2026年2月22日更新.2,758記事.

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アセトアミノフェンが血糖値を上げる?持続血糖測定器への影響

アセトアミノフェンは血糖値を上げる?――CGMが高く表示することがある

風邪による発熱、頭痛、歯痛、関節痛など、日常生活で頻繁に使われる解熱鎮痛薬の代表が「アセトアミノフェン」です。市販薬から医療用医薬品まで幅広く使用されており、小児から高齢者まで使いやすい薬として知られています。

糖尿病を持つ人にとっても、アセトアミノフェンは比較的安全に使える鎮痛薬として位置づけられてきました。しかし近年、インターネット上では、

「アセトアミノフェンを飲むと血糖値が上がる」
「CGMやリブレで高血糖になる」

といった情報を目にすることが増えています。

では本当に、アセトアミノフェンは血糖値を上げる薬なのでしょうか。

アセトアミノフェンとはどんな薬か

アセトアミノフェンは、解熱・鎮痛を目的とした薬で、主に以下のような場面で使用されます。

・発熱時の解熱
・頭痛、歯痛、筋肉痛の鎮痛
・風邪症状の緩和
・小児の発熱対応

NSAIDs(ロキソプロフェン、イブプロフェンなど)と比べて、胃腸障害や腎機能への影響が少ないことが特徴で、持病のある人や高齢者にも処方されやすい薬です。

糖尿病患者に対しても、NSAIDsより安全性が高いとされ、第一選択として用いられることも少なくありません。

結論:アセトアミノフェンは血糖値を「直接」上げる薬ではない

まず結論から述べると、

→通常の用量で使用する限り、アセトアミノフェンが血糖値を直接大きく上げるという明確な証拠はありません。

糖尿病治療の現場でも、アセトアミノフェンが「血糖上昇作用をもつ薬」として扱われることは基本的にありません。

血糖値を明確に上昇させやすい薬としては、

・ステロイド
・一部の利尿薬
・交感神経刺激薬

などが知られていますが、アセトアミノフェンはこれらとは性質が異なります。

では、なぜ「血糖が上がる」という噂が広まったのでしょうか。

背景①:持続血糖測定器(CGM)への干渉問題

この問題の中心にあるのが、持続血糖測定器(CGM)やフラッシュグルコースモニタリング(FGM)への影響です。

CGMは、皮下に装着したセンサーで「間質液中のグルコース濃度」を測定し、血糖値を推定します。多くの機種では、電気化学反応を利用したセンサーが用いられています。

この仕組みでは、グルコース以外の物質が電極で反応すると、誤った信号が発生することがあります。

アセトアミノフェンは、その代表的な「干渉物質」のひとつとして、以前から知られてきました。

背景②:過去のCGMでは実際に誤高値が問題になっていた

2000年代から2010年代前半の初期CGMでは、アセトアミノフェンを服用すると、

・実際より高い血糖値が表示される
・10~30mg/dL以上ずれることもある

といった報告がありました。

このため、「アセトアミノフェン=CGMを狂わせる」というイメージが広まりました。

しかし、現在のCGMは当時とは設計が大きく異なっています。

日本の添付文書から見る現在の評価

フリースタイルリブレ系
日本の添付文書では、フリースタイルリブレに関して、アセトアミノフェンによる干渉について明確な注意喚起は記載されていません。

医療機器の添付文書では、臨床上無視できないリスクがある場合、原則として記載が義務付けられています。

その記載がないということは、

→少なくとも臨床的に問題となるレベルの影響は確認されていない

と解釈してよいと考えられます。

Dexcom G6・G7系
Dexcomの日本向け添付文書では、以下のような記載があります。

・遮断層によりアセトアミノフェンの影響を抑制している
・臨床試験で平均最大干渉は約5mg/dL程度

これは、技術的に干渉対策が組み込まれていることを示しています。

5mg/dL程度の誤差は、生理的変動や測定誤差の範囲内であり、実用上ほとんど問題にならない水準です。

Medtronic Guardian系
一方、Medtronicのガーディアン系CGMでは、

「アセトアミノフェンを含む薬剤で誤って高値を示す可能性がある」

と明記されています。

これは、設計上、他機種ほど干渉対策が強化されていない可能性を示しています。

つまり、現在でも機種によって差が存在しているのが実情です。

なぜ機種差が残るのか

CGMメーカーごとに、

・電極の素材
・酵素の種類
・遮断膜の構造
・信号処理アルゴリズム

が異なります。

この違いが、薬剤干渉の有無を左右しています。

最新機種では干渉防止膜やフィルター構造が高度化していますが、すべてのメーカーが同じ方式を採用しているわけではありません。

血糖が上がったように見えるもう一つの理由:体調不良そのもの

アセトアミノフェンが使われる場面は、多くが「体調不良時」です。

発熱や感染症の際には、

・アドレナリン
・コルチゾール
・グルカゴン

といった血糖上昇ホルモンが分泌されます。

さらに、

・食欲低下
・運動量低下
・脱水

も重なります。

その結果、薬とは無関係に血糖値が上昇しやすくなります。

これが「薬のせいで上がった」と誤解される原因にもなっています。

本当に怖いのは「誤った治療判断」

アセトアミノフェンの問題点は、血糖上昇そのものよりも、

→CGMの誤表示を信じてインスリンを過剰投与してしまうこと

にあります。

たとえば、

・CGM:250mg/dL
・実際:150mg/dL

という状態で追加インスリンを打つと、低血糖のリスクが高まります。

特にMedtronic系使用者では注意が必要です。

実践的な対処法

① 体感と数値が合わないときは指先測定
以下のような場合は、SMBG(指先血糖測定)で確認しましょう。

・低血糖症状があるのに高値表示
・急激な不自然な上昇
・薬服用直後の異常値

② 用量を守る
高用量・連用は、わずかな干渉を強める可能性があります。また肝障害リスクも高まります。

③ 機種ごとの添付文書を確認
「CGM全般で同じ」ではありません。必ず自分の機種の情報を確認することが重要です。

よくある誤解

「アセトアミノフェンは血糖を上げる薬」
→ 正確ではありません。多くは測定干渉や体調不良の影響です。

「最新機種なら完全に安全」
→ 多くは改善されていますが、機種差は残っています。

「市販薬だから危険」
→ 用量を守れば安全性は高い薬です。

まとめ:日本の添付文書から見た最終評価

現在の日本の医療機器添付文書を踏まえると、次のように整理できます。

・アセトアミノフェンは血糖を直接上げる薬ではない
・多くの最新CGMでは干渉は大幅に低減されている
・一部機種では現在も注意喚起がある
・問題は誤表示による治療判断ミス
・体調不良そのものも血糖変動の原因になる

2025年のヒヤリハット報告の中にも、持続血糖モニタリングを行っている患者が医師から「カロナールの服用は避けた方が良い」と指導されているケースがあり、疑義照会によりカロナールからロキソプロフェンに変更となっていた。
使用しているCGMの機種、医師からどのような説明を受けているか、を確認し、不安を煽らないような対応を心がける必要がある。

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