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心臓の手術後に声が出ない?
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目次
心臓の手術後に声が出ない?

心臓の手術を受けたあと、
「声がかすれるようになった」
「ほとんど声が出なくなった」
「電話で話すのがつらい」
「長く話すとすぐ疲れる」
といった“声のトラブル”に悩まされる方は、決して少なくありません。
本人にとっては命に関わる大きな手術を乗り越えたあとに、思いがけず「声」という日常生活に欠かせない機能が損なわれることで、大きな不安を感じてしまうこともあります。
「このまま治らないのでは?」
「手術に失敗したのでは?」
「もう元の声には戻らないの?」
と心配になる方も多いでしょう。
しかし、実際には、心臓手術後の声の障害は多くの場合、回復が期待できるものです。正しい知識を持つことで、過度に不安になる必要はありません。
・なぜ心臓手術後に声が出なくなるのか
・どんな人に起こりやすいのか
・どのくらいで治るのか
・病院に相談すべきタイミング
・治療やリハビリの方法
について、勉強していきます。
心臓手術後に起こる「声の異常」とは?
まず、心臓の手術後に見られる声の異常には、次のようなタイプがあります。
よくある症状
・声がかすれる(嗄声:させい)
・声が小さくなる
・息が漏れるような声になる
・長く話せない
・声が途切れやすい
・高い声が出ない
・のどが疲れやすい
これらはすべて、「声帯がうまく動いていない」ことが原因で起こります。
つまり、問題の中心は声帯とそれを動かす神経にあります。
最大の原因:反回神経の障害
心臓手術後に声が出なくなる原因として、最も重要なのが反回神経(はんかいしんけい)の障害です。
反回神経とは?
反回神経は、声帯を動かすための神経です。
この神経は、脳から出て、
・首を通り
・胸の中に入り
・心臓の近くを回り込み
・再び喉に戻る
という、非常に長く複雑な経路を通っています。
特に左側の反回神経は大動脈のすぐ近くを走っているため、心臓や大血管の手術で影響を受けやすいのです。
なぜ障害されるのか?
手術中に反回神経は、
・引っ張られる
・圧迫される
・熱や器具の影響を受ける
・血流が一時的に低下する
・手術後のむくみで圧迫される
といった影響を受けることがあります。
これにより神経の働きが低下すると、声帯が動かなくなり、「声帯麻痺」という状態になります。
声帯麻痺とは?
声帯麻痺とは、片方または両方の声帯が正常に動かなくなる状態です。
多くの場合は、
→片側だけが動かなくなる「片側性声帯麻痺」
です。
この場合、
・声が弱い
・息もれ声になる
・疲れやすい
といった症状が出ます。
原因②:人工呼吸器(気管挿管)の影響
心臓手術では、ほぼ必ず全身麻酔が使われ、人工呼吸器のチューブを喉に入れます。
これを「気管挿管(きかんそうかん)」といいます。
このチューブによって、
・声帯がこすれる
・粘膜が傷つく
・炎症が起こる
・一時的に腫れる
といった影響が生じることがあります。
その結果、術後しばらく声がかすれたり、出にくくなったりします。
このタイプの声の異常は、
→多くの場合、数日~数週間で自然に改善します。
神経障害とは違い、比較的軽症です。
原因③:手術後のむくみ・炎症
心臓手術後は、体全体に水分がたまりやすくなります。
・点滴
・炎症反応
・心機能の変化
などにより、顔や喉、声帯にもむくみが出ることがあります。
声帯がむくむと振動しにくくなり、声が出にくくなります。
これも多くの場合は、
→体調が回復するにつれて自然に改善します。
どんな手術で起こりやすい?
特に声の障害が起こりやすいのは、次のような手術です。
起こりやすい手術例
・大動脈手術
・大動脈瘤手術
・大動脈弁手術
・僧帽弁手術
・心臓バイパス手術
・先天性心疾患手術
特に大動脈周辺を扱う手術では、反回神経への影響が出やすくなります。
回復するの?治る可能性は?
多くの患者さんが最も気になるのが、
「この声は元に戻るのか?」
という点でしょう。
結論から言えば、
→多くのケースで回復が期待できます。
回復の目安
| 原因 | 回復の可能性 |
|---|---|
| 挿管・炎症 | 非常に高い |
| 軽い神経障害 | 高い |
| 強い神経損傷 | 低い |
神経が一時的に弱っているだけなら、数か月~1年ほどで回復することも珍しくありません。
神経は非常にゆっくり再生するため、回復に時間がかかるのが特徴です。
こんな場合は早めに受診を
次のような症状がある場合は、耳鼻咽喉科の受診をおすすめします。
要注意サイン
・1か月以上改善しない
・完全に声が出ない
・食事でむせる
・咳き込みやすい
・呼吸が苦しい
・誤嚥を繰り返す
これらは、声帯麻痺が強く出ている可能性があります。
診断はどうやって行う?
耳鼻科では主に、
・喉頭ファイバー検査
・内視鏡検査
によって、声帯の動きを直接確認します。
細いカメラを鼻から入れて観察する検査で、短時間で終わります。
これにより、
・声帯が動いているか
・どの程度麻痺しているか
・炎症の有無
がわかります。
治療・リハビリの方法
① 経過観察
軽症の場合は、まず経過観察になります。
「時間が最大の治療」
となるケースも多いです。
② 音声リハビリ
言語聴覚士による音声訓練で、
・正しい発声法
・呼吸法
・声の出し方
を練習します。
これだけで大きく改善することもあります。
③ 注入療法・手術
重症の場合は、
・声帯への注入治療
・声帯内方移動術
などの外科的治療が行われることもあります。
最近は低侵襲な治療も増えています。
心理的な影響にも注意
声が出ない状態は、身体的な問題だけでなく、
人と話すのが怖くなる
外出が減る
気分が落ち込む
自信を失う
など、精神面にも大きな影響を与えます。
「たかが声」と思われがちですが、生活の質(QOL)に直結する重要な問題です。
遠慮せず、医師や家族に相談することが大切です。
薬剤師・医療者の視点から
医療従事者の立場では、
「心臓手術後は声が出にくくなることがある」
という情報を事前に患者さんに伝えておくことが、非常に重要です。
事前に知っていれば、不安は大きく軽減されます。
術後に訴えがあった場合も、
・よくある合併症であること
・多くは回復すること
・専門科で診てもらえること
を丁寧に説明することで、安心につながります。
まとめ
心臓手術後に声が出なくなる主な原因は、
① 反回神経の障害
② 気管挿管の刺激
③ むくみ・炎症
です。
特に多いのは、
→「心臓の近くを通る神経への影響」
によるものです。
多くの場合、
・時間の経過
・リハビリ
・必要に応じた治療
によって改善が期待できます。
長く続く場合は、早めに耳鼻科を受診しましょう。




