記事
ヘルニアは治る?
公開. 更新. 投稿者: 1,907 ビュー. カテゴリ:痛み/鎮痛薬.この記事は約4分43秒で読めます.
目次
ヘルニアは治る? ― 種類ごとの違いと本当に知っておきたいポイント

「ヘルニアは治りますか?」
外来でもよく聞かれる質問です。
しかし実はこの問い、とても答えにくい質問でもあります。
なぜなら――
ヘルニアは1つの病気ではないからです。
「ヘルニア」という言葉は、
本来あるべき場所から臓器や組織が飛び出すこと
を意味する医学用語です。
つまり、「ヘルニア=腰の病気」ではありません。
腰の椎間板ヘルニアも、鼠径(そけい)ヘルニアも、臍(へそ)ヘルニアも、すべて“飛び出す病態”という共通点でまとめられているだけなのです。
・ヘルニアは自然に治るのか?
・手術は必ず必要なのか?
・放置するとどうなるのか?
・「治る」とはどういう意味なのか?
を、種類ごとにわかりやすく整理します。
そもそもヘルニアとは?
ヘルニア(hernia)はラテン語で「突出」という意味です。
体の壁(筋肉や膜)が弱くなり、
内側にある臓器や組織が外へ押し出される状態を指します。
代表的なものは次の通りです。
・椎間板ヘルニア(腰・首)
・鼠径ヘルニア(脱腸)
・臍ヘルニア(でべそ)
・食道裂孔ヘルニア
それぞれ、治り方がまったく違います。
① 椎間板ヘルニアは治る?
最も「ヘルニア」と聞いて連想されるのがこれでしょう。
背骨のクッション(椎間板)の中身が飛び出し、神経を圧迫して痛みやしびれを起こします。
■ 結論
→多くは自然に改善します。
研究では、
・約80〜90%は保存療法で改善
・数か月以内に症状が軽くなる
とされています。
なぜ自然に良くなるのか?
飛び出た椎間板は、体の免疫細胞(マクロファージ)によって分解・吸収されることがあります。
つまり、
体が“異物”と認識して小さくしてくれる
のです。
画像でヘルニアが残っていても、症状が消えれば「治った」と考えます。
■ ただし、例外もある
以下の場合は手術が検討されます。
・足の筋力低下
・排尿・排便障害
・強い持続痛
・馬尾症候群
これらは緊急対応が必要です。
② 鼠径ヘルニア(脱腸)は治る?
足の付け根がぽこっと膨らむタイプです。
腸が腹壁の弱い部分から飛び出しています。
■ 結論
→自然には治りません。
押せば戻ることはありますが、
穴が閉じるわけではありません。
放置すると、
・嵌頓(かんとん):腸が戻らなくなる
・腸閉塞
・腸壊死
といった重篤な状態になることがあります。
■ 治療
→根本治療は手術のみ。
現在はメッシュを用いた手術が一般的で、日帰りや短期入院で行われます。
③ 臍ヘルニア(でべそ)は治る?
■ 乳児の場合
→ほとんどが自然に閉じます。
1〜2歳までに腹壁が発達し、自然治癒するケースが多いです。
■ 成人の場合
自然治癒は難しく、手術が必要になることがあります。
④ 食道裂孔ヘルニアは治る?
胃の一部が横隔膜を越えて胸側へずれる状態です。
■ 結論
→「治す」より「コントロールする」病気。
・軽症:胃酸を抑える薬で改善
・重症:手術
完全に元の構造に戻すのは簡単ではありません。
「治る」とは何を指す?
ここが非常に重要です。
医学では、
・症状が消える
・日常生活に支障がない
・再発しない
どこまでを「治った」と呼ぶかはケースによります。
椎間板ヘルニアでは、
→画像上ヘルニアが残っていても痛みがなければ“治癒”
と考えます。
一方、鼠径ヘルニアは構造異常がある限り「治った」とは言えません。
ヘルニアは再発する?
再発率は種類によります。
・椎間板ヘルニア:約5〜15%
・鼠径ヘルニア(手術後):1〜5%程度
生活習慣や体質も影響します。
手術しないと危険なヘルニア
以下は緊急受診が必要です。
・強い腹痛+膨らみが戻らない(嵌頓)
・足の麻痺
・排尿障害
・急激な症状悪化
「様子をみる」が危険なケースもあります。
よくある誤解
❌ 一度飛び出たら一生治らない
→ 椎間板ヘルニアは改善することが多い
❌ 手術すれば完全に安心
→ 再発はゼロではない
❌ 腰痛=ヘルニア
→ 多くの腰痛は筋肉由来
では、結局ヘルニアは治るの?
■ 結論まとめ
| 種類 | 治る? |
|---|---|
| 椎間板ヘルニア | ◎ 多くは自然改善 |
| 鼠径ヘルニア | ✕ 手術が必要 |
| 乳児臍ヘルニア | ◎ 自然治癒多い |
| 成人臍ヘルニア | △ 手術必要なこと多い |
| 食道裂孔ヘルニア | △ コントロール |
最後に
「ヘルニアは治るのか?」という問いは、
→どのヘルニアかによって答えが変わる
というのが本当のところです。
椎間板ヘルニアなら、まずは保存療法で様子を見るのが一般的です。
鼠径ヘルニアなら、手術を前向きに検討すべきです。
そして何より大切なのは、
「画像」よりも「症状」
です。
MRIでヘルニアがあっても痛みがなければ問題にならないこともあります。
逆に、軽く見えても症状が強ければ治療が必要です。




