2024年12月18日更新.2,481記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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クロルプロマジン1000㎎は危険?

クロルプロマジン換算量って?

クロルプロマジン(コントミン、ウインタミン)1日1000㎎は多い。
そんなことは一目瞭然ですが、抗精神病薬の多剤併用では、それに匹敵するような力価になることがある。

そんなときに用いられるのがクロルプロマジン換算量。

クロルプロマジン換算とは、抗精神病薬の投与量が適正かどうか、おおよその目安を知るための計算です。換算の基準となっているのがクロルプロマジン(ウインタミン、コントミン)なので、このように呼ばれています。

クロルプロマジン換算値とは、クロルプロマジン以外の抗精神病薬を、同じ抗精神病効果を発揮するクロルプロマジン(CP)の用量に変換して総量を把握する考え方で、「CP換算値=薬の処方量(1日量)÷等価換算値×100」で算出する。

分類分類商品名一般名等価換算値
定型フェノチアジン系コントミン/ウインタミンクロルプロマジン塩酸塩100
フルメジンフルフェナジンマレイン酸塩2
トリラホンペルフェナジン10
ノバミンプロクロルペラジンマレイン酸塩15
ニューレプチルプロペリシアジン20
ヒルナミン/レボトミンレボメプロマジンマレイン酸塩100
ブチロフェノン系インプロメンブロムペリドール2
トロペロンチミペロン1.3
スピロピタンスピペロン1
セレネースハロペリドール2
プロピタンピパンペロン塩酸塩200
ベンズアミド系エミレースネモナプリド4.5
バルネチールスルトプリド塩酸塩200
ドグマチールスルピリド200
グラマリールチアプリド塩酸塩100
チエピン系ロドピンゾテピン66
非定型MARTAクロザリルクロザピン50
セロクエル/ビブレッソクエチアピン66
ジプレキサオランザピン2.5
シクレストアセナピンマレイン酸塩1.5
SDAリスパダールリスペリドン1
インヴェガパリペリドン1.5
ロナセンブロナンセリン4
ルーランペロスピロン塩酸塩水和物8
DPAエビリファイアリピプラゾール4
その他クレミンモサプラミン塩酸塩33
クロフェクトンクロカプラミン塩酸塩水和物40
オーラップピモジド4
ホーリットオキシペルチン8

患者が多剤併用している抗精神病薬のCP換算値の合計が、300~600mg/日であれば適正使用量であるが、これを超えると薬剤性パーキンソニズム(DIP:drug-induced parkinsonism)などの副作用の発症リスクが高くなると考えられている。

錐体外路症状が出現しない範囲はクロルプロマジン換算600mg程度までであり、それをこえると副作用が出てしまうとされている。最大量使用でも800mg程度が常識とされている。

特に、1000㎎/日を超えた場合には大量投与となり、適正使用量と治療効果は変わらないだけでなく、副作用のリスクが増大するとされている。

統合失調症の代表的な症状である精神運動興奮が著しい場合など、やむを得ずCP換算値が1000㎎以上となる場合もあるが、慢性期や副作用が疑われる場合などには、処方医に疑義照会して減量するように伝えるべきである。

CP換算

1960年代以降さまざまな抗精神病症状を示す薬剤が発見され、臨床現場で用いられるようになりましたが、各薬剤の用量と効果の関係は各薬剤ごとに違っています。

用量は数mg単位のものから数百mgのものまでと差があり、許容範囲の幅も違います。これでは新しく登場する抗精神病薬が、どのような効果を示すのかというイメージがつかみにくく、また最大の効果を得る用量に至るまでに相当な時間を要してしまうことになります。

そこで、長さの共通の尺度として「メートル原器」があるように、基準となる「原器」の抗精神病薬が必要でした。

最初に抗精神病薬として用いられたクロルプロマジンは1950年代に登場した治療薬です。それまで精神科治療では抑えることのできなかった精神疾患における幻覚・妄想などの病的体験に対して著明な効果を示す画期的な治療薬でした。

次のハロペリドール(フェノチアジン系)が登場するまでには時間を要し、その間は統合失調症の治療にはクロルプロマジンがほぼ100%処方されるような時代がありました。そのため、陽性症状(ドーパミン受容体をどれだけ遮断しやすいか)への効果の共通尺度となる「原器」をクロルプロマジンにし、各抗精神病薬による薬物治療の「感覚的効果」を知るための数値化として「CP換算」が用いられるようになったのです。

ちなみにCP換算とは、クロルプロマジン100mgと抗精神病薬効果が等しくなる各薬剤の用量のことです。抗精神病薬には、すべてCP換算された値がつけられています。

ただ、このCP換算は諸外国の研究や教科書にはほとんど記述が見られず、日本特有のものです。日本の精神科薬物療法が、長年、世界に類を見ない多剤併用を標準とした特殊な薬物療法を行ってきたため、総量がいったいどれくらいなのかを計算する必要があったからでしょう。

ただ、CP換算はその薬剤が「ドーパミン受容体をどれだけ遮断しやすいか」を見るためのものであり。「精神疾患」への治療効果を示すものではありません。

そうした意味からいうと、非定型抗精神病薬はその薬理特性がドーパミン遮断だけに特化するものではないことから、CP換算の有用性は低いと考えられます。

今後、多剤併用の薬物療法が行われなくなれば、このCP換算という基準値も必要なくなっていくと思われます。もしこれからCP換算を使用するとすれば、非定型抗精神病薬への切り替えを行っていく際に、それまでの定型抗精神病薬のドーパミン受容体遮断率がどれくらいだったのかを知る、おおよその目安として用いるということはあるでしょう。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

1 件のコメント

  • 匿名 のコメント
         

    僭越ながらコメントさせて頂きます。

    「ちなみにCP換算とは、クロルプロマジン100mgと抗精神病薬効果が等しくなる各薬剤の用量のことです。」の部分ですが、こちらにおける「CP換算」という言葉は、正しくは「等価用量」のことではないでしょうか?

    クロルプロマジンの等価用量が100mgであることから見ても明らかだと思います。

    大変失礼いたしました。どうかご教授願います。

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