2025年8月29日更新.2,606記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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悪玉コレステロールは正確に測られていない?

悪玉コレステロールは正確に測られているのか?

私たちが健康診断の結果を受け取るとき、必ずといっていいほど目にする「LDLコレステロール」という項目。
LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」とも呼ばれ、動脈硬化や心筋梗塞のリスクに深く関わっているとされています。

しかし、「私のLDLコレステロールは正常値なのに、どうして動脈硬化が進んでいるんですか?」
そんな疑問を持つ人も少なくありません。

実はLDLコレステロールの値は、思っているほど「絶対的に正確」ではない場合があるのです。
LDLコレステロール測定の仕組みと限界、そして正しい見方について勉強していきます。

LDLコレステロールとは何か?

まず、LDLコレステロールがどういう存在かを整理しましょう。

コレステロールは体にとって重要な脂質であり、細胞膜やホルモンの材料になります。しかし血液中では水に溶けにくいため、そのままの形では運ばれません。

そこで「リポタンパク質」という運搬装置にのせて血管内を移動します。このリポタンパク質にはいくつか種類があります。

●HDL(高比重リポタンパク):善玉コレステロール
→余分なコレステロールを回収し、肝臓に戻す

●LDL(低比重リポタンパク):悪玉コレステロール
→肝臓から全身の細胞にコレステロールを運ぶ

●VLDL(超低比重リポタンパク):中性脂肪を運ぶ

LDLは細胞にとって必須のコレステロールを届ける役割を果たしますが、過剰になると血管壁に溜まりやすく、動脈硬化を引き起こす原因となります。このため「悪玉」と呼ばれます。

LDLコレステロールの測り方:直接法と間接法

「血液検査でLDLを測る」と言っても、実は直接測る方法と推定で求める方法の2種類があります。

間接法(推定法)
最も多く使われているのは「Friedewald(フリードワルド)式」による計算式です。

Friedewaldの計算式
LDLコレステロール = 総コレステロール − HDLコレステロール − (中性脂肪 ÷ 5)
※単位はmg/dL

この式は、VLDL(中性脂肪を運ぶ粒子)のコレステロールを「中性脂肪 ÷ 5」で推定し、総コレステロールから差し引いてLDLを求める仕組みです。

この方法は1972年に発表されて以来、世界中の臨床現場で使われています。特に中性脂肪がそれほど高くない健康診断では、この間接法が標準です。

直接法
推定ではなく、LDLそのものを化学的に測る方法もあります。
「直接法」と呼ばれ、血清に特定の試薬を加えてLDLだけを抽出・分解し、酵素反応などでコレステロールを定量します。

直接法のメリットは
・中性脂肪が高い場合でも測定できる
・食後でも実施可能
という点です。

世界標準はどちら?

意外かもしれませんが、世界ではいまだにFriedewaldの計算式(間接法)が主流です。
理由はシンプルで「安価で再現性が高い」から。

一方、日本は特定健診の制度設計の関係で直接法を普及させた経緯があり、現在でも多くの施設で直接法が採用されています。
ただし、その正確性については専門家の間で議論が続いています。

間接法の弱点

計算式による推定には、いくつか重要な制約があります。

●空腹時であること
・食後は中性脂肪が上がるため、式に当てはめるとLDLが低めに計算されます。

●中性脂肪が400mg/dL未満であること
・中性脂肪が高くなると、VLDLの比率が増え、÷5という近似値が当てはまらなくなります。

●肝機能や代謝異常の影響を受けやすい
・糖尿病やアルコール多飲ではVLDLが増えやすく、誤差が拡大しやすいです。

実際には中性脂肪がそれほど高くなくても、±10~20%程度の誤差が生じることが知られています。

直接法の弱点

直接法は万能かというと、そうではありません。

特に開発当初の直接法(1998年前後)は、
・高分子界面活性剤を用いたため、測定精度が不安定
・超遠心法と比べると誤差が大きい
といった問題が指摘されました。

最近は改良が進み、試薬メーカーが絞り込まれたことで誤差は減ってきましたが、それでも
最大で+20%から−30%程度の誤差が残る
とされています。

つまり、同じ血液から直接法と間接法を同時に測っても、
「どちらが正しい値なのか分からない」
というケースが生じることがあります。

では何を信じればいいのか?

ここで混乱しがちですが、大事なのは
単一のLDL値だけに一喜一憂しない
ことです。

LDLは確かに重要なリスク指標ですが、次のポイントを併せて確認する必要があります。

・non-HDLコレステロール
総コレステロール − HDLで計算される指標。
LDL+VLDLをまとめて評価でき、中性脂肪の影響が少ないため近年重視されています。

・動脈硬化の進展状況
頸動脈エコー、ABI(足関節上腕血圧比)、冠動脈CTなどの画像検査が参考になります。

・他のリスク因子
高血圧、糖尿病、喫煙、家族歴など。

また、複数回の測定で経過をみることで、誤差や偶発的なばらつきを平均化できます。

中性脂肪が高い人は要注意

特に糖尿病、肥満、脂肪肝などで中性脂肪が高い人は、間接法ではLDLが低く出がちです。

逆に、直接法の方が参考になることもあります。

いずれにしても
「この数値はどの方法で測定したのか」
を把握した上で、医師と相談することが大切です。

LDLコレステロール値は目安の一つ

コレステロール管理は重要ですが、検査値を絶対視しすぎるのは危険です。

・測定方法で誤差が出る
・体調や採血条件でも変動する
・LDLはあくまで動脈硬化の一因にすぎない

このことを理解し、
複数の情報を総合してリスク評価する姿勢
が必要です。

まとめ

・LDLコレステロールには「間接法(推定式)」と「直接法」があり、どちらにもメリット・デメリットがあります。
・中性脂肪が高い人、食後採血の場合は特に注意が必要です。
・non-HDLコレステロールや動脈硬化の画像検査も組み合わせて、総合的に判断しましょう。

「私のLDLは正常だから大丈夫」と安心しすぎず、検査方法の違いを理解して健康管理に活かしてください。

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