2025年10月4日更新.2,641記事.

調剤薬局で働く薬剤師のブログ。薬や医療の情報をわかりやすく伝えたいなと。あと、自分の勉強のため。日々の気になったニュース、勉強した内容の備忘録。

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乾癬は感染しない皮膚病

乾癬は感染しない皮膚病

乾癬(かんせん、psoriasis)は、皮膚に赤い斑点(紅斑)や銀白色の鱗屑(りんせつ:フケのような皮膚片)が出る慢性の炎症性皮膚疾患です。
名前が「カンセン」と読むことから「感染するのでは?」と誤解されやすく、また皮膚に症状が目立つために「汚い」「うつる」といった偏見を受けてしまうことも少なくありません。

しかし、乾癬は感染症ではなく、決して人から人にうつる病気ではありません。
乾癬に関する正しい知識を整理し、病態・症状・治療法、そして患者さんの生活への影響について勉強します。

乾癬とは?

乾癬は表皮細胞の代謝異常と免疫の異常な活性化によって起こる慢性炎症性角化症です。

・日本での有病率:約0.1%(欧米は2〜4%と高い)
・男女比:約2:1で男性に多い
・初発年齢は30〜40歳が多いが、若年者から高齢者まで幅広い
・慢性に経過し、再発を繰り返す

乾癬は外見の症状が強いために生活の質(QOL)に大きな影響を及ぼしますが、感染性は全くありません。

感染しないことを強調したい理由

乾癬患者さんの大きな悩みの一つは「周囲からの誤解や偏見」です。

「皮膚がボロボロで汚い」
「近くにいると自分もうつるのでは?」

こうした誤解が、患者さんを精神的に追い込む大きな要因になっています。
しかし繰り返しになりますが、乾癬は感染症ではなく、接触してもうつることはありません。

誤解を解くことが、患者さんの社会生活や心の健康を守るうえで非常に重要です。

乾癬の主な症状と特徴

好発部位
・頭皮
・肘・膝の伸側
・腰臀部

特徴的な症状
・紅色局面:境界がはっきりした赤い盛り上がり
・鱗屑(りんせつ):銀白色のフケ状の皮膚片
・アウスピッツ現象:鱗屑を剥がすと点状出血
・ケブネル現象:皮膚を掻いたり擦ったりした場所に新たな皮疹が出る

痒みを伴うこともあり、掻破により悪化する悪循環が問題となります。

乾癬の種類

乾癬にはいくつかの臨床型があり、大多数は尋常性乾癬です。
・尋常性乾癬(全体の90%以上)
・乾癬性紅皮症
・関節症性乾癬
・滴状乾癬
・汎発性膿疱性乾癬

中には重症化し、全身に及ぶものや関節炎を伴うものもあります。

なぜ乾癬は起こるのか?

乾癬の原因は完全には解明されていませんが、以下の因子が関与します。

・免疫異常:TNFαやIL-17などのサイトカインが過剰に働き、炎症と表皮細胞の過剰増殖を起こす
・遺伝的素因:HLA-Cw6などとの関連
・環境因子:ストレス、感染症、外傷、薬剤(β遮断薬、リチウムなど)
・生活習慣:肥満、喫煙、アルコール摂取、糖尿病、脂質異常症

治療の体系 ― ピラミッド計画

乾癬の治療は段階的に行われます。

外用療法
・ステロイド外用薬
・活性型ビタミンD₃外用薬
・併用するシーケンシャル療法が一般的

光線療法
・PUVA療法やナローバンドUVB
・長期的な発がんリスクに注意

内服薬
・レチノイド
・シクロスポリン
・メトトレキサート(日本では一部保険適応外)

生物学的製剤
・抗TNFα抗体、抗IL-17抗体、抗IL-23抗体など
・劇的な改善例も多いが、感染症リスクや高コストが課題

乾癬は全身疾患でもある

乾癬は皮膚だけの病気と思われがちですが、実際には全身の炎症性疾患です。

・関節症性乾癬:関節炎の合併
・動脈硬化や心疾患:慢性炎症が心血管系に影響
・代謝異常:肥満、糖尿病との関連

そのため、皮膚科だけでなく内科的な全身管理も重要です。

患者生活への影響

乾癬は見た目に出るため、患者はしばしば精神的な苦痛や社会的制約に直面します。

「温泉やプールに行けない」
「半袖を着られない」
「人からの視線がつらい」

こうしたQOL低下を防ぐためには、社会全体で乾癬は感染しない病気であるという認識を広めることが欠かせません。

まとめ

・乾癬は感染しない。人から人へうつることはない。
・表皮細胞の異常な増殖と免疫の異常が原因の慢性炎症性皮膚疾患。
・日本ではまだ認知度が低く、偏見が患者の精神的負担になっている。
・治療は外用薬から生物学的製剤まで体系化されており、個々の病態に応じて選択される。
・乾癬を正しく理解し、患者さんへの誤解や差別をなくしていくことが重要。

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