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ハイムリック法は危険?
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目次
ハイムリック法は危険?やってはいけない応急処置なのか

「ハイムリック法は危ないから、やらないほうがいいらしい」
「下手にやると骨が折れるって聞いた」
近年、このような話を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
テレビやネット、SNSなどでは、ハイムリック法の危険性が強調されることもあり、「本当にやっていいの?」「むしろやらないほうがいいのでは?」と不安になる人も少なくありません。
しかし結論から言えば、ハイムリック法は“危険だから禁止されている方法”ではありません。正しく使えば、命を救う非常に重要な応急処置です。
・ハイムリック法とは何か
・なぜ「危険」と言われるのか
・実際のリスクと有効性
・正しい使いどころ
・医療・救急現場の考え方
について、勉強していきます。
ハイムリック法とは何か?
ハイムリック法(腹部突き上げ法)は、のどに異物が詰まって窒息している人を助けるための応急処置です。
考案したのは、アメリカの医師である ヘンリー・ハイムリック です。
この方法は1970年代に発表され、現在では世界中で窒息対応の標準手技として普及しています。
仕組みはとてもシンプル
ハイムリック法は、お腹を圧迫することで肺の中の空気を一気に押し出し、その勢いで異物を吹き飛ばす方法です。
つまり、
→「人工的に強い咳を起こさせる技術」
と考えると理解しやすいでしょう。
ハイムリック法の基本的なやり方
大人・1歳以上の子どもに対して行う基本手順は次の通りです。
・窒息している人の背後に立つ
・片手でこぶしを作る
・みぞおちの少し下に当てる
・もう片手で包む
・後ろ上方向に強く突き上げる
これを異物が出るまで繰り返します。
重要なのは、「遠慮せずにしっかり力を入れること」です。
なぜ「危険」と言われるようになったのか?
では、なぜハイムリック法は「危険」と言われるのでしょうか。
その理由は、大きく3つあります。
① 実際にケガをするケースがあるから
ハイムリック法は、かなり強い力で腹部を圧迫します。
そのため、以下のような合併症が報告されています。
・肋骨骨折
・内臓損傷
・腹腔内出血
・胃破裂(まれ)
・嘔吐・誤嚥
特に高齢者や骨粗鬆症の人では、骨折のリスクが高くなります。
こうした事例が報道され、「危険な方法」という印象が広がりました。
② 誤った使い方が多いから
実際に問題になるのは、間違った場面で行われるケースです。
よくある誤用には、次のようなものがあります。
・咳が出ているのに実施
・軽くむせただけで実施
・ふざけて行う
・子どもに過剰な力で行う
・乳児に腹部突き上げをする
これらは本来やるべきでない使い方です。
こうした事故が「ハイムリックは危険」という評判につながっています。
③ SNS・ネット情報の影響
近年は、
「ハイムリックで内臓破裂」
「やったら訴えられる」
「掃除機のほうが安全」
など、極端な情報が拡散されやすい環境になっています。
正確な医学的背景が省略されたまま広まることで、誤解が生まれています。
それでも「やるべき」とされている理由
ここで最も重要なのは、窒息の危険性です。
・窒息は数分で命を奪う
・人間は酸素が供給されないと、
・約3分:意識障害
・約4〜6分:脳に不可逆障害
・それ以降:死亡リスク急上昇
となります。
つまり、のどが完全に詰まった状態は「即・生命危機」です。
骨折や内臓損傷よりも、はるかに危険なのです。
医学的な考え方
医療の世界では、常に次の視点で判断します。
「命と後遺症、どちらが重いか」
窒息の場合:
・何もしない → 死亡の可能性大
・ハイムリック → ケガの可能性あり
この場合、選択肢は明らかです。
「多少のケガをしても、命を救うほうが優先」
これが医療現場の基本姿勢です。
公式ガイドラインの立場
日本・海外の救急ガイドラインでは、共通して次のように示されています。
・重度窒息には腹部突き上げを行う
・危険だから禁止とはされていない
・正しい適応が重要
つまり、
「条件付きで強く推奨されている」
方法なのです。
正しい判断基準を覚えよう
ハイムリック法を使うかどうかは、次の1点で判断できます。
判断の基準
「声・咳が出るか?」
| 状態 | 対応 |
|---|---|
| 咳ができる | 見守る |
| 声も咳も出ない | ハイムリック |
| 意識なし | CPR+119 |
これだけ覚えておけば十分です。
高齢者や餅詰まりの場合は?
日本では特に、餅による窒息事故が多発します。
餅は、
・粘着性が強い
・体温で柔らかくなる
・気道に密着する
という特徴があります。
そのため、「吸う」より「押し出す」方法が有効です。
掃除機が話題になることもありますが、救命法としては推奨されていません。
餅詰まりでも、原則はハイムリック法が第一選択です。
法的な問題は大丈夫?
「やってケガさせたら訴えられない?」と心配する人もいます。
結論としては、善意の救命行為は原則として守られます。
日本では、緊急時に善意で行った応急処置については、責任を問われにくい仕組みがあります。
むしろ、
「何もしなかった結果、死亡した」
場合のほうが問題になる可能性が高いのが現実です。
医療・救急現場の本音
実際の現場では、次のように考えられています。
・迷っている時間が一番危険
・やらなかった後悔は大きい
・骨折は治るが、死亡は取り返せない
そのため、
「ためらわず、正しくやる」
ことが最も重要です。
ハイムリック法が向いていないケース
注意すべき例外もあります。
・妊婦・高度肥満者
この場合は、腹部ではなく胸部圧迫法を行います。
・乳児(1歳未満)
腹部突き上げは禁止です。背部叩打と胸部圧迫を行います。
これらは事前に知っておくと安心です。
まとめ:ハイムリック法は「最後の切り札」
最後に、本記事のポイントをまとめます。
✔ ハイムリック法には確かにリスクがある
✔ しかし窒息は即死レベルの危険
✔ 正しく使えば命を救える
✔ 「声が出ない」が最大のサイン
✔ 危険なのは“誤用”であって“技術そのもの”ではない
ハイムリック法は、乱用するものではありません。
しかし、本当に必要な場面では、迷わず使うべき救命技術です。
いざという時に大切な人の命を守るためにも、正しい知識を持っておくことが何より重要なのです。




