2025年6月30日更新.2,505記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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セルニルトンで花粉症が悪化する?花粉由来の薬

前立腺肥大症の治療薬「セルニルトン」とは?

セルニルトン(Cernilton)は、前立腺肥大症や慢性前立腺炎に用いられる植物由来の医薬品です。長年にわたり、排尿障害の改善や前立腺の炎症抑制に一定の効果があるとして使用されています。

本剤は比較的副作用が少なく、高齢者にも使用しやすい薬として評価されています。しかし、その成分をよく見ると、「花粉」が原料であることがわかります。

花粉と聞くと、春のスギ花粉をはじめとする「花粉症」を思い浮かべる方も多いはず。では、セルニルトンを花粉症の方が服用しても問題ないのでしょうか?

セルニルトンの有効成分:セルニチンポーレンエキスとは?

セルニルトンの主成分は「セルニチンポーレンエキス」です。1錠中に63mg含まれ、以下の2つの抽出物から構成されています:

・セルニチンT-60(60mg):水抽出エキス(粉末状)
・セルニチンGBX(3mg):有機溶媒抽出エキス(軟エキス)

これらは、複数の植物の花粉を微生物で消化し、水または有機溶媒で抽出したものです。つまり、「花粉をもとに作った薬」といえます。

花粉の原材料一覧(セルニルトン由来)

セルニルトンに含まれる花粉には、以下の植物が使用されています:

・チモシイ(オオアワガエリ)
・トウモロコシ
・ライムギ
・ヘーゼル(ハシバミ)
・ネコヤナギ
・ハコヤナギ
・フランスギク(ヒナギクの一種)
・マツ

これらは主にヨーロッパ原産の植物ですが、すべて「花粉」という点で共通しています。

花粉症患者にとって気になる「花粉由来」という事実

一般的に「植物由来の成分」と聞くと、安心・安全というイメージがあります。しかし「花粉由来」となると、花粉症に悩まされている方にとっては一気に不安な存在になるかもしれません。

花粉症とは、花粉を抗原(アレルゲン)として免疫が過剰に反応し、くしゃみ・鼻水・目のかゆみなどの症状を起こすアレルギー反応です。

以下は、代表的な花粉症の原因植物です:

花粉症の原因植物
・スギ:日本の花粉症の代表格
・ヒノキ:スギと並ぶ春のアレルゲン
・ブタクサ:秋の花粉症原因
・イネ科植物:チモシイなどを含む
・シラカバ:北日本に多い
・ハンノキ:シラカバと交差抗原性あり
・ネズ・アカマツ:針葉樹系

セルニルトンに使われているチモシイやマツの花粉は、上記と交差抗原性を持つ可能性があり、理論上は花粉症を悪化させるリスクがあります。

花粉症の人がセルニルトンを使っても大丈夫?

では実際に、セルニルトンを服用したことで花粉症のような症状が出ることはあるのでしょうか?

医学的な報告例は少ないが、ゼロではない
セルニルトンは何十年も前から使われている薬ですが、「セルニルトン服用による花粉症の悪化」という明確な副作用報告はごくわずかです。とはいえ、添付文書には「過敏症」の項目として発疹・かゆみ・蕁麻疹・呼吸困難などの記載があります。

つまり、

・花粉に対して重度のアレルギー歴がある
・特定の植物(特にイネ科やマツ属)に対してアレルギーがある
・他の花粉エキス製品でアレルギー症状を起こしたことがある

という人は、慎重な使用または医師・薬剤師への事前相談が推奨されます。

自然由来の薬は他にもある?アレルギーの視点から考える

セルニルトンのように、自然由来の薬剤は「安心」と思われがちですが、実際にはアレルギーのリスクが高くなる可能性があるというデメリットもあります。

たとえば:
・プロポリス:蜂の巣由来だが、植物樹脂成分が多く、アレルギー反応を起こす人も
・ローヤルゼリー:健康食品で人気だが、喘息発作を引き起こすことも
・漢方薬:複数の生薬を組み合わせているため、特定の植物に反応する人にとってはリスクあり

花粉エキス製剤は、成分が多岐にわたるため、どの成分がアレルギーを引き起こしているか特定しにくいという点でも慎重な対応が必要です。

まとめ:セルニルトンは安全?花粉症患者が知っておきたいポイント

セルニルトンは植物花粉から抽出された天然由来成分を含む医薬品であり、前立腺肥大症や慢性前立腺炎に効果があります。しかし、含有されている花粉が花粉症のアレルゲンと重なる可能性があるため、重度の花粉症患者や、特定の植物にアレルギーを持つ方は注意が必要です。

最後に、以下のような方は特に注意しましょう:
・花粉症の症状が薬の服用で悪化した経験がある
・マツ、チモシイ、ライムギなどに強いアレルギーがある
・漢方や健康食品で過去にアレルギー症状を起こしたことがある

植物由来だからといって「安全」と決めつけず、アレルギーリスクという視点を持つことが、患者と薬剤師双方に求められるリテラシーです。

1 件のコメント

  • みつ のコメント
         

    鼻炎アレルギー持ちの僕には、セルニルトンと、鼻炎薬の並行は、最悪だと、今、納得しました。

    セルニルトンを飲むと、いつもくしゃみが出て、花粉症の症状が出るから、変だなと思っていました。
    調べたら、マツと、ライ麦が入っているなんて、絶対無理です。

    調べて良かった。

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