2024年4月19日更新.2,754記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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医薬品の自主回収で返金してくれる?

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ラニチジンの自主回収

令和元年10月03日、複数の会社からラニチジンの自主回収が発表されました。

自主回収|クラス1|報道発表資料|厚生労働省

対象となっているのは、ラニチジン錠75mg・150mg「サワイ」、ラニチジン錠75mg・150mg「ツルハラ」、ラニチジン錠75mg・150mg「トーワ」、ラニチジン注50mg・100mg「NP」、ラニチジン錠75mg・150mg「マイラン」の5社。

かと思ったら、日医工、YD、JG、KN、タイヨーもクラスⅠで上がっていたので、ラニチジン製剤は全滅です。

医薬品等の回収に関する情報 2019年度クラスI(医薬品)

てゆーか、これに先立って、令和元年9月26日にザンタックの自主回収も行われているのですが、こちらはクラスⅡ。

医薬品等の回収に関する情報 2019年度クラスII(医薬品)

おかしくない?

ラニチジン製剤において発癌性物質が検出されたという注意喚起は、9月17日の時点ですでに事務連絡として発表されていました。
ザンタックの自主回収理由とその他GEの自主回収理由は同じはずで、クラス分類に違いが生じる理由がわかりません。

ラニチジン塩酸塩における発がん物質の検出に対する対応について

自主回収発表のタイミングと、クラス分類の違いにジェネリック医薬品を貶める意図を感じる…

クラス分類説明
クラスIクラスIとは、その製品の使用等が、重篤な健康被害又は死亡の原因となり得る状況をいう。
クラスIIクラスIIとは、その製品の使用等が、一時的な若しくは医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性がある状況又はその製品の使用等による重篤な健康被害のおそれはまず考えられない状況をいう。
クラスIIIクラスIIIとは、その製品の使用等が、健康被害の原因となるとはまず考えられない状況をいう。

クラスⅠとクラスⅡでは、インパクトが違う。
「死亡」という文字は読んだときにショッキングに感じるだろう。
新聞での取り上げ方も、ザンタックのときは一般紙での報道はみかけなかったが、ラニチジンでは一般紙でも取り上げられている。

(追記)令和元年10月09日にザンタックの自主回収も訂正されクラスⅠに変更となりました。後から訂正って、やり方が気に入らないなあ。

自主回収に対する薬局の対応

とりあえずジェネリック医薬品に対する冷遇はさておき、自主回収に対する薬局の対応について、どうすればよいのか?考える。

PMDAメディナビに登録していれば、回収情報のメールが日々届きますが、医療機器や院内製剤に関するものがほとんどで結構スルーしている。
今回のような回収情報は別にメディナビに登録していなくても耳に入ってくる。

薬局としては、情報を入手した時点で、卸に電話をかけ、返品対応、代替薬の情報などを仕入れるが、今回はラニチジン全メーカー全ロットが対象なので、医師がラニチジンを処方して来たら、別の医薬品を紹介するしかない。

薬局としての心配事は、
・ラニチジン製剤が処方されたらどうする?
・薬局のラニチジン製剤の在庫はどうなる?
そして、「患者からの問い合わせにどう答える?」である。

患者の立場に立ってみれば、
・今飲んでいるラニチジン製剤はどうすればいいの?
・死亡の危険性のある薬を飲んでいたというが、大丈夫なのか?
・薬局に返せば、返金してもらえるのか?

といった疑問がわいてくる。
患者によっては、怒りや不信感もわいてくるだろう。

私の経験からいくと、このような自主回収の情報が出た時に、当該ロットを服用している患者への連絡をし、回収や廃棄、医療機関への受診を促すような連絡をしているという誠実な対応をしている薬局は聞いたことがない。
私の勤務先がクズ薬局ばかりだったかも知れないので、全国的にどうなのかはわかりませんが。

健康被害のモニタリングについては、混入している異物のリスクによっても異なるが、N-ニトロソジメチルアミン(NDMA)はハムやソーセージなどの加工食品にも含有されている物質で、その発癌性のリスクを評価することは長期間見なければわからないので、現時点で患者に聞いても健康被害が出ているわけがない。

一番気になるのは、薬局に返せば返金してもらえるのか?というところだろう。
普通の商品であれば、商品に不具合があった場合、返金対応というのは当然の対応である。
自主回収でなくても、普段の患者対応でも「もらった薬が副作用で飲めなくなった」「ジェネリックが体にあわなかった」などで返金対応を求める患者は多い。

結論から言えば、「返金対応は行えません」だ。「残った薬は捨ててください」としか言えない。
多くの患者は納得できないだろう。薬剤師側もその気持ちはわかる。
理由を求められれば、「国がそのような対応をしていないから」としか言えない。
まあ、患者側も「自分がお金を払って買った薬」と思っている節があるが、大概3割しか負担していないわけなので、国の保険制度に従う必要はある。

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薬剤師

勉強ってつまらないなぁ。楽しみながら勉強できるクイズ形式の勉強法とかがあればなぁ。

先生

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本の紹介

yakuzaic
yakuzaic/著
2023年09月14日発売

プロフィール

yakuzaic
名前:yakuzaic
職業:薬剤師
出身大学:ケツメイシと同じ
生息地:雪国
座右の銘:習うより慣れろ。学ぶより真似ろ。
SNS:X(旧ツイッター)
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