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患者が薬局内で吐いたらどう処理する?
公開. 更新. 投稿者:消化性潰瘍/逆流性食道炎.この記事は約5分38秒で読めます.
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患者が薬局で嘔吐したときの適切な処理方法と感染予防

冬場になると増える感染性胃腸炎。その主な原因のひとつがノロウイルスです。
ノロウイルスは感染力が極めて強く、たった数個のウイルス粒子で発症するため、患者が薬局内で嘔吐した場合には、迅速かつ正しい処理を行わなければなりません。
ここでは薬局など医療機関の現場で、患者が嘔吐してしまった場合の具体的な対応方法、処理手順、消毒法、注意点を勉強します。
嘔吐の原因を問わず感染対策を最優先に
嘔吐の原因が必ずしも感染症とは限らないこともあります。
たとえば薬の副作用や乗り物酔いなどでも嘔吐が起きます。
しかし、嘔吐物にはウイルスや細菌が含まれている可能性が高いため、処理をする際は感染症対策を前提に行動することが重要です。
特にノロウイルスの場合、乾燥した嘔吐物が微粒子化し空気中に浮遊することで、別の人の口から侵入し感染を引き起こします。
嘔吐物を見た目だけで安全だと判断せず、常に最大限の警戒をして処理に当たることが必要です。
処理に必要な物品
処理を行う前に、以下の準備をしましょう。
●保護具
・使い捨てマスク(サージカルマスク推奨)
・使い捨て手袋
・ゴーグルまたはメガネ(飛沫防止)
・使い捨てガウン・エプロン
※布製エプロンの場合は処理後に消毒または洗濯が必要
●消耗品・器具
・ペーパータオルや古新聞、布(嘔吐物の拭き取り用)
・ビニール袋(密封廃棄用)
・次亜塩素酸ナトリウム(塩素系消毒薬:ハイター・ピューラックス等)
・バケツ、たらい
・ゴミ袋(2重にする)
・希釈用の水
・換気設備(窓や換気扇)
薬局では上記をまとめた「嘔吐物処理キット」を常備しておくとスムーズに対応できます。
嘔吐物が飛散する範囲に注意
ノロウイルスを想定した研究では、嘔吐物を高さ1メートルから落とすと、約2メートルの範囲に飛び散ることが確認されています。
そのため、処理時は以下の対応が必要です。
・嘔吐した患者から他の患者を3メートル程度離す
・処理中は立ち入りを制限する
・処理完了後も十分換気する
乾燥した嘔吐物を人が踏むことで、ウイルスが空気中に舞い上がり感染するため、速やかに拭き取り消毒を行うことが重要です。
消毒液の作り方
消毒には塩素系漂白剤を使用します。
アルコールや逆性石けんはノロウイルスに効果が低いため適しません。
以下は家庭用漂白剤(濃度5〜6%)を使った希釈例です。
・0.1%溶液(1000ppm)
床・便座・ドアノブなどの消毒用
→漂白剤10ml(ペットボトルキャップ2杯)を500mlの水で薄める。
・0.02%溶液(200ppm)
衣類・シーツのつけ置き消毒用
→漂白剤10mlを2Lの水で薄める。
作成した溶液は光で分解するため、遮光容器に保管し、なるべく当日中に使い切るのが理想です。
嘔吐物の処理手順
処理は以下の手順で行います。
①患者と周囲を隔離
・嘔吐した場所に人が立ち入らないようにし、処理担当者が準備する。
②保護具の装着
・マスク、手袋、ゴーグル、ガウンを着用。
③嘔吐物の除去
・嘔吐物の中心から外側に向かって、ペーパーや布で拭き取る。
・汚れた部分は内側に折り込むように包み、同じ面で再度拭かない。
④廃棄物の密封
・汚れた布や手袋はビニール袋に入れ密封。
・ビニール袋に0.1%消毒液を注ぎ、外側も拭く。
⑤消毒
・0.1%消毒液を十分に含ませたペーパーで周囲2m程度を拭き消毒。
・10分程度放置後、水拭き。
⑥手洗い
・処理後は手袋を外し、流水と石けんでしっかり手洗い。
処理後の保護具もすぐ廃棄するか、布製の場合は85℃以上1分間の熱湯消毒または0.1%次亜塩素酸ナトリウムでつけ置き洗いします。
床材・物品別の対応
◯ フローリング床
・通常手順で処理可能。ただし表面の溝に汚れが入り込むため、消毒液を多めに使って拭き取ります。
◯ カーペット・布団
・嘔吐物をできる限り拭き取る。
・消毒液を十分にしみ込ませる。
・乾燥後に掃除機をかけるのは避ける(ウイルスが舞う)。
・色落ちを避けたい場合は専門業者に依頼。
◯ 衣類・タオル
・0.02%次亜塩素酸ナトリウムに30分つけ置き。
・熱湯消毒の場合:85℃以上で1分間。
・乾燥後にアイロンを2分以上かけるとさらに安心。
処理後の換気と確認
嘔吐時にはウイルスを含むエアロゾルが発生し、場合によっては1時間以上空気中に残ります。
処理が終わった後も、窓や換気扇を使って十分に換気を行ってください。
処理エリアは乾燥後、改めて清拭するのも有効です。
処理に関わるスタッフの体調管理
処理を行った人は、処理後2〜3日間は体調に注意が必要です。
感染が疑われる症状(嘔吐、下痢、発熱)が出た場合、すぐに医療機関に相談し、他の人への感染拡大防止に努めましょう。
ノロウイルスの特徴と感染経路
改めて、ノロウイルスの性質を理解しておきましょう。
●感染力が極めて強い
・10~100個程度のウイルスで感染
●主な感染経路
・嘔吐物・便からの飛沫・接触
・ウイルスがついた手指や物品
・汚染された食材
●潜伏期間
・約1〜2日
●症状
・急な嘔吐・下痢・腹痛・軽度の発熱
●感染力の持続
・症状消失後も数週間便に排出
●消毒耐性
・アルコール消毒が効きにくい
・加熱(85℃以上1分間)・次亜塩素酸が有効
よくある疑問Q&A
Q. アルコールスプレーではだめですか?
A. ノロウイルスにはアルコール効果が低いため推奨されません。必ず塩素系消毒薬を使用しましょう。
Q. 熱湯をかければ消毒できますか?
A. 85℃以上で1分間が目安ですが、床に熱湯をかけると飛散リスクがあります。煮沸が難しい場所は消毒液を用います。
Q. 嘔吐した服はどうする?
A. 水洗い後、0.02%消毒液に30分浸すか、85℃以上で1分加熱。
薬局での事前準備と体制
・処理マニュアルをスタッフ全員に共有
・処理キットを常備
・処理時は2人以上で対応(処理者・支援者)
・定期的に訓練やロールプレイを行う
・薬局では不特定多数が訪れます。感染防止の意識と準備が最も重要です。
まとめ
嘔吐の処理は「迅速・正確・広範囲」が基本です。
特にノロウイルスは強い感染力を持つため、適切な消毒法を徹底する必要があります。
いざというとき慌てず対応できるよう、今回の記事を参考に準備を進めておきましょう。