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リーマスとNSAIDs併用でリチウム中毒?
公開. 更新. 投稿者:うつ病.この記事は約4分36秒で読めます.
4,968 ビュー. カテゴリ:リーマスとNSAIDsの併用
炭酸リチウム(リーマス)との併用によりリチウム中毒を起こす薬として、NSAIDs、利尿剤、ACE阻害薬、AⅡ拮抗薬、メトロニダゾールなどがある。
特にボルタレンなどのNSAIDsは腎障害を惹起する可能性の高い薬物群であることが知られている。NSAIDs使用時に腎臓から消失する薬物の腎排泄が低下して血液中濃度の上昇から有害作用が惹起することがある。
リチウムとNSAIDsとの併用によりリチウムの血中濃度が上昇し、リチウム中毒を呈することがあり、併用時には注意する必要があるとされている。
リチウムとインドメタシン、ピロキシカム、イブプロフェン、ケトプロフェン、メフェナム酸、ナプロキセン、フェニルブタゾンなどの併用によるリチウムの副作用の発現などが報告されている。
一方、スリンダクは血清中リチウム濃度を減弱させるか変化を与えないと報告されている。
またアスピリン、サリチル酸ナトリウムはリチウムとの相互作用はないといわれている。
NSAIDsはプロスタグランジン合成阻害作用をもち、薬理作用としては、抗炎症作用とともにプロスタグランジン系を介して、血管収縮作用を有している。
つまり、腎臓でプロスタグランジン合成を阻害して、腎血流の低下、糸球体濾過速度・血管の透過性を変化させたり、腎の水分および電解質(ナトリウムやカリウム)の代謝に影響する可能性がある。
これらの作用は結果としてリチウムクリアランスの低下を招き、血清からの尿中へのリチウム排泄を減らし、血清リチウム濃度を上昇させることになる。
さらにリチウムの投与そのものが腎プロスタグランジンの増加状態をもたらし、その際のNSAIDs併用が、少量でも腎機能に大きな影響を与えるという可能性も指摘されている。
しかし、アスピリンは腎のプロスタグランジン合成をかなりの程度阻害するが血清中リチウム濃度に影響を与えないことから説明のつかない部分も存在する。
リチウム中毒と水分補給
リチウムは吸収後無機イオンとなるため代謝を受けず、大部分は腎から排泄される。
血中リチウムの有効濃度は0.3~1.2mEq/Lであり、1.5mEq/Lを超えるとリチウム中毒を起こす危険性が高まる。主なリチウム中毒の症状として、初期段階では食欲低下や、消化器症状(嘔気、嘔吐、下痢など)、中枢神経症状、(振戦、傾眠、錯乱など)、運動機能症状(運動障害、運動失調など)、全身症状(発熱、発汗など)がみられ、中毒が進行すると全身けいれん、ミオクローヌスなどが現れる。
リチウムはナトリウムと同じ経路で細胞内に取り込まれることから、血中のナトリウム濃度が低いと、尿中に排泄されたリチウムの再吸収が亢進し、血中リチウム濃度が上昇する可能性がある。したがって、リチウム中毒を予防するために水分および塩分を適宜補給するようにすることが大切である。
リーマス服用中コーヒーを飲んじゃダメ?
報告数は非常に少ないのですが、カフェインが炭酸リチウムの吸収を阻害することが報告されています。
服用中にカフェインの摂取量が変わるとその吸収量の変化で思わぬ副作用やリチウム中毒になる危険性もあるので注意を喚起してください。
カフェインフリーの生活が望ましいのですが、それが無理な場合は「日常で摂取するカフェインの入った飲食物の量をなるべく一定にする」よう伝えます。
途中で急にカフェインの摂取量が減ると、吸収を阻害するものがなくなり、炭酸リチウムの吸収が進んでしまうことも考えられます。
リチウム中毒
一般的に躁病治療時の血清リチウム濃度は0.6~1.2mEq/L、急性躁病治療には0.8~1.5mEq/L、鬱病治療にはこれらよりやや低めの値が勧められている。
中毒濃度はそれより高い2mEq/Lであるが、治療濃度と中毒濃度との差が小さいので、使用の際には注意が必要とされる薬剤である。
リチウムの「使用上の注意」は、リチウムとNSAIDsとの併用はリチウムの副作用が起こる可能性があり注意するように指示されている。
リチウム中毒の初期症状としては、嘔気、嘔吐、粗大振戦、筋攣縮、運動障害、脱力、発汗などがある。
さらに中毒が進行すると頭痛、耳鳴、眼振、意識障害、痙攣発作、血圧低下、心電図異常、昏睡などの症状が現れることがある。
リチウムとNSAIDsとの併用でこれらの諸症状が現れた場合には、リチウムの投与量の減少、あるいはリチウム、NSAIDsを中止する必要があると考えられる。
リチウム中毒は正常域でも発現
リーマスの副作用で気を付けるリチウム中毒。
中毒の初期症状は、発熱、おう吐、錯乱など。食事や水分量が不足すると起きやすく、他の薬が影響することもある。
一般的なリチウム血中濃度治療域0.6~1.2mEq/L範囲内でも中毒症状をきたしている患者がいる。
血中濃度が正常域でも、中毒症状を呈していれば、減量した方が良いのかも知れません。
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