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ネオーラルやプログラフは食前に飲んだ方が効く?
公開. 更新. 投稿者:アトピー性皮膚炎/ステロイド外用薬.この記事は約5分54秒で読めます.
14,831 ビュー. カテゴリ:ネオーラルは食前に飲んだほうがいい?
ネオーラル1日2回朝夕食前、といった処方がたまにくる。
ネオーラルの用法は、「1日2回に分けて経口投与」とだけで、食前、食後の指示は特に無い。
添付文書には「本剤はサンディミュンと比較して胆汁分泌量や食事による影響を受けにくいとの報告がある。」
とも書かれているので、食前でも食後でもいいのかな、と思ったりする。
一般的に、サンディミュンカプセル・内用液では空腹時投与に比べて食後投与によりシクロスポリンの血中濃度は増加するが、ネオーラルカプセル・内用液では若干低下するものの、サンディミュンに比べて食事の影響が小さい。
サンディミュンは胆汁酸分泌量や食事の影響などにより、シクロスポリンの吸収(血中濃度)にばらつきが見られ、投与量に工夫が必要だった。
ネオーラルは、消化管内の胆汁酸分泌量に左右されず、摂取した水または胃液中で、吸収されやすい粒子を形成する、シクロスポリンの新しいマイクロエマルジョン製剤です。ネオーラルの誕生により、従来のサンディミュンでは、吸収が不良であった患者さんでも、安定した吸収が可能となりました。
ネオーラルはサンディミュンと比べて、シクロスポリンの血中濃度の個体内・個体間でのばらつきが小さく、吸収に及ぼす胆汁酸分泌量や食事の影響が小さいことより、日常の治療においてネオーラルを服用する場合には特に食事の影響を考慮する必要はないと考えられている。
一方で、食前(空腹時)投与では食後投与よりも血液中濃度が高く、減量が可能な場合もあり経済的側面からも有利であること、吸収遅延が認められた患者においては食前投与で吸収改善が認められる可能性もあることなどから、空腹時(食前)投与が有用である患者が存在する。
食後投与では十分な血中濃度が得られなかった症例で、食前投与に変更したところ有意に血中濃度が上がったということもある。
夜よりも朝、食後よりも空腹時の方が効率的に吸収され、血中薬剤濃度も安定するという製剤の特徴を活用して、治療効果を保ちつつ用量を減らし、副作用軽減、医療費抑制を図るため、低用量・1日1回・朝食前内服とすることがある。
その他、隔日内服や間歇内服を指示することもある。
なお、副作用として胃部不快感などの消化器症状が生じた場合は、食後服用に変更される。
はじめはコンプライアンスも考えて食後投与で処方したけれども、十分な効果が得られない場合、食前投与に変えてくる可能性もある。
サンディミュンは食後服用で血中濃度上昇、ネオーラルは食後服用で血中濃度低下する可能性。
しかし、基本的にはネオーラルで食事の影響を考慮する必要はない。
プログラフはなぜ1日1回夕食後?
ネオーラルと似たような免疫抑制剤プログラフの関節リウマチに対する用法は1日1回夕食後となっている。
他の適応症でも服薬タイミングは食後である。
関節リウマチに用いる場合のプログラフの用法は、
「通常、成人にはタクロリムスとして3mgを1日1回夕食後に経口投与する。なお、高齢者には1.5mgを1日1回夕食後経口投与から開始し、症状により1日1回3mgまで増量できる。」となっています。
服用時点が夕食後となっている理由は、関節リウマチの症状である「朝のこわばり」にある。
関節リウマチは、関節を動かし始める時にこわばって動かしにくく、使っているうちにだんだん楽に動かせるようになる。朝、起きた時に最も強く感じるため「朝のこわばり」と呼ばれ、関節やその周囲のこわばりは1時間以上持続する。この朝のこわばりの症状を軽減するために、夕食後に服用する。
朝食後となっている場合は疑義照会が必要。
じゃあ、関節リウマチ以外の適応症に対する「食後」の意図は?
プログラフの吸収について添付文書に以下のように書かれている。
健康成人にて食事による本剤薬物動態パラメータへの影響を検討したところ、食直後及び食後1.5時間に経口投与した場合は空腹時に比べ有意にCmax及びAUCの低下がみられ、Tmaxは延長した。
ネオーラルと同様に、食後の血中濃度は食前・空腹時に比べて有意に低い。
つまり、プログラフについても、食後服用で効果が物足りなければ、医師の裁量で食前服用という指示になることも考えられる。
リウマトレックスやアザニン、イムランとかエンドキサンとかプログラフ以外の免疫抑制剤には添付文書上特に食後という服用時点の指示は無い。
ネオーラル内用液を冷蔵庫に入れちゃダメ?
取り扱ったことはありませんが、ネオーラル内用液の保管方法について。
とある医療機関のネオーラルの使用上の注意に、
ネオーラルの水薬は、20℃以下で保存するとゼリー状になるため、冷蔵庫で保存しないでください。また、ゼリー状になった場合は室温に戻し、液体状にしてから内服してください。
と書かれていた。
冷蔵庫に保管するとゼリー状になる。
添付文書にも、「約20℃以下で保存するとゼリー状になることがある。その場合には20℃以上の室温にて溶解後使用すること」と書かれている。
ゼリー状のまま飲んだらどうなるのだろうか?
恐らく濃度にバラつきがみられるとか、正確に測れないとか、あるのだろう。
しかし、冬場の室温だと20度以上に保つことのほうが難しいという地域もあるだろう。
ゼリー状になっていたら、液状に戻すように伝える。
ネオーラル内用液は油性の液剤だが、水に触れることでマイクロエマルジョンを形成し、水溶性となる。
このため食事による影響が少ない製剤とされている。
他方、同薬は20℃以下で保存すると、添加剤のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の影響により粘度が上昇し、ゼリー状になる(ゲル化する)性質がある。
ゲル化しても有効成分には影響がないが、液性が異なるため秤取量などに影響を与える恐れがある。
低温でゲル化した場合は20℃以上の室温環境に放置し、液体に戻してから使用する。
一般に、市販されている水薬などは、雑菌の繁殖や変質を抑えるため「冷暗所で保管すること」といった記載がある。
このためネオーラル内用液も「冷暗所で保管すべきでは」と考え、冷蔵庫に入れてしまうケースが散見される。
ネオーラル内用液は、室温環境下で開封8週間においても、外観、におい、成分含有量などに大きな変化がないとされている。
また、微生物学的検討として、細菌を接種し生菌数を検討した試験も行われているが、6週間後においても室温環境下での生菌の増殖は認められていない。以上から、室温保存に問題はないと考えられる。
ネオーラル内用液は、通常はコップ1杯の水やぬるま湯とともに服用する。
ただし独特のにおいがあり、服用を嫌がる小児も多い。オレンジジュースやリンゴジュースなどに混ぜて飲ませてもよいが、主に薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)3A4で代謝されるため、グレープフルーツジュースに混ぜて飲ませるのは避けるよう指導する。
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