2024年11月20日更新.2,474記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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抗血栓薬は脳出血のリスクを高める?

血液サラサラで脳出血

アスピリンのような血液を固まらせないようにする薬は、脳梗塞や心筋梗塞の予防に役立ちます。

しかしその一方で、血液が固まらないため、出血のリスクは高まります。
そのため、同じ脳卒中でも、脳梗塞の発症は抑えられますが、脳出血は逆に発症しやすくなります。

日本人は、欧米人に比べて脳血管疾患の頻度が高く、また脳出血のリスクも高い傾向があるとする指摘もあり、血栓形成抑制と出血のリスクが表裏一体となっているアスピリンの有用性が、人種差を越えてそのまま当てはめてよいのかといった疑問も残されています。
アスピリンに代表される抗血小板薬は、虚血性心疾患の1次予防ガイドラインや心筋梗塞2次予防に関するガイドラインにも記載されているように、虚血性心疾患の基本的な治療薬です。

心筋梗塞の急性期の心血管死亡の減少、心筋梗塞や脳梗塞の再発予防、危険因子を多数持つ症例での心血管疾患の発症予防などの効果があります。

半面、頭蓋内出血のリスクが1.6倍増加するとの報告もあり、血小板数が少ない症例や高齢者、高血圧がコントロールされていない状態などでは、臨床経過に注意しながら使います。

出血予防には血圧管理が重要?

出血を予防するためには厳格な血圧管理が必要となってきます。

抗血栓療法中の患者を対象に、頭蓋内もしくは頭蓋外出血の発現と発現前までの血圧変化の関係を検討した試験では、頭蓋内出血を発現した患者の発現直前の血圧は登録時よりも上昇しており、抗血栓療法中の血圧上昇は頭蓋内出血の発現と有意に相関することが示されています。

また、抗凝固薬と抗血小板薬を併用するとそれぞれ単剤投与に比べて頭蓋内出血のリスクが増大することもわかっているので、併用が必要な場合にはさらなる注意が必要です。

よって血圧管理もしっかり行い、収縮期血圧を少なくとも140mmHg未満に抑えることが大切であると思われます。

脳梗塞の再発率

脳梗塞は再発率が高く、初発から1年以内に10人中1人、10年以内に2人のうち1人が再発をきたすことが明らかになっている。

ワーファリンは怖い?

脳卒中データバンクのデータによると、抗凝固療法が必要な患者さんのうち、きちんと抗凝固療法が行われていた方はわずか10%で、55%は抗血栓療法をまったく受けていませんでした。

その最大の理由は、ワルファリンの治療域が非常に狭く、投与量が多すぎると大出血を起こす可能性があるためです。

特に、非専門医が最も恐れるのは頭蓋内出血で、実際、ワルファリン投与中に大出血を経験した医師は、その後の処方率がほぼ半分に低下するという調査結果があります。

そこで、抗血小板薬を投与したり、ワルファリンを投与していても予防効果のない用量が投与されているケースが多いのです。

ワーファリンの維持量

ワルファリンはすでに50年以上の歴史をもっていますが、至適投与量の個人差が大きく、日本人の1日平均維持量は3mgですが、1mg以下の人も、10mg以上の人もいます。

また、効果発現が遅いため、至適投与量を決定するまでに時間がかかり、安定期に入ってもワルファリンの血中濃度を至適治療域に維持するには、定期的にプロトロンビン時間測定やトロンボテスト等を行わなければなりません。

この薬の適量は人種によって差が大きく、米国人は1日に10~15mg投与されますが、日本人は1~10mgです。また、同じ人種でも人によって適量が異なります。ワーファリン代謝 BIV-deCODEme

患者さんの中にも10mg以上の用量を飲んでいる人がいますが、日本人ばなれしているのですね。

抗血栓薬で出血したら中止?

バイアスピリンなどの抗血小板薬、ワーファリンなどの抗凝固薬が処方される患者には出血に関する注意指導を行っているだろう。
時には電話問い合わせで、「血が止まらないんだけど、どうしたらいい?」といった相談を受けることもある。

抗血栓薬を飲んでいれば、基本的には「なかなか血が止まらない」のは当然であるが、出血が起こったときに「どうしよう」という感覚に陥る。
私自身は、子供のころによく鼻血を出していたので、親が心配するほどゴミ箱に大量の赤く染まったティッシュがあふれかえっていた。
しかし、命に危険性があるかといえばそんなことはなく、脳出血や内臓出血のリスクが無ければ、鼻出血であれば経過観察でよいだろう。

しかし、薬剤師も「なかなか血が止まらない」と聞いてもどの程度か判断できないので「薬を中止して医師に相談してください」と即答しがちである。
そのような対応をすれば、患者の中には「抗血栓薬=怖い薬」という認識が確定され、再度抗血栓薬を飲むことに躊躇し、ノンコンプライアンスに陥ることも考えられる。

薬剤師の指導としては、「なるべく出血しないように心がける」「出血しても薬を止めない」という点が必要になる。

「なるべく出血しないように心がける」
・鼻を強くかまないようにする
・歯ブラシをやわらかいものに替えて、やさしく磨く
・鼻をほじらない
・目を強くこすらない
・髭はカミソリではなく、電気シェーバーで剃る
といった対応が考えられる。床屋に行くときも理容師に、血液サラサラにする薬を飲んでいることを伝えてもらった方が良いかも知れない。

「出血しても薬を止めない」
最近は、抜歯や検査時などの出血リスクの高い処置時にも、抗血栓薬は中止しないことが多い。
休薬によって生じるイベントリスクのほうが、服用持続によって生じる出血のリスクを上回ると判断されているからである。

皮下出血や鼻出血、ある程度日常で起こり得る出血であれば、救急で受診する必要もなく、薬を止める必要もないとされる。
脳出血や消化管出血などの大出血の兆候が見られた際には、医師に相談するよう指導する。
トイレを流す前に確認して、血便や血尿が出ていないかチェックすることで内臓出血の有無を確認できる。
また、「鼻血が出た」とだけ聞いて、「大丈夫です」と言うのも尚早で、どこかにぶつけてないか、脳出血の疑いは無いかといった点をチェックすることも必要。

薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

そんな薬剤師には、m3.com(エムスリードットコム)の、薬剤師のための「学べる医療クイズ」がおすすめ。

1 件のコメント

  • 齋藤 のコメント
         

    大動脈弁置換手術後ワーファリンを服用してました
    鼻血が毎朝鼻血が出ると処方した医師に相談したが、ワーファリン服用中は、しょうがないと言われた。相談して10日もしないうちに脳出血発症しました。

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