
60mgを3か月に1回
の投与を考慮できます。
骨粗鬆症では基本的に「半年に1回」というイメージが強いので、処方・投与歴を見る際には注意したいところです。
ランマークではダメなの?
デノスマブと聞くと、ランマークを思い浮かべることもあります。
プラリアとランマークは、どちらも有効成分はデノスマブです。
したがって、どちらもRANKLを阻害して破骨細胞を抑制するという基本的な薬理作用は共通しています。
しかし、製剤の適応と用量は異なります。
プラリアは60mg製剤で、「関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制」という適応があります。
一方、ランマークは120mg製剤で、関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制という適応はありません。
「同じデノスマブだからランマークでもいい」ということにはならないので注意が必要です。
まとめ
プラリアは「骨粗鬆症の薬」という印象が強いですが、関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制にも使用されます。
一見するとまったく違う病気に同じ薬が使われているように見えますが、両者には、
RANKL
↓
RANK
↓
破骨細胞
↓
骨吸収
という共通した経路があります。
プラリア(デノスマブ)はRANKLを阻害することで破骨細胞の形成や活性化を抑えます。
骨粗鬆症では、この作用によって全身的な骨量減少を抑えます。
一方、関節リウマチでは、
関節炎 → RANKL増加 → 破骨細胞活性化 → 骨びらん
という経路の後半部分を遮断し、関節周囲の骨が削られるのを防ぎます。
そのため、プラリアは「関節リウマチの炎症を治療する薬」というよりも、
「関節リウマチによって骨が壊されるのを防ぐ薬」
と考えると、その位置付けが分かりやすいでしょう。



